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5年以上続くBL漫画『簡易的パーバートロマンス』作者もハマるBLの懐の深さ

集英社オンライン / 2022年8月26日 19時1分

現在5巻まで刊行されている人気BLコミックス『簡易的パーバートロマンス』。作者の赤原ねぐ先生・瀬森菜々子先生、担当編集者の鼎談インタビュー後編をお届けする。

顔フェチの爽やかイケメン・真田とドMのヤンキーイケメン・鹿嶋、男子高校生2人が繰り広げるラブコメディ『簡易的パーバートロマンス』(以下、簡ロマ)。

単巻(一冊完結)、あるいは上下巻、と比較的短い話数の作品群が多いBLコミックスの中では珍しくBLウェブマガジン「.Bloom(ドットブルーム)」にて2017年から連載が続いており、2022年7月25日には5巻が発売された。

キャッチーな設定、魅力的なイケメンキャラクター、テンポの良いポップなストーリー展開、フェチ度高めな性描写……BL好きが満足する要素がたっぷり詰め込まれていることから人気を獲得した本作。その人気は折り紙付きで、シリーズ累計50万部突破(※紙・電子累計、2022年8月時点)、商業BLの祭典「BLアワード」では、2年連続(21年・22年アワード)シリーズ部門BEST20に入賞している。



本稿では『簡ロマ』を手掛ける作画・赤原ねぐ先生と原作・瀬森菜々子先生、担当編集にインタビューを実施。前後編に分けて作品の制作話をお届け。後編では最新5巻の内容、作品を手掛ける上でのこだわりについて伺っていく。

メインカップルは結ばれない予定だった?『簡ロマ』インタビュー前編はこちらから

今後も当て馬が出る予定はありません!

――7月25日に『簡ロマ』の5巻が発売されました。ついに結ばれた真田(亮司)と鹿嶋(幸)は大学生になり、2人のSMプレイが見どころになっているのかなと。

担当編集(以下、担当) 5巻からは『大学生編』『SMステップアップ編』の2軸で物語が進んでいきます。今まで他者に殴られて快感を得ていた鹿嶋ですが……。

瀬森菜々子(以下、瀬森) 大学生になったというのも、もちろんあるのですが(笑)、暴力から快感を得る“だけ”ではなく、真田と鹿嶋二人でSMプレイに挑戦するなどして、鹿嶋自身の性癖を整理していく機会を作れればな、と思っています。

『簡易的パーバートロマンス』5巻表紙(左:真田亮司、右:鹿嶋 幸)

――真田のモデル事務所の先輩・(樋橋)葵や鹿嶋の大学のサークル仲間など新しいキャラクターも続々と登場していますよね。

赤原ねぐ(以下、赤原) 葵が登場した時は、読者のみなさんがすごく不安になっていましたね(笑)。

『簡易的パーバートロマンス』5巻 p.56 葵初登場シーン(右:真田、左:葵)

担当 そうそう。「真田にちょっかいを出さないでほしい!」といろいろ言われていました(笑)。なので、帯にも「※当て馬は出てきません」と注釈を入れたんです。

『簡易的パーバートロマンス』5巻裏表紙 帯に「※当て馬は出てきません」という記載が

赤原 真田のサークル仲間も危惧されていましたからね。「鹿嶋のこと好きになっちゃうんじゃないか」みたいな(笑)。

『簡易的パーバートロマンス』5巻 p.39 鹿嶋が漫画研究会への入部を決めるシーン

瀬森 鹿嶋は確かに“いい顔”なのですが、あそこまでの強面をすぐ好きになる人はあんまりいないかなと思うので「安心してください」と言いたいですね(笑)。というのも、私も赤原先生も、間男的存在にあまり興味が湧かなくて……。真田と鹿嶋においては間男が入ってきてもお互いのことしか見ていないので、どうにもならないというのもありますし。なので今後も出てくることはないです(笑)。

――安心して読めるのは一読者としても嬉しいです(笑)。また、同棲打診を鹿嶋がするという展開には驚きました。

瀬森 かなり相談したシーンですね。赤原先生にたたき台を見ていただいて、「どう思いますか?」と意見を聞きました。鹿嶋から同棲を打診することは決めていたのですが、最初はこれまで通り不遜な態度で真田に伝える展開を考えていました。

