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自己肯定感はがんばって高めなくてもいい。『「左ききのエレン」が教えてくれる「あなたらしさ」』とは?

集英社オンライン / 2022年9月13日 13時1分

広告業界やアート界が舞台の漫画『左ききのエレン』は、登場人物たちの様々な葛藤が描かれた群像劇。その名場面を題材に、悩み苦しみながらも懸命に生きる登場人物たちを、『スラムダンク勝利学』の著者・辻秀一が分析した『「左ききのエレン」が教えてくれる「あなたらしさ」』が9月5日発売された。本書にも書かれている“自己肯定感”よりも大事な「自己存在感」「あなたらしさ」について、著者の辻に改めて聞いた。

著者・辻秀一氏

『左ききのエレン』を通して「あなたらしさ」を伝えるワケ

――辻先生と『左ききのエレン』の出会いを教えてください。

もともとマンガを読むタイプではないのですが、娘(辻愛沙子)や周囲の人から「読んでほしい」と言われて読み始めました。それで、読んでみたところ、働くこと、生きることについてうなずけることが多くあり、ハマってしまったんですよね。生きることのリアル感があって、メッセージが伝わってくるなと思いました。



――今回『「左ききのエレン」が教えてくれる「あなたらしさ」』を出版することになったのは、なぜなのでしょう?

『左ききのエレン』のエレンを何度も繰り返しながら読む中で、ぜひいろんな方に本作の魅力を伝えたいと思うようになりました。それで、僕の専門である人間の心と脳にフォーカスして解説したいなと、原作者であるかっぴーさんにDMをしたところ「ぜひ!」とお返事をいただき、このたび出版することになったんです。

――『左ききのエレン』を題材にした本ということで、働き方に焦点を当てたものを想像していましたが、生き方そのものに焦点を当てた内容になっていますね。タイトルに「あなたらしさ」というワードを採用した経緯も気になります。

僕は“働く”というのは、その人を表現する方法の1つでしかないと思っており、日常と働くことをそんなに分けて考えていないんです。つまり、働くを論じることは生きるを論じること、生きるを論じるということはその人の思考や脳みそを論じること、すなわち、その人らしさであると考えているので「あなたらしさ」という言葉を使いました。

それに『左ききのエレン』を通して僕が感じたメッセージは働き方そのものではなく、働くことを通してどう生きたらいいのかを考えること、それらを通して自分を振り返ることで「自己存在感」を育んでいくことなんです。人と比べる必要のない、あるがままの自分に気づいてもらえたらいいなと思い、担当編集さんと何回も議論し「あなたらしさ」という言葉にたどり着きました。

肯定も否定もしない「自己存在感」に気づいてほしい

――先ほどお話にも出てきた「自己存在感」とは、なんでしょう?

人と比べることのない自分の価値、自分の中にあるものです。「自分はこういうことが好きだな」とか、「自分はこういうことに悩んでいる」という自分の中にあることのすべてを否定も肯定もせず、あるがままの状態で受け止めること。それこそが、人と比べずに、浮き沈みなく生きることの源に繋がっていると考えているんです。

――なるほど。自分を肯定する「自己肯定感」とは異なり、あるがままの状態、自分にとってダメな部分も受け入れることが「自己存在感」なのですね。

そうです。まさに自己肯定感という言葉に疑問を抱いていたときに、文部科学省の中学校の指導要領の中に「自己存在感を育む」という言葉を見つけて、僕なりに解釈し、打ち出しました。存在していることは、偏差値やレベルをつけることはできないので、誰かと比較したり、無理に高める必要もない。自分の考えや感じていること、そういう葛藤を含めて自分の中にあるものすべてを「自己存在感」と解釈したんです。

――「自己肯定感」という言葉に疑問を抱いたのはなぜでしょう?

