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人力なのに電動なみのラクチンさ! 日本人に最適化された自転車「ルートワン」の革新的構造

集英社オンライン / 2022年9月6日 13時1分

自転車は今から約200年前に誕生し、その後、進化を遂げ現在の姿になった。当然、私たちはなんの疑いもなく乗りこなし、当たり前のものだと思っているが、その最終形態は「日本人に最適化されていないのでは?」と一石を投じる自転車メーカーが現れた。それがディスカウントストア「オリンピック」から分社した「サイクルオリンピック」だ。2020年、その信念をもとに完成されたオリジナル自転車「ルートワン」。開発の陣頭指揮を執った社長の古屋直隆氏にお話を聞いた。

革新的自転車のルートワン。一見、普通の自転車に見えるが、前輪のフォークを取り付けるパイプ(ヘッドチューブ)が極端に長く、サドルの位置が後方にあり、ペダルがサドルの真下ではなく前方にある。この変わったフレーム形状が、今までにない力を生み出す


「日本人のための自転車を作りたい」という思い

コロナ禍で密集を避ける習慣が影響したのか、2020年度の自転車販売市場では過去最高を更新。事業者売上高ベースで2100億円を超えたという。特に電動アシスト自転車の売り上げが好調で、2010年代後半から販売台数・金額ともに右肩上がりだ。

そんな中、100% 人力だけど、電動アシスト自転車に迫る快適自転車が現れた。その名は「ルートワン」。なんとモーターはついていないのにスイスイ走る。この自転車が売れているのだ。

こちらはディスカウントストア「オリンピック」から分社した「サイクルオリンピック」が、2020年、「日本人に最適化した自転車を作りたい」という信念のもとに作り上げたオリジナル自転車。

購入者に乗り味を聞くと、「この自転車以外に乗りたくない」「坂道でも立ちこぎしなくて大丈夫」「ハンドルを引く力が、足に伝わるのを感じる」と絶賛している。販売店でも「父親が買って、子供にすすめるみたいな家族内リピーターが続出しています」と。

実際、筆者も試乗。「思っている以上に進む」「前傾にならず、視野が広く、こぐ姿勢がとっても楽」と感動。今までにない乗り味に驚かされた。

こんな革新的自転車をどうやって完成させたのか? 開発の陣頭指揮を執った社長の古屋直隆氏にお話を伺った。

サイクルオリンピック社長の古屋直隆氏

前傾姿勢にならず、視野が広い。サドルが後方にあるので、ペダルをしっかり踏み込める

──私はよく自転車に乗るのですが、「ルートワン」があまりにもスイスイ走るのでビックリしました。つい、老人になっても電動アシスト自転車にお世話にならずに生涯を全うできるかもしれないと思ってしまいました(笑)。

うれしいです。実はみなさんにそんな風に言っていただいています。

──なぜ、自社でオリジナルの自転車を開発しようと思ったんですか?

私は以前から「日本人のための自転車を作りたい」と考えていました。自転車の起源は約200年前にドイツで作られた「Draisine(ドライジーネ)」で、これは足で地面を蹴って歩くように走る仕組みです。

そこから自転車は進化を遂げましたが、胴長で手足も短い日本人はヨーロッパ人の体に合わせた規格の自転車に“乗らされてきた”という感覚がずっとあったんです。それで自転車の起源にもう一度立ち還り、オリジナルの自転車を作りたいと、会長に相談したら「すぐにやれ!」ってことになりまして。

「ルートワン」は、自転車の起源である「Draisine(ドライジーネ)」から分岐した、日本人のためのもう1つの進化を追求した

──開発の経緯を教えてください。

山形市に住む竹田徹さんという方から、理想の自転車を自作したいから、私たちが2018年に作った世界初のギアクランクシステムを貸してくれないかというオファーが届いたんです。