赤原 そのプロットを読んで、私から「鹿嶋も緊張していてほしい」とお伝えしました。鹿嶋も成長しているはずなので、「断られたらどうしよう」と不安に思っているのではないかと。何よりその方が絶対にカワイイだろうなと(笑)。そこで握った手に少し汗をかかせてみたり、真田から承諾を得た際にはホッとした表情を入れたりしました。

『簡易的パーバートロマンス』5巻 p.161 鹿嶋が真田へ同棲を打診し、真田が承諾したあとホッとした鹿嶋の表情に注目

瀬森 おかげですごくいい話になったなと感じています。物語が始まった当初、鹿嶋は他人のこと一切を気にしないタイプでしたけど、真田を好きになってからは、「俺はこう思うけどお前はどう思っているんだよ?」と真田の反応をすごく気にするようになった。だから前までは考えが及ばないことも考えられるようになっているのではないかと。真田と過ごす過程で、鹿嶋も成長していてほしいという気持ちもありましたね。

キャラクターたちに重荷を背負わせたくない

――『簡ロマ』を手掛ける上で特に意識していること、こだわっていることはありますか?

瀬森 「今描いているキャラクターたちに必要以上につらいことは起こってほしくない」というのが基本にあります。つらい作品を描きたいなら、全く別のお話で別のキャラクターで描けばいいかなという感じです。

赤原 そんな思いもあって、初期からの明るいアップテンポな雰囲気からは外れなくていいなと思っているんです。
また、脇のキャラクター含め、読者の方に嫌われてほしくないとも思っています。『簡ロマ』シリーズに登場するキャラクターは全員好きなので。全員幸せに笑っていてほしい(笑)。

『簡易的パーバートロマンス』4巻 p.177 『高校生編』ラストの卒業式のシーン(左から直人、真田、カオリ ※鹿嶋の母、鹿嶋、翔)

瀬森 本当にそうですね。「今、あの子たち何をしているのかな」とすごく考えちゃうくらいみんな好きなキャラですね(笑)。

担当 現実世界において良い人しかいないことはあり得ないのですが、創作物だからこそ、そういう世界を描いていただくことにも意義があると思います。ハッピーになりたくてBLマンガを読まれる方も多いですからね。

――そういう意味では読者の方たちの反応や反響は結構気にされているのでしょうか。

赤原 「それ素敵!」と思うことはたくさんありますが、あくまでも「自分たちが描きたいもの」が1番の優先事項ですね。

瀬森 なので、読者のみなさんの要望と私たちが描きたいものが噛み合ったら最高ですね。ただ、「決めゴマはこの顔をさせよう! 私たちがこの顔を見れて嬉しいんだから、きっと読者さんも喜んでくれるはず!」と考えることはもちろんあります。

担当 いろんな意見に対してイエスマンになってしまうと、本当に描きたいことがブレてしまいかねない。意見をいただけるのは本当にありがたいですし、編集者としてレビューやSNSなどでマイナス意見を見ることも普通にあります。それはすごく勉強になりますが、その意見だけに配慮することはできない。それよりもお二人が描きたいと思うものを描いていただく方が良いと考えています。

長期連載だからこその、“整合性”を取る難しさ

――『簡ロマ』は赤原先生・瀬森先生としてもBLコミックスデビューのシリーズ作品であり、.Bloomとしても初のシリーズ作品です。長期連載をする上での大変さ・難しさを感じることはありますか?

担当 整合性を取っていくのは楽しくも大変な作業ですね。私は『簡ロマ』のほかに、別のシリーズ作品も担当しているのですが、どちらも大事なポイントには全部コミックスに付箋を立てています。
また、コミックスになる前の構成チェックの段階で、私以外の編集者にチェックを入れてもらいます。その際は整合性が取れているかの二重チェックを行っています。

