オリジナルグッズは即完売、アイドルとコラボも。大阪「スーパー玉出」唯一無二の存在感

大阪の新たな観光スポットとして「スーパー玉出」が人気を集めている。スーパー玉出とは、大阪（と兵庫の一部）に店舗展開するローカルスーパーマーケットチェーン。食品や生活雑貨を格安で販売しながら、一度見たら忘れられないカラフルな外観と内装、ギラギラしたネオンサインで他に類を見ないスーパーとなっている。そんな独自性を発揮し続けているスーパー玉出の魅力に迫る。

スーパーで買い物すること自体をエンタメに！

東京から大阪に引っ越してかなりの年月が経つ筆者にとってはすでに日常の風景の一部となった「スーパー玉出」だが、初めて見た時はそのド派手な見た目にかなり驚かされた。インパクトをとことん重視し、店に入ってみればとにかく安いというのがいかにも大阪らしく、観光スポット化するのも納得だ。

スーパー玉出が唯一無二の魅力をキープし続けている理由と、数年前にスタートして人気を集めているオリジナルグッズの展開、アイドルとの親和性など。運営する株式会社フライフィッシュの取締役経営企画部部長・國枝尚隆さんに話を伺った。

――スーパー玉出といえば看板やネオンサインの派手さがとにかく目立っていますが、そもそもどうして、ああいったテイストになったのでしょうか。

それは2018年の7月1日に事業譲渡を受ける前からなので、なんとも言いようがないんですけど（笑）

今はネットで生鮮食品も買えるし、頼めばなんでも運んできてくれる。外に出なくても買い物ができる時代ですよね。さらにコロナ禍になって、そういった傾向はより進んでいます。それでも、わざわざ店舗に足を運んでくれるお客様がいるわけです。

しかも、大阪府内であれば、スーパー玉出じゃなくても、すぐ近くに他のスーパーが2軒も3軒もあるところが多いですよね。食料品や生鮮食品を扱うドラッグストアもありますし。それでもスーパー玉出を選んで買い物をしてくださるというお客様に、単に買い物をするだけじゃなく、スーパー玉出に来ること自体を楽しんでもらいたいなというのが一番の理由なんです。

看板にしてもネオンにしても安さにしても楽しい要素を一つでも増やしていきたいなと考えています。

商品価格は日によって変動する

――事業譲渡を受けた後に、旧来のイメージを新たにしようとは考えませんでしたか？

私どもは譲渡の2年前から色々な形でスーパー玉出について調査をしていたのですが、調べれば調べるほど面白いスーパーだなと思ったんです。スーパーマーケットらしからぬ、あの看板も非常に面白いと思いましたし、そこは変えることなく押し出していきたいなと。当初から、ほのぼのとしたアットホームな雰囲気を大事にしたいなと考えていました。

商品の安さは「我慢と努力で（笑）」

――大阪の観光スポットの一つになっているという話も聞きます。

そうなんです。大阪に旅行に来た方がスーパー玉出のサコッシュを肩から掛けてUSJで写真を撮って、帰りにスーパー玉出に寄って新幹線で食べるお弁当やお酒とおつまみを買っていくとか、そういう方がたくさんいらっしゃるんです。そういう人たちもやっぱり、看板だとかネオンだとか、お惣菜の安さだとかに魅力を感じて行ってみようと思ってくださったんだと思います。

――外観や内装だけでなく、商品の安さもスーパー玉出の魅力ですよね。その点も事業譲渡前からスーパー玉出の大きな特色だったとは思うのですが、それを引き継いでいくのは大変なのではないでしょうか。

そこは我慢と努力で（笑）。

今年になってから円安の影響もあって色々な物が値上がりしていて……でも、そこは努力するしかないですし。まあ、そういう話をしても面白くないじゃないですか（笑）。

――そうですね。話を変えましょう。最近では、攻めたTシャツをたくさん作っているアパレルブランドの「HARDCORE CHOCOLATE（ハードコアチョコレート）」とスーパー玉出のコラボもありましたよね？

はい。コロナの影響もあって大変だったりしたんですが、なかなか面白いものになりましたよね。おかげさまで初回生産分はいきなり売り切れになったと聞きました。

――かなりインパクトのあるデザインになっていました。スーパー玉出のオリジナルグッズも新しいものを出すたびに売り切れになるぐらい人気を集めていますよね。

今一番新しいのがミニトートなんですけど、これが結構人気なんです。生地も厚手で巾着になっていて、うちの社員がお子さんを保育園に迎えに行く時に下げて行ったらママ友に『何これ！いい！』って言われたそうで（笑）それ以来、お子さんに保育園に持たせてるらしいです。スーパー玉出のアプリから通販で買えるものなんですけど…。

