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コロナだけじゃない! 帯状疱疹、破傷風...受けておいたほうがいい、大人のワクチンリスト

集英社オンライン / 2022年9月14日 12時1分

山田悠史医師は、ニューヨークにある大学病院で「老年医学専門医」として高齢者の診察を行なっている。日々患者と向き合いながら、約1年をかけて書き上げたという新著『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』には、正しいエビデンスに基づいた「健康寿命」を延ばすためのヒントが満載だ。今回は「大人こそ打っておきたいワクチン」について、山田医師に教えてもらった。

ワクチン接種は「免疫の防災訓練」

新型コロナウイルスの蔓延によって、一躍脚光を浴びたものといえば「ワクチン」でしょう。そもそもワクチンとは、感染症およびその重症化を未然に防ぐ、「予防医療」に欠かせないものといえます。

ワクチンによる予防接種は、たとえるならば免疫の防災訓練のようなもの。体の中に病原体が入ってきた時、「この病原体にはこう対処しよう」というシミュレーションを行ってくれる役割をもっています。



しかし、ワクチンの効果は時間とともに薄れてしまうため、随時アップデートが必要なものもあります。そこで今回はコロナ、インフルエンザなど馴染みのあるワクチン以外の、大人が受けておきたい「予防接種」をご紹介しましょう。


① 破傷風ワクチン
まず1つめが「破傷風ワクチン」です。破傷風ワクチンは初回接種が済んでいても、10年に1回のアップデートが必要です(※1)。1回済ませてしまえばしばらくは安心して過ごせます。

破傷風を起こす細菌は自然界の土壌中に住んでいて、普段はあまり問題になることのない感染症ですが、例えば転んでけがをしてしまったなどの際には問題になることがあります。出血を伴うけがで病院に救急搬送されてきた患者さんには、その場で破傷風ワクチンを打つことも。

破傷風に感染すると体の筋肉が硬直するような病気を起こし、多くの方に後遺症を残してしまうため、医師としては「血を見たら打て」と言われるほど重要度の高いワクチンなのです。

特に農作業など破傷風リスクの高い仕事をされている中高年の方で、この10年以内に接種を受けていない場合には、ワクチン接種が望ましいですね。

② 帯状疱疹ワクチン
次に「帯状疱疹ワクチン」です。帯状疱疹ワクチンは50歳以降の接種が推奨されていて、2ヵ月間隔で2回の接種が必要となります。帯状疱疹ワクチンの効果は非常に高く、臨床試験では帯状疱疹予防に対して90%を超える有効性が報告されています(※2)。

帯状疱疹は命を奪う病気ではないため、軽視される傾向がありますが、一度罹ってしまうと長期にわたって痛みが持続することがあるため、QOL(生活の質)を大きく落としてしまうことも少なくありません。

病気の重さと本人の自覚症状の重さ、そのバランスが釣り合わない病気でもありますから決して甘く見ず、50歳以上の方はぜひ接種を検討していただけたらと思います。

<参考文献>
※1
Liang JL, Tiwari T, Moro P, et al. Prevention of Pertussis, Tetanus, and Diphtheria with Vaccines in the United States: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). MMWR Recomm reports 2018; 67: 1-44.

※2
Lal H, Cunningham AL, Godeaux O, et al. E cacy of an adjuvanted herpes zoster subunit vaccine in older adults. N Engl J Med 2015; 372: 2087-96.

まだまだある、受けておきたい「大人のワクチン」

③ 麻疹・風疹ワクチン
さらに「麻疹・風疹ワクチン」もあります。麻疹・風疹ワクチンは、基本的には子供の頃に皆さんが受けている予防接種です。しかし、定期予防接種に組み込まれたのは、麻疹のワクチンは1978年10月から、風疹も当時は女性のみしか接種が行われていませんでした。このため、1962年4月2日から1979年4月1日生まれの男性は、抗体価が低い場合に定期接種の対象となっています。

麻疹・風疹は大人になってからかかると重い症状が出やすいため、ワクチンの未接種を自覚していたり、上記に該当したりする方はぜひ受けておくといいと思います。自分自身がワクチンを受けたかどうか、または抗体価が十分かわからない場合には、医療機関で血液検査を受けることで調べられます。値が低い場合には追加接種が推奨されます。