瀬森 私も同じですね。過去に描いたことと同じような描写や構図が(意図的なもの以外で)あってはいけないので、何回も読み返してはチェックしています。『高校生編』では特に意図的な反復も多いため、注意していました。
例えば、3話で鹿嶋が真田に「お前さ、俺に会えて良かったよ。マジで」と言うシーンがあります。そして『高校生編』の最終話では真田が鹿嶋に「お前こそ、俺に会えて良かったっつーの。マジで……」と言う。そういった台詞を回収する作業が複数回あることは、単巻ものとは違うと思います。

『簡易的パーバートロマンス』1巻 p.102 鹿嶋が真田に「お前さ、俺に会えて良かったよ。マジで」と言うシーン

『簡易的パーバートロマンス』4巻 p.175 1巻の鹿嶋の台詞を真田が回収したシーン

赤原 私としてはリクエストがあったものを描くだけなので、そこまで苦労はなく……描こうと思えば一生描けるなと思っています。

瀬森 それは本当にそうですね! ただ読者のみなさんがずっとついてきてくれるかという心配はあります。

担当 そこが難しさでもありますね。すごく新陳代謝のいいジャンルなので、作家さんも読者さんも増え続け入れ替わっていく。.Bloom作品は大体年に1回のペースでコミックス発売ということもありますし、読者さんが追いかけ続けるのも大変です。シリーズ作品とはいえ、どこで終わらせるかなど常にバランスは考えていますね。

――そういう意味では『簡ロマ』の終わりもある程度考えているのでしょうか……?

担当 これくらいの巻数で終わらせた方がよさそう、という相談はしています。キリの良さを考えると『大学生編』までかなと思いつつ、結局『高校生編』で終わらなかったわけですし、その時になってみないと分からない部分はありますね。

赤原 きっといつ終わっても、その後を同人誌で描くとは思うんですよ。『大学生編』同様「それで描くならいっそ連載を続けようか」となるかもしれないし、「いやもう、十分続けたから終わりにしよう」となるかもしれない、という感じですね。

瀬森 鹿嶋が社会の荒波に揉まれている姿を見たいとは思わないので描かない、という選択を取る可能性もあります(笑)。それこそ描きたい部分だけを描くなら同人誌の方が描きやすいので、その時になってから改めてどうしていくかを決めていきたいと思います。とはいえ、まだすぐには終わらないかなと!

BLを愛する3人が語る「BLの魅力」

――それでは最後に、お三方が感じるBLの魅力を教えてください。

赤原 なぜここまで萌えるのか、上手く言語化できないのですが……(笑)。リバ(攻め受け固定ではないこと)も好きな私としては、「対等な関係性」を魅力に感じているのかもしれません。個人差はあれど(腕力的な意味での)力関係はある程度対等と言えますし、同じラインに立たせやすいところが特にいいなと思います。

瀬森 「人間賛歌」なところでしょうか。人それぞれ捉え方が違うと思うのですが、私はBLを「男とか関係なく、お前だから好きなんだ」という文脈以上に、「今ここにいる、男のお前が好きなんだ」という文脈で愛しています。「今ここにいる“男の”お前に出会えて良かった」とキャラクターには思っていて欲しいし、「彼らが彼らであったからこそ今愛し合えている」という事実を一緒に喜ぶことができるのはBLの魅力のひとつだと思います。

担当 商業BLの魅力として語らせてもらうと「間口の広さ」だと私は思います。ファンタジー、歴史モノ、裏社会、○○バース、獣人……あとジャンルの話ではありませんが、念入りな準備なしでもエッチができるのも含めて(笑)、懐の深いジャンルだと思います。BLは最高です!

©赤原ねぐ・瀬森菜々子/集英社

取材・文/阿部裕華

簡易的パーバートロマンス 5

赤原 ねぐ

2022年7月25日発売

759円(税込)

B6判/176ページ

ISBN:

978-4-8342-6518-7

「全然足んねーわ、お前との時間」
晴れて恋人同士になった真田と鹿嶋は、それぞれ別の大学へと進学。真田は本格的にモデル業を始め、鹿嶋はなんと漫研に入部することに!
なかなか会えない時間を埋めるように愛情を深め合う二人は、エッチのプレイ内容もステップアップしていこうと、SMの知識を(真田だけ)つけ、初めての緊縛にも挑戦!
更には頼れる先輩も登場&とうとう同棲打診…!? 内容てんこ盛りの大学生編、スタートです★

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