大阪から世界のスーパー玉出へ

――いいですねー！ お弁当を入れて持ち歩くのにもよさそうです。

スーパー玉出グッズは出たら必ず買うという方もいらっしゃるので、本当にプレッシャーなんですよ（笑）。アプリで写真だけ見て買っていただくから、実物が届いた時に『えー』ってがっかりされることがないように、クオリティにも気を配ります。こういうグッズを大阪以外の方が買って大阪旅行に持ってきて店舗にも来てくれる。そういうきっかけになればと。

スーパー玉出のエコバッグは、海外旅行に行く方が持って行ってくれたりして、世界に旅立っていますよ。普通、ローカルスーパーってその地域で利用している人しか知らないじゃないですか。スーパー玉出は大阪以外の方にも広く知っていただいていて、すごくありがたいです。

――スーパー玉出のCMにはアイドルグループの「カラフルスクリーム」の方が出演されていて、そういうつながりも意外でした。

もともと『WEAR』という大阪・西成発のアイドルグループが、歌詞の中に『スーパー玉出』が登場する楽曲を出したことがあったんです。その時に事務所の方からうちのロゴを使ったパーカーを作りたいと連絡がありました。それを着てその曲を歌って、物販でも売りたいということだったんです。

ぜひやってくださいとお答えしたんですが、そんな縁があって、スーパー玉出がやっているテレビ番組やラジオに彼女たちをゲストとして呼んだんです。

――そういう経緯があったんですね。

そうなんですが、残念ながらその「WEAR」が解散してしまったんです。まだ先の番組への予定も決まっていたので、出演を引き受けてくれる方を探したんです。そうやって出会ったのが大阪を拠点に活動している「カラフルスクリーム」でした。

アイドルグループってそれぞれにコンセプトやイメージがあってそこは非常に重要な部分なので、難しいかなと思ったんですが、出演を受けてもらえることになったんです。

それからずっと番組に出てもらったり、「オオサカジン」というWEBマガジンでインタビューをさせてもらったり、CMにも出てもらうことになりました。

斬新なスーパーマーケット運営に期待

カラフルスクリームが出演したスーパー玉出のCM

――CMの反響はいかがですか？

スーパー玉出のCMを見てカラフルスクリームのファンになったという方も結構いて、それがうれしかったですね。彼女たちアイドルも、私たち小売りと通じるところがあると思うんですよ。彼女たちのライブはYouTubeにも上がってるんです。それで見ることができる。

でも、ファンの人たちってやっぱり現場に行くんですよね。全国から大阪のライブを見に来る方がいるし、大阪のファンも、東京でライブがあればそれを見に行く。ファンにとってはライブであることが重要で、その場にいることが大事なんです。

――同じ時間や場所を共有していることに価値があるわけですね。

そうです。だから彼女たちはファンのみなさんにライブに来てもらうためにすごく努力しているんです。ステージでどんな風にパフォーマンスをするかを常に考えたり、人気のある他のグループをたくさん見て研究してるんですね。徹底的に勉強している。そういう姿勢は私たちにとって見習う部分が大きいなと思うんです。

もちろん、アイドルのライブとスーパーマーケットはまた別のものですけど、どうしたらお客さんに足を運んでもらえるかというのを常に考えるというところでは同じなのかなと、彼女たちを見ていて思うんですよね。

――どちらも、ネットでは味わえない現場のライブ感を楽しんでもらうためにすごく工夫されているということですよね。こんな世相ですが、これからも楽しい話題を期待しています！

※

まさかアイドルグループとスーパー玉出の共通点を知ることになるとは予想もしていなかったが、確かに、國枝さんにお話を伺うと現場に足を運んでもらうための不断の努力という点は変わらないのだと思った。

ちなみに國枝さんはもともとアイドル好きだったわけではなく、「WEAR」や「カラフルスクリーム」がきっかけでその魅力に目覚めたんだとか（それまではライブと言えば、クラシックやオペラにしか行ったことがなかったらしい）。

ここしばらく、コロナの影響で「カラフルスクリーム」のライブを見に行けてないそうで、「落ち着いたら行きたいと思っているんですけどね」と語っていたのが印象的だった。

大阪にお住いの方も、大阪以外に住んでいる方も、スーパー玉出の今後の動向をぜひ楽しみにしていて欲しい！

見ているだけで楽しくなるスーパー玉出の写真集

※商品価格は日によって変動します

取材・文・撮影／スズキナオ