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「身内がアヤしい宗教にはまった」の悩みにマツコや美輪明宏らが答える

集英社オンライン / 2022年9月15日 12時1分

「アヤしい宗教」や「熱心すぎる信者」の問題が関心を集めている。身内や親友などがアヤしい宗教にはまって、常軌を逸した(ように見える)行動をしたり、高価なものを売りつけようとしたりしてくる……。そうなってしまうと、単に「本人の信仰の自由」だけでは済まされない。瀬戸内寂聴、頼藤和寛、マツコ・デラックス、美輪明宏が忌憚なくアドバイスする。

宗教家・瀬戸内寂聴氏の回答

宗教となれば、この方にお話を伺わないと始まりません。2021年に99歳で惜しまれつつ亡くなった瀬戸内寂聴さん。26歳の娘が「あるキリスト教関係の宗教に洗脳され、わけのわからないことを言い出し」たと悩む母親から、相談が寄せられます。娘さんは仕事もやめ、家を出て、宗教の仲間たちと生活をともにしているとか。この宗教は「人様に高価な物を売りつけたりすることはないようです」とも。瀬戸内さんは、こう答えます。



〈娘さんも誰にもいえない、どうしても満たされない心の空洞をもてあましていたのでしょう。その本人が宗教に入った今、幸せだというなら仕方ないでしょう。(中略)また彼女の入っている宗教は、お金もうけが目的でないだけ、あたまから邪教とはいいきれないような気もします。世の中には、ただお金もうけのためだけに人の弱みにつけこんで、得体の知れない高価な物を半ば脅しのような形で売りつける宗教も少なくありません。(中略)今はしばらくそっとしておいて、静かに祈ってあげましょう。きっと娘さんは帰ってくると私は思います〉
※引用:瀬戸内寂聴著『いのち発見』(講談社、1996年刊)

宗教がもたらしてくれる効能を認めつつ、頭に血が上っているときはまわりが何を言っても無駄だと諭してくれています。「どの宗教が真に正しいかは、まだ誰にもわかりません。やがて時がすべてを証明してくれるでしょう」とも。宗教によって救われ、世間の毀誉褒貶にさらされた瀬戸内さんらしい回答と言えるでしょう。いつか帰ってきてくれたら、相談者の母親としては何より幸せな展開です。ただ、娘さん本人にとってそれが“幸せ”とは限らないのが、宗教や人生や人間の難しいところですね。

もとに戻ることを「あきらめてください」

次も、大学を卒業したばかりの娘が新興宗教にのめり込んでことを悩む親からの相談。ちょっと様子がヘンだと思っていたら、いきなり「やりたいことがあるから」と会社をやめてしまったとか。「どうすればものの素直な子どもになってくれるでしょうか」と悲痛に問いかけます。産経新聞の人生相談コーナーで長年人気を集めていた精神科医・頼藤和寛さんは、宗教はウイルス性の感染症に似ていて治療法がないと言いつつ、こうアドバイス。

〈「もとの素直な子ども」に戻るのはあきらめてください。考えようによっては、これまでは素直な「実家教」の信者だったのが、別の素直な「何々教」の信者に移行しただけなのです。(中略)どうしても引き戻したかったら、教団が与える以上の生きがいや充足感を家庭が提供できるような工夫が必要でしょう。もちろん被害者親の会を作って教団に対抗するのも一法で、これは相手に何か違法性がある場合には有効でしょう。ただし、本人を無理に教団から引き離そうとすれば、余計に発熱するのは恋愛に似ています〉
※初出:産経新聞の連載「家族診ます(のちに「人生応援団」に改題)」(1991年2月~2001年4月)。引用:頼藤和寛著『定本 頼藤和寛の人生応援団』(産経新聞社、2001年刊)

大事な娘を教団に“奪われた”親としては、なかなか厳しい言葉です。「教団が与える以上の生きがいや充足感を家庭が提供」するのは容易ではないでしょう。とはいえ、子どもがアヤしい宗教にはまっている状況は、黙って見過ごしたくはありません。どうにかするためには、これまでの接し方や、なぜはまったのかを考えることもたしかに大切ですね。

