――モーニング娘。の歴史を語る上で外せないのは、『うたばん』への出演だと思います。よくMCの石橋貴明さんが、飯田さんのことをイジっていたと思うのですが、当時は正直どう思っていました?
おいしいと思っていました(笑)! 『LOVEマシーン』がヒットする前は、そんなに売れていないっていう自覚があったんです。『ジョンソン』(注:番組内で、石橋さんが飯田さんに付けた野球選手にちなんだあだ名)でスタジオが盛り上がって、タカさん(石橋さん)が私をいじればいじるほど、出演時間が長くなったんですよね。
――確かに、お二人の掛け合いを観るのが楽しみでした。
“もうここで自分をアピールするしかない”と思っていましたね。でもリーダーになってからは、後輩が私のことをいじってきたりしたので少し複雑でしたね(笑)…。そこからは、いじられキャラも世代交代してもいいかなって思ったんです(笑)。
――やはり飯田さんの中でリーダーの役目みたいなのがあったのですね。
グループをまとめるリーダーもやって、お笑い担当までやるとなると、ちょっと違うなって感じてきたんですよ。それで『ケメ子』(注:保田圭の番組内でのあだ名)にバトンタッチしたっていう流れなんですけれども。
――番組内では、巨大な滑り台から落ちないにようする『滑り台クイズ』や、誰がボタンを押したのかわからないアンケートを行う『意識調査』など、アイドルとしては過激なものにはチャレンジされていました。
周りから見たら、タカさん(石橋さん)にイジられることを嫌がっているように見えたかもしれないけれど、可愛がっていただいたし、全部ありがたいなと思っていました。色々な企画も、いまの時代だとあんなに大掛かりなことはできないじゃないですか。当時を振り返ると、『うたばん』では楽しいことをたくさんやらせていただいたという思いが強いですね。
うたばんではジョンソン、めちゃイケではドッキリに。モーニング娘。飯田圭織は00年台初頭バラエティの寵児だった?
集英社オンライン / 2022年9月17日 17時1分
国民的アイドルグループ『モーニング娘。』のオリジナルメンバーであり、7年4カ月という長い年月を、アイドル活動に捧げてきた飯田圭織。現在は、育児を中心としながら活動を続け、インスタグラムでは料理の腕も披露している。彼女がモーニング娘。在籍時の印象深いエピソードと言えば、『うたばん』(TBS)でMCを務める石橋貴明から「ジョンソン」というあだ名をつけられ、いじられキャラとしてブレイクしたことだ。当時の心境はどうだったのだろうか。
名物番組『うたばん』。MCの石橋さんへの思いとは…?
キダムが来ます! 岡女で学生生活を体験
――『めちゃ²イケてるッ!』(以下、めちゃイケ)の『私立岡村女子高等学校。』(以下、岡女)シリーズも、かなり大がかりだったと思います。どっきり企画も多かったのですが、本当に内容を知らされていなかったんですか。
あれも本当に、大掛かりな企画でしたよね。『キダム』(注:2003年~2004年に日本で公演された『シルク・ドゥ・ソレイユ』。モーニング娘。はイメージソングを歌っていた)のCM撮影だって聞かされて、テストを受けたんですよ(『キダムじゃなくて期末が来ました。岡女。も来てるよ来てるね~SP』2003年放送)。
ナインティナインの岡村さんと矢部さんは『ASAYAN』時代から、モーニング娘。を見守ってくださったお兄ちゃん的な存在だったんですよね。デビュー前から私たちのことを知ってくださっていて、気心が知れていると言いますか。特に岡女の頃は本当にグループ活動が多忙な時でした。
撮影スタジオとテレビ収録とライブ会場と、レコーディングしか行き来していないような時期で、番組の企画で期末テストに体育祭や、修学旅行とかも行ったのかな。“キダム、キダム”って言いながら、番組に出たりしていたけれど(笑)、全部、貴重な体験でしたね。
――岡村さんは、『修学旅行で超×4+1いい感じスペシャル!! 』(2001年10月)では、実際にコンサートに乱入されていますね。
あー! 岡村さんがコンサートにいらっしゃいましたね。あれは会場が石川県(注:こまつドーム)だったんですけど、岡村さんもお忙しかったのでヘリコプターでいらしたんですよ。
――すごい時代ですね!