面識はありませんでした。どうしようと思いながらやりとりをしているうちに、彼は国立大学で機械工学を学び、大手自転車メーカーに就職。開発に携わってきて、今は体調を崩して退職したものの、自転車への情熱がすごいということがわかり、お貸しすることにしたんです。

彼の持論は「日本人には従来の長さのクランクより、足の上下動が少ないショートクランクの方がこぎやすい」というもの。ただし、ショートクランクは、こぎ出しが重いという弱点もある。それを補うのが私たちの作った世界初のギアクランクシステムという話でした。

※クランクとは、ペダルとチェーンを回す歯車を連結させるパーツ

──「世界初のギアクランクシステム」ってなんですか?

「フリーパワー」と言って、サイクルオリンピックのオリジナルパーツの第1号です。宮崎県の発明家・浜元陽一郎さんと共同開発しました。

ペダルを踏み込む力で、ギアに内蔵されたミニドーナツのような形のシリコーンを圧縮し、その反発力を効率よく回転エネルギーに変換するシステムです。上り坂をこぐ際も電動アシスト自転車かと思うぐらいの軽さです。つまり電池の要らないアシストギアです。

電池の要らないアシストギア「フリーパワー」のメカニズム

──「フリーパワー」をお貸ししてその後は?

お貸ししたのが2019年の冬。すると、数ヶ月後に竹田さんから「すごいものができたから、ぜひ試乗に来てほしい」という連絡がありました。

半信半疑で私を含む社員3人で出向いて乗ってみたんですが、ものすごい衝撃が走りました。自転車が勝手に進む感覚があって、あまりにも快適な乗り味にひっくり返りました。今までにない自転車ができると確信して、その場で仮の共同開発契約を結びました。

──試作車にさらに工夫を加えたとか……

日本人の体形に合った「ショートクランク」と「電池の要らないアシストギア」の組み合わせだけでなく、さらなるパワーを追加するためにハンドルの形状にこだわり、「綱引きの理論」を持ち込みました。

実は、これまでの自転車は上半身の力を活かしきれていなかった。綱引きは腕が綱を引く力を利用し地面を蹴りますが、この理論を応用し、ハンドルを引くことで生まれるパワーをペダルを踏み込む力に変換できるようにしました。これでさらにペダリングが軽くなりました。

綱引きの綱のように、まっすぐに引く感覚を生み出すM字ハンドル

「ルートワン」は、綱引きのようにハンドルを引くことで、上半身の力を下半身に伝える仕組みなっている。一方、前傾になるこれまでの自転車だと、上半身の力は体を固定するだけに使われ、推進力にはならない

──「ルートワン」の売れ行きはいかがですか?

入学や転勤シーズンの3月、4月はすごく売れます。首都圏の全37店舗で月100台ぐらいですね。とくに徳島県の自転車店「Cycle Space UZU」さんは、繁忙期ではないシーズンに月7台も売ってくれました。うちの1番売る店でも月に4、5台だからすごいことです。

──どんな種類がありますか?

量産型モデルには税込7万9800円のS型(スポーツ仕様。走りを楽しむイメージ)とF型(ファミリー使用。カゴ付きでお買い物ユースのイメージ)の2種類があります。

さらに、使用する素材を徹底的に日本産のものにこだわったオーダーメイドモデルの高級車「MADE IN JAPAN」(税込25万3000円)もあります。見た目も美しいクロモリのフレームで、熟練の職人が作っています。

──今後の展開は?

現在、後ろに子どもを乗せるチャイルドシートを付けての試乗実験を始めています。実験は好調で、ルートワンのパワフルな乗り味が、ゆくゆくは子育て世代にもお役立ちすることを願っています。

サイクルオリンピックでは「ルートワン」の試乗ができますので、「ショートクランク」、「フリーパワー」、「綱引き理論」が生み出す新しい乗り味を、みなさんに楽しんでいただければと思います。電動アシスト自転車でなくとも坂道をガンガン攻められることを体験してほしいですね!

取材・文/石原たきび

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