常識で悩んでも仕方が無い

続いては、ある宗教の信者である義母のことで悩む新婚の主婦からの相談。押しつけてくる“教え”を拒否したら「私たち夫婦を絶縁」してきたそうです。夫はその宗教に入信はしていたものの、中学生ぐらいから信仰心はなく「絶縁されてよかったとすがすがしい様子」だとか。自分が理由で夫が両親と絶縁したように思えてモヤモヤしている相談者に、マツコ・デラックスさんは「絶縁されてよかったんじゃないかしら」と言います。

〈お義母さんと宗教の関係は、信仰心が厚いというレベルをはるかに超えていて、もはや狂信的といっても過言ではないレベルだと思うの。(中略)結局、宗教がないとお義母さんが生きづらいのであれば、その宗教に理解を示さないあなた方の存在がないことで、むしろお義母さんは幸福を感じている部分もあるでしょうね。旦那さんはとても冷静だし、アナタともうまくいっているのよね? だったら、お義母さんからの歩み寄りがあるのならまだしも、アナタ方のほうから謝ったり、気に病んだりする必要はまったくないわ〉
※初出:雑誌「本当にあった主婦の体験」(ぶんか社)の連載「マツコ・デラックスの愛の人生相談劇場」(2006年8月号~2009年12月号)など。引用:マツコ・デラックス著『あまから人生相談』(ぶんか社、2011年刊)

さらに、マツコさんは「お義母さんを介在させないアナタ方夫婦の幸せ」を追求することを勧めています。「その先に、お義母さんとの関係を修復するできごとがあるのかもしれない、そのぐらいの楽な気持ちになってみては」とも。常識が通じない相手に対して、常識をベースに「嫁としてこれでいいのかな」と悩んでも仕方ありません。どうしようもないのに「どうにかしなければ」と思い続けるのは、厄介な「執着」という一面もあります。

「救い」を求めた人を責めるだけでいいのか

兄弟以上のつきあいをしてきた親友がある宗教に入信し、しつこく勧誘にあって困っているという30歳の男性。気が弱くて意志薄弱な自分は、このままだとのめり込むことになるのではと不安を抱いています。断わると親友とのつきあいが切れてしまうことも心配だとか。ウジウジした相談ですが、美輪明宏さんがバッサリ一刀両断にします。

〈断われないのは友達のせいではなく、あなた自身のせいでしょ。簡単なことよ。断われないなら入って一緒に地獄に堕ちればいいし、地獄に堕ちるのがイヤなら、はっきり断わればいいのよ。自分に甘えちゃダメ。(中略)それにね、彼は、あなたのそういう性格を見抜いて勧誘しているわけでしょ。勧誘すれば、自分の成績があがるんだから、彼はあなたのためだと思っていなければ、親友だとも思っていないということよ。(中略)あなたは宗教に誘われているのではなくて、マルチ商法に勧誘されているだけのことなのよ。間違わないで〉
※引用:美輪明宏著『美輪明宏の悩み相談室 生きるって簡単 苦悩の娑婆を生き抜く法華経の力』(佼成出版社、1987年刊)

相談者の文面からは「気が弱い自分」を肯定し、今のままでいたいと思っている節も伺えます。「親友」にいい顔をしたいという自己保身が、話をややこしくしているとも言えるでしょう。もちろん美輪さんは、信仰を否定しているわけではありません。「信仰と宗教は別ものよ。宗教は企業よ。信仰というのは、自分の心の鍛錬」と言いつつ、インチキな悪徳企業の悪徳商法に騙される愚かさに警鐘をならしています。

どの回答にも「たちまち“改心”させる方法」は書いてありません。何らかの理由があって本人が「信じること」を選んでいる以上、簡単にはいかないということでしょうか。問題だらけに見える宗教も、それぞれ信じることで救われている人たちがいます。責められるべきは救いを求めた人たちではありません。切実でピュアな気持ちを利用して「悪徳商法」に走らせている側です。身内がはまった場合も、気持ち悪さや価値観の違いを「善悪」や「正誤」の問題とごっちゃにすると、ますます話が通じなくなってしまうでしょう。

文/石原壮一郎 イラスト・マンガ/ザビエル山田

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