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英語学習、聴覚障がい者支援も視野に。「少年ジャンプ+」が挑む「マンガのミライ」とは?

集英社オンライン / 2022年9月5日 10時1分

集英社のマンガ誌アプリ『少年ジャンプ+』では、同誌の未来を語り合うトークイベント『ジャンプのミライ2022』を全3回にわたり開催。その第2回となる『ジャンプの挑戦』が7月27日に開催された。前編では、イベントで紹介された3つのサービスについて、お伝えする。

『少年ジャンプ+』では、新時代のマンガ創出に向けて、デジタルサービスの新しいアイディア・技術を募集することを目的に、『ジャンプアプリ開発コンテスト2022』を実施。また、コンテストへの応募者を募るための特別企画として、ジャンプが提供する最新デジタルサービスの情報などを発信するオンライントークイベント『ジャンプのミライ2022』を全3回にわたり、開催している(『ジャンプアプリ開発コンテスト2022』は現在募集中。エントリーは9月16日まで)。




第2回目となる今回のオンライントークイベントでは、マンガで簡単に英語多読を実現する学習アプリ『Langaku』、誰でもスマホでマンガネームを作れる『World Maker β』、ボタンひとつでマンガ風の動画を作れる無料AIアプリ『ドドドJUMP』の3つを取り上げ、各サービスの制作過程と最新情報が語られた。

イベントMCのちょまど氏

トークセッションの進行を務めるモデレーターのけんすう氏

小学生たちにも好評の『Langaku』

イベントは、Zoomを使用したオンライン形式。大手外資企業ITエンジニアのちょまど氏をMCに、アル株式会社代表取締役のけんすう氏をモデレーターに迎え、サービス開発者と担当編集者が順番に入れ替わる形で進行した。最初は英語学習アプリ『Langaku』について、『少年ジャンプ+』細野修平編集長と、制作・運営を担うMantra株式会社代表取締役の石渡祥之佑氏がトークを展開した。

「少年ジャンプ+」細野修平編集長

『Langaku』は、『マンガテック2020』にて優秀賞として採択されたことからはじまったサービス企画。「『マンガと英語』のアイディアはよくあるものだったけれども、Mantraの企画への落とし方は一段上だった」と細野編集長。プロジェクトのキックオフ後、石渡氏らは英語学習に関わる人々へのヒアリングおよびアプリ開発に、細野編集長はマンガの使用許諾の取得などを行っていったという。

『Langaku』誕生物語はこちら

Mantra株式会社代表取締役の石渡祥之佑氏

各トーク後には、モデレーターのけんすう氏を交えたディスカッションも実施され、Langakuのトークセッション後にも、Zoomのチャット機能を使って参加者から多くの質問が寄せられた。

その中で、石渡氏は『鬼滅の刃』にハマっている子どもの親が、アプリのベータテストに参加していたことを紹介。小学生の子どもが自発的に夢中になって英語版のマンガを読んだという声に感動し、「英語学習へのマンガ活用には、大きな可能性があると実感しました」と語った。

誰でもマンガネームを作れる『World Maker β』

次は『World Maker β』について、『少年ジャンプ+』林士平副編集長と、制作に携わった株式会社カヤックのクリエイティブディレクター・佐久間亮介氏が登壇して語った。2021年9月22日にリリースした『World Maker β』は、絵を描けなくても誰でもマンガネームを作ることができるWEBサービスだ。

「少年ジャンプ+」林士平副編集長

『World Maker β』にセリフやあらすじを入力すると自動でコマ割りされ、用意されたパーツを当てはめればネームを作成可能。パーツは、背景・人物・オノマトペ(音を文字で表現した「擬音語」など)が60万点以上が用意されている。完成したネームはSNSに投稿もでき、リリース開始からたった2週間で、Twitterには1万2,400作品が投稿されたという。

株式会社カヤック、クリエイティブディレクターの佐久間亮介氏

リリース開始当初には『第1回 World Maker 漫画ネーム大賞』も開催された。総数7,500もの作品が集まり、その中から選ばれた2作品に賞金30万円が贈られ、『竜の映画館』『プール』が『少年ジャンプ+』で作品化もされた。

『World Maker』は編集部発の企画で、2018年に林副編集長が発案したのがきっかけだ。けんすう氏を含む、多くの関係者らに相談して回る中でカヤックに出会い、開発がスタート。PCのアルファ版を経て、2020年10月からプロジェクトが本格始動した。その後、集英社とカヤックの共同でデザインスプリント(長期間のプロダクト開発を短期間で疑似的に経験するフレームワーク)を4回実施してから本格的な開発を行い、最終的に2021年9月のベータ版リリースに至った。