「自己肯定感」と「自分らしさ」というのは全く別の軸なのになと思ったんですよね。僕たちは今、「肯定しなきゃいけない」「自己肯定感を高めなきゃいけない」「成功体験を求めなくては!」というように自己肯定感の蟻地獄の中にいると思っているんですね。

実際、オリンピックに出るようなスポーツ選手も、結果を出して、オリンピックに行って、金メダルを取ることによって自己肯定感を高めようとしていますけど、でも負けることはあります。毎日勝つか負けるかにばかり目を向けていると、自己肯定感なんて下がっていって当たり前、精神的に安定していない状況になってしまいます。そう考えた時に、それを「自分らしさ」とするのは違うな、肯定的な部分も否定的な部分も含めて「自分らしさ」なのではないかと感じました。

――たしかに自分のコンプレックスをも肯定するような流れの中で「それでもコンプレックスを肯定的に考えるのは難しいな」と感じてしまう経験って、あるように感じます。

そうですよね。僕もどんどんおじさんになっていく中で「おじさんになるのも楽しいよね」という風潮を感じることはありますが、やはり「若い方がいいな」と思うことは当然あります(笑)。でも、生きていればどんどん歳をとっていくのは当然で、それはもう変えられないことじゃないですか。そうなった時に、無理にポジティブシンキングに変えたり、おじさんであることを肯定しなくていいと思うんですよ。

否定に関してもそうで、最近は「今の自分に満足すると、成長できない」という風潮がありますが、生まれたばかりの子どもってダメ出ししなくても成長していけるんですよね。

だから、ポジティブがよくてネガティブがだめとするのではなく、ポジティブもネガティブも含めて、自分が持っていることを受け止めること。そこに意味をつけたり、評価したりすることをやめませんか、ただ“在る”を見つめていきませんかということを伝えたいなと思っています。

――なるほど。『「左ききのエレン」が教えてくれる「あなたらしさ」』では『左ききのエレン』を通して、先生が伝えたい「あなたらしさ」について書かれているのですね。

はい。ただ、ジェネラルな光一がいいとも、スペシャルなエレンがいいとも書いていないのがこの本の特徴です。いろんな考えやいろんな事象を通して自分というものを見つめてみてほしい。答えを知ることを目的とせず、まずは自分自身を振り返ってみてもらうことが、あなたらしさの入口だし、自己存在感の始まりだと思っています。

――最後に読者の方にメッセージをお願いします。

『左ききのエレン』では、主役になれない光一はエレンを羨ましいと思っている一方、エレンはエレンで悩んでいます。それと同じように社会を生きていく中で、みなさんには、それぞれ悩んでいることがあるでしょう。だから、この本を読むときは1ページ目から読むのではなく、今の自分が悩んでいることと近しい言葉を目次から見つけて読むのもおすすめです。そのときの気分で惹かれる言葉の章を会社に向かう途中に読んで、自分にとっての「仕事とは?」「幸せとは?」を見つめるきっかけになっていただけたらなと思います。

取材・文/於ありさ

「左ききのエレン」が教えてくれる「あなたらしさ」

辻 秀一

2022年9月5日発売

1,540円(税込)

四六判/224ページ

ISBN:

978-4-7976-7415-6

『左ききのエレン』の登場人物から学ぶ、葛藤への向き合い方。

つい意識的に周囲と比較してしまう「自己肯定感」より、大事にすべきは「自己存在感」。
『スラムダンク勝利学』でおなじみの著者が、『左ききのエレン』(かっぴー・原作、nifuni・画)で描かれた様々な葛藤を取り上げ、「働くとは?」「幸せとは?」といった人生の大テーマにからめて論じる。
様々な個性が描き分けられた群像劇だからこそ、そこには多くのヒントがある。
現在、生きづらさを感じて悩んでいる人に、「あなたらしく」生きるための働き方と生き方のロールモデルを提示する!

カバーイラストはnifuni氏の描き下ろし!
辻 愛沙子氏(クリエィティブ・ディレクター)推薦!

<目次より抜粋>
・「働く」を通して生きるを考える
・人物を通して生きるを考える
・才能か努力か?
・若さか熟年か?
・本気はダサいのか?
・仕事とは?
・自分の幸せのために生きているか?
・夢は必要なのか? ……etc.

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