そうなんですよ。コンサートが終わったら、ヘリコプターで帰っていきました。きっと、次の仕事に向かわれたんでしょうね(笑)。
――まさに激動の時代ですね…。グループとしては2001年と2002年に『24時間テレビ』(日本テレビ)のチャリティーパーソナリティーも務められています。
大役を務めさせていただき光栄でした。初めの年は本当に24時間起きているんだ! って驚きましたね。毎年、『24時間テレビ』を見ると、当時のことを思い出します。
――お聞きしていると、時代を駆け抜けたような忙しさですよね。
本当に、すごい経験をしていますよね。でも当時は忙しすぎて、グループが売れているという実感がそれほどなかったんです。今は子育てをしながら、『24時間テレビ』の視聴者になっているけれど、息子がもう小学校3年生なので、ある程度色んなことがわかってきたんですね(苦笑)。“ママって、武道館に立ったことがあるの? ”ってこの前聞かれたんです。“あるよ”って言ったら、“ママ凄い! ”って言われて。改めて自分は凄いことをしてきたんだなと、感じる時はありますね。
実はスマッシング・パンプキンズが好き。ラジオでの自由な発言
――グループを卒業されて17年経っていますが、2011年には『ドリームモーニング娘。』(以下、ドリムス。)を、OGで再結成されています。この時は、久しぶりに集まったメンバーに対して当時とは気持ちが変わっていたのでしょうか。
変わりましたね~。私はマイペースな性格だったのですが、みんな若い時は“自分が一番”みたいな部分があったので、ぶつかることもあったんです。でも再結成してからは、みんなで一つの良いものを作ろうっていう意識に変わっていましたね。そういう気持ちが一緒だったので、再結成はすごく楽しかったですね。
子どもが夏休みに入ってから、子どもが寝た後に2日間ぐらいずっとドリムス。の動画をYouTubeで観ていたんです。また再結成があったら、もちろんやりたいですね。いつでもステージに出られるように体を鍛えていますからね!
――現在、活躍しているアイドルは気になったりされますか。
AAA(トリプル・エー)がすごく好きなんですよ。西島さん(西島隆弘)は私と同じ札幌出身ですし、特に宇野さん(宇野実彩子)がすっごく好きなんです。皆さん1人1人に個性があって、表現の仕方が違う。曲も良くて、もうかれこれ、4、5年ハマっていますね。
――自分がファンとしてアーティストにハマって、気づいたことはありますか?
あります。新しい楽曲のリリースが楽しみだったり(笑)とか、ライブの裏側の初公開にドキドキしたり…。もしかしたら私達のファンの方も、応援するってこんな気持ちだったのかなって、初めて意識しましたね。
――お好きな音楽というと、アイドル時代にされていたラジオ(『飯田圭織・今夜も交信中!』ニッポン放送)で、『スマッシング・パンプキンズ』(注:アメリカのロックバンド)の曲を掛けていたのが印象的でした。
すごい好きだったんですよ。ラジオでは趣味の部分を出せていたかもしれないですね。当時は、周りでは浜崎あゆみさんとかをみんな聞いていたんですよ。私はスマパンとかミスチルとかモンパチ(MONGOL800)を聴いていたので、話が合うメンバーがいませんでした(笑)。
子どもでいられる時間が短かった。リーダーとしての役割とは?
――同郷で同じ年で同期でもある安倍なつみさんは自然に笑顔になれるけれど、自分はニコっとするのが少し苦手というような話を、ラジオでされていたことがあったのですが、グループ活動で悩んでいたことはあったのでしょうか?
最初はほぼ末っ子みたいな感じだったのに、どんどんメンバーが増えていって、まだ私も18歳とか19歳なのに、大人みたいな立ち位置をを求められるようになっちゃったんですよ(笑)。
――確かに、大人っぽいイメージがありましたね。
これから先の立ち位置をどうしようかと考えた時に、フランス映画を観たりして、そこで描かれている“いい女”の研究をし始めました。
――佇まいから、大人の女性を目指したのですね。
グループのリーダーを任せられていたので、子供でいられる時期がもしかしたら短かったのかもしれないですね。でも元々は、つんく♂さんプロデュースの女性ロックボーカリストオーディションに応募していたので、アーティスト寄りの活動がしたかったという思いもあったんです。
――リーダーという役割を振り返ってどう思いますか?
常に周りに目を配るリーダーという役目はやはりプレッシャーも大きかったです。
常にメンバーの入れ替わりのあるグループだったので、“ジョンソン”と言う、いじられキャラのおいしいポジションも下の世代に譲っていかなきゃいけない。
グループ内の上下関係もある程度保ってピリッとした空気も残しておかないといけない。やっぱり自分の中で悩みがなかったとは言えないですね…。まだ19歳と若かったので、最初は無理をしていた部分はあったとは思いますね。でも、同時にグループが新しく進化していくことに喜びややりがいも感じていました。
――では、飯田さんにとってモーニング娘。とはどういう存在でしたか?
人生をかけてやってきたものですかね。飯田圭織という人間が形成された7年半。オーディションの時を入れれば8年近くだと思うので、かけがえのないものですよね。地方から出てきてもし脱退となったら、私は北海道に帰るしかない。だから一生懸命やるしかなかったしメンバー全員が、命がけでやっていました。その熱い想いとそれぞれの強い個性がぶつかりあっているのが当時のモーニング娘。の魅力だったと思いますね。
取材・文/池守りぜね 撮影/小谷信介
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