そして現在、「『World Maker』正式版のアプリを鋭意開発中」と佐久間氏は明かす。アンケートを反映したブラッシュアップや、より手軽にネームを作れる機能の提供、自動翻訳によるグローバルへの発信など、ベータ版からさらに進化し、アプリとして開発が進行しているとのことだった。660人が回答したアンケートによれば、ベータ版でも66%のユーザーが満足し、88%のユーザーは正式版も利用したいという回答を寄せたので、今後への期待が高まりそうだ。

『ドドドJUMP』のマンガ表現で聴覚障がい者の一助に

最後は『ドドドJUMP』について、『少年ジャンプ+』籾山悠太副編集長と、ブラックリボン軍代表の江國翔太氏が語った。2022年6月にベータ版をリリースした『ドドドJUMP』は、撮影した動画を読み込むとAIが自動で動画を解析し、内容に合わせて自動でフキダシや効果音が追加されたりコマ割りされるなど、動画のマンガ風アレンジが簡単にできるアプリになっている。

「少年ジャンプ+」籾山悠太副編集長

対談中、アプリの実機デモも行われた。細野編集長がPCで作業している時にカメラに気づき、手を振りながら「『少年ジャンプ+』をよろしくお願いします」とひと声かける動画を事前に撮影し、これを『ドドドJUMP』で読み込んだ。すると、細野編集長の話した言葉がフキダシになっただけでなく、PCの作業音を表現する「カタカタ」、手を振るところを強調した「わいわい」という、2種類のオノマトペがマンガ風に文字化された。今回は用意した動画を読み込んだだけだが、その後さらに編集を加えることも可能だ。

ブラックリボン軍代表・江國翔太氏

制作過程について、江國氏は大学在学中、音を認識・可視化する技術に興味を持っていたという。擬音で音を覚えたという聴覚障がい者の方の話も聞き、聴覚障がい者向けにもマンガ表現が使えるのではないかと思ったそうだ。そんな中、2018年に『第2期少年ジャンプアプリ開発コンテスト』の話を聞き、友人4人で『ブラックリボン軍』を結成。スマートフォン向けARアプリとして応募し、入賞を果たした。
籾山副編集長も当時の印象を振り返る。

「僕は技術的なことは全然詳しくないので、ただただ感動するばかりでした。マンガの表現が聴覚障がい者の方の支援につながったり、動画としてマンガ表現を使った面白いコンテンツができそうだなと思い、当時のアプリ開発コンテストでお声かけしました」

制作にあたっては、全体の仕様設計、UI・UXのデザインディレクション、AIロジック・学習データの作成を『ブラックリボン軍』が担当しつつ、アプリ開発会社・AI開発会社の協力も得て進行。籾山副編集長と週1回のミーティングを重ね、そのフィードバックを反映させていった。その過程で、当初想定したARアプリから、動画変換アプリへの変更もあったという。

ベータ版が2022年6月リリースされたが、これをふまえた今後の目標について、江國氏は最後にこう伝えた。

「マンガというメディアに、新しいコミュニケーションインターフェースという役割を持たせられないかと思っています。マンガは世界中の人々に楽しまれているメディアであるとともに、聴覚障がい者にとっては実用的な表現方法でもあります。マンガがインターフェースとなることで、たくさんの人の日常を楽しくできるのではないかと考えています。」(江國氏)

今回の3つのサービス事例を聞いていると、それぞれのサービス開発者に『少年ジャンプ+』担当編集者が寄り添い、新サービス創出のために果敢に挑戦している様子がうかがえる。
だが、マンガの編集者・編集部がこのようなデジタルサービスにも密接に関わるモチベーションとはなんなのだろう。後編では、『少年ジャンプ+』細野編集長へのインタビューを通して、その背景に迫る。

なお、『ジャンプアプリ開発コンテスト2022』へのエントリーは9月16日まで。応募締め切り後、9月から10月の1次審査、10月から11月の2次審査、12月の最終審査と進み、最終結果発表は2023年1月の予定だ。ファンコミュニティ、データ分析、海外ローカライズ、新しいマンガ表現など、ジャンプの進化につながるものなら、企画内容は問わない。

入賞者には賞金が贈られ、実際にアプリ開発を行うことになった場合、賞金とは別に開発資金も集英社より提供される。コンテストの詳細や募集要項等に関しては、『ジャンプアプリ開発コンテスト2022』公式サイトを参照してほしい。


文・撮影/若林健矢

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