まず、老後2,000万円問題で出てきた数値とは平均値などを用いた数値であり、誰しもが2,000万円必要というわけではありません。共働き世帯はもっと少なかったり、単身者はもっと必要だったりします。
2000万円じゃ足りない? 年収各400万の共働き世帯が本当に必要な老後資産はいくら?
集英社オンライン / 2022年9月18日 10時1分
世間を騒がせた老後2,000万円問題。最近ではNISA制度の拡充に向けたニュースも出てきており、自助努力が欠かせないことは一般的な認識となった。しかし、ほとんどの人は自分の場合、老後資金としてどれだけの準備が必要かを把握していないのも事実だ。今回は、自分の老後資金を調べる方法をお届けする。
自分に必要な老後資金の調べ方
老後資金はあなたの今の働き方で決まる
その理由は、働き方によって年金額は異なるためです。したがって、老後資金を考えるためには、まず自分の年金額を試算することから始める必要があります。
会社員の場合は、基礎年金と厚生年金の2つの年金に加入しています。アルバイトやフリーランス、自営業者、または会社員の配偶者(パートタイマー含む)などは基礎年金のみとなります。
基礎年金の金額の試算はとても簡単で、20歳〜60歳までの加入期間がわかれば試算できます。令和4年の基礎年金の満額は約78万円/年です。この金額は40年間(480か月)欠かさず納めた場合に受け取れる金額です。もし、未納期間などがある場合は、その分だけ年金額が少なくなります。
つまり、計算式にすると【基礎年金額 = 780,000 × 加入期間 / 480か月】となります。
続いて厚生年金の金額ですが、こちらは年収などによって異なります。厚生年金部分を報酬比例部分と呼びますが、その名の通り報酬によって保険料が異なるため、受け取る年金額も報酬に比例します。
正確な計算はとても煩雑なのですが、簡単に計算するなら、以下の計算式で計算することができます。
【厚生年金の金額 = 平均的な年収 × 勤続年数 × 0.005481】
仮に働いていた期間の平均的な年収が400万円、勤続期間は38年だったとします。計算式に当てはめると「400万円 × 38年 × 0.005481」となり、計算すると約83.3万円となります。
もし、この人が基礎年金を満額納めていた場合、基礎年金約78万円、厚生年金約83.3万円を合わせた161.3万円が65歳から支給される年金額の目安となります。ひと月換算すると約13.4万円となります。
年金は20〜30%は少なくなることが既定路線
年金とは一人一人の働き方で金額が決まるため、仮に夫婦共働きで年収条件などが同じであれば、夫13.4万円、妻13.4万円ですので、合わせると26.8万円となります。現実的には女性の年収が低いことが多いですが、それでも夫婦共働き世帯であれば、それなりの年金額になることがわかります。
さきほど試算した金額は現状の年金額です。しかしながら、年金は財政維持のため将来的には20〜30%減少することがある程度わかっています。(これについては「マジで年金破綻を信じているとヤバい理由」で詳しく書きました)少子高齢化の影響で、年金財政が厳しくなっているのはご存じの通りです。
かつては支え手である現役世代の保険料を増やすことで対応していましたが、これでは現役世代への負担が大きすぎることから、収入である保険料を増やすのではなく、支出である年金額を調整するようになりました。この調整機能を果たすのが「マクロ経済スライド」というものです。
マクロ経済スライドで調整した将来の想定年金額は厚生労働省が5年に1度行っている年金財政検証レポートから確認することができます。
年金財政は、人口推移、労働参加率、経済成長率、実質賃金の上昇率など様々な変数によって影響を受けるため、レポートでは様々な経済前提でシミュレーションしている結果が確認できます。
2019年財政検証結果
ざっくりの理解として、ケース1がハッピーシナリオ、ケース6がバッドシナリオと思ってください。ケース1は個人的にはあり得ないと思っているので、ケース4やケース5あたりを想定するといいと思います。
老人の「年金額」と現役世代の「手取り収入額」
この資料で見てもらいたい数値は「所得代替率」と言う数値です。所得代替率とは、モデルとなる年金受給世帯の年金額が現役世代の平均手取り収入額の何%を占めるかという指標です。これを見れば、将来どれくらい減るのかを考えることができます。
ケース4もケース5もそれぞれ50%という数値が書かれています。この意味は2019年時点の所得代替率は61.7%だったが、将来50%になるよということです。
つまり、61.7%が50%になるということは80%(50%/61.7%)ほどになるということです。法律では50%まで下がると見込まれる場合は再検討を行うこととなっていますが、機械的にマクロ経済スライドで調整を進めるとケース4は46.5%となり、現在の水準の約75%。ケース5は44.5%となり、現在の水準の約72%となります。
実際は基礎年金の方がマクロ経済スライドで減る割合が多いのですが、このあたりまで話すとマニアックなので、一般的な理解としては現在の年金水準から20〜30%ほど減ると思っておくと良いでしょう。
ここまで理解できれば、あとは簡単です。最初に試算した年金額に70%〜80%を掛けた金額が将来の年金受給額の目安となります。もっと減ると思う人は、さらに少ない数値を掛けてください。
(年金額-生活費)×生存年数=準備しておく金額
冒頭で試算した年収400万円の人の場合の年金額(約161.3万円)を例に使うと、以下の通りです。
「161.3万円 × 70% = 約113万円」
ひと月換算すると約9.4万円となります。もし、配偶者も同様の年収であれば18.8万円(9.4万円×2)となります。
もし、このご夫婦が生活していくために必要な金額が23万円であれば一月あたりの不足額は4.2万円となります。年間50.4万円ですので、あとは生存年数を掛けると不足額が出てきます。
老後2,000万円問題のレポートは30年間で試算していたので、同じ条件で計算すると約1,500万円(50.4万円×30年)となります。
また同レポートを読んだ方はご存知だと思いますが、老後2,000万円問題の金額は介護費用などを含まない金額なので実際はプラス1,000万円ほどを準備する方が望ましいです。ですので、年収400万円の共働き世帯であっても2,500万円ほどは準備しておく必要があると言うことになります。
このようにご自身の家族構成や働き方によって年金額が異なるため、まずはご自身の年金額を試算し、その不足額を把握しましょう。その上でどれくらい投資をするのか、または長く働き年金を繰下げ受給するなどの対策を考えることが大切です。
文/井上ヨウスケ
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