そのほかでは、子宮のがんにつながるHPV感染症を防ぐ「HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」もあります。子供の頃に受けていない場合には、少なくとも26歳までの男女に推奨されます。また、メリットはそれ以前に比較して下がりますが、27歳以上でも(45歳ぐらいまで)未接種の場合は個別に相談になるかと思います。

原則65歳以上の方には「肺炎球菌ワクチン」もあります。ただし、喘息や肺気腫といった持病がある場合には、65歳未満でも推奨されます。持病があり未接種の場合には、かかりつけ医に相談をしてみてください。

ちなみに、海外旅行を計画している方は、旅行の準備と予防接種をセットで考えることが大切です。案外見落とされがちなのですが、海外では日本とは異なる感染症が流行している場合があるからです。

渡航先での接種も不可能ではありませんが、言葉が通じない国で大変な思いをするより、渡航前に済ませておいた方が何かと安心です。どこの国でどの予防接種が必要になるかは、厚生労働省検疫所の ウェブサイトから確認するといいでしょう。

「副反応」よりメリットに目を向けよう

コロナワクチンとインフルエンザワクチンは“同時期に接種してもいい”とされていますが、「異なるワクチンの接種間隔」は、厚生労働省がルールを設けています。詳しくはかかりつけ医、またはワクチン接種を行う病院に相談してみてください。

接種スケジュールを管理するのが面倒だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、破傷風ワクチンは10年に1回、帯状疱疹ワクチンも1度済ませてしまえば、インフルエンザワクチンのように毎年打つ必要はありません。そのため「この1年間で接種を完了させるものは?」といった中期的な計画を立てると、ワクチン接種の予定も組みやすいと思います。

コロナワクチンで経験した方はことさら「ワクチンの副反応」が気になるところでしょう。ですが、現在広く使用されているワクチンは科学的にメリットとデメリットを天秤にかけた際、メリットが上回るからこそ接種が推奨されているものです。

ワクチンは「防災訓練のようなもの」と冒頭でお伝えしましたが、副反応はまさに、体の免疫が避難経路のシミュレーションや防衛手段を確認するためのトレーニングを行っている際に出る砂埃のようなもの。そうしたトレーニングがあってこそ、実際の災害、つまり病原体の侵入時に、被害を最小限に食い止めることができるのです。

実際の災害>>>副反応だからこそ、ワクチン接種を受ける意義があります。副反応を正しく理解することも、ワクチンのメリットを享受するための大切なポイントだと思います。


取材・文/金澤英恵 撮影/金栄珠(講談社写真部)

最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM

山田悠史

2022/6/24

1,980円

単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 384ページ

ISBN:

978-4065285664

高齢者の2割には病気がないことを知っていますか?
今から備えればまだ間に合うかもしれません。

日本人の平均寿命は男性が81歳、女性は86歳。
でも、元気に自立した生活を送ることができる期間である「健康寿命」は、男性なら約72歳、女性なら約75歳と報告されています。
日本人は最後の約10年を、支援や介護を受けて生きているのです。

・65歳以上の約10人に1人は車椅子か寝たきり
・65歳以上の約6人の1人は認知症
・65歳以上の約3人に1人は5種類以上の薬を毎日飲んでいる
・65歳の約5人の1人は、少なくとも1つ以上の慢性疾患をもつ
・死に直面している人の約10人中7人は自分で意思決定ができない

これらの現実をどうしたら変えられるか、最後の10年を人の助けを借りず健康に暮らすためにはどうしたらよいのか、その答えとなるのが「5つのM」。
カナダおよび米国老年医学会が提唱し、「老年医学」の世界最高峰の病院が、高齢者診療の絶対的指針としているものです。

【5つのM】
Mobility ーーからだ
Mind ーーこころ
Multicomplexity ーーよぼう
Medications ーーくすり
Matters Most to Me ーーいきがい

ニューヨーク在住の専門医が、この「5つのM」を、質の高い科学的エビデンスにのみ基づいて徹底解説。
病気がなく歩ける「最高の老後」を送るために、若いうちからできることすべてを考えていきます。

「転倒」は高齢者の人生を狂わせる。次に転ぶ前に家族ができること はこちら
65歳以上の5人に1人は認知症に...その予防には「運動と睡眠」がカギとなる はこちら (9月17日11時公開予定)

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