1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

「地下生活6日にして、わたしたちはゴキブリになってしまった。」ウクライナ戦禍、鉛筆1本で描かれた命の絵日記

集英社オンライン / 2022年9月15日 12時0分

“それでも私が日本に来た理由” ウクライナ人留学生の決意〉から続く

ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始した直後からの避難生活を描いた『戦争日記 : 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』(河出書房新社)。“戦争”によって刻一刻と破壊されていく日常、著者の文章と絵の一部抜粋・再構成してお届けする。

著者の言葉

戦争前夜のことは、はっきりと覚えている。
子どもたちが寝入ったので、夫とわたしはようやく2人でゆっくりと語り合っていた。夫はハンバーガーを作りお茶をいれてくれた。

遅い夕食をとりながら、わたしたちは未来について話した。新しく買ったマンションをどんなふうにリフォームしようかとか、楽しく習い事に通っている子どもたちのことなど、ささやかな日々のことを。



わたしたちにはたくさんの計画と夢があった。そうしてわたしたちは、おなかも心も満たされた状態で眠りについた。

そして明け方5時、わたしは爆音で目が覚めた。
最初は花火の音かと思ったのだが、実際は四方から爆撃を受けていた。何が起きているのかもはっきりとは分からないまま、わたしは無我夢中でパスポートと荷物をまとめた。

わたしがこの日記を書くのは「戦争反対!」と叫ぶためである。戦争に勝者はいない。
そこにあるのは血、破壊、そしてわたしたちひとりひとりの心の中に出来た大きな穴だけだ。
わたしは遠い道のりを歩き、その道中でどこまでも善良でわたしに手を差し伸べようとしてくれる人たちばかりに出会った。わたしは民族で人を分けない。
人を定義するのは、民族ではなく行動だからだ。
多くのロシア人が戦争に反対しているということも知っている。今は、はっきりと分かる。戦争と人間が別物であるということが。戦争は人間など気にしない。
戦争はわたしを思い切り揺さぶった。
今わたしは国籍や民族を問わず、わたしを助けてくれる人たちと共にいる。
彼らには「力」がある。
戦争は終わり、そういう力を持った人たちは生き残っていくだろう。

2022年4月
オリガ・グレベンニク

2022年2月24日 #わたしは地下室から見ている
明け方5時30分、爆発音で目が覚めた。

神様、わたしたちをお守りください。


戦争が始まった日、
うちの子どもたちの腕にも名前と生年月日、そしてわたしの電話番号を書いた。

万が一、死んでしまっても身元が分かるように。


2022年2月25日
爆発音が聞こえたら、すぐさま地下室に走る。

私は絵を描くことにした。これはドキュメンタリー日記になるだろう。もう怖くない。受け入れるのだ。


地下生活6日にして、わたしたちはごゴキブリになってしまった。

音も一切出さない。あらゆる隙間を把握して、何かあればすぐさまそこに逃げ込む。

戦争日記 : 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々

オリガ・グレベンニク(Olga Grebennik)
「地下生活6日にして、わたしたちはごゴキブリになってしまった。」ウクライナ戦禍、鉛筆1本で描かれた命の絵日記_5
2022/9/2
1,595円
136ページ
ISBN:978-4309208633
【衝撃の記録、緊急出版!】
ウクライナの絵本作家が侵攻直後から鉛筆1本で描いた、
戦禍のドキュメンタリー。

ロシアがウクライナに軍事侵攻した2月24日。
著者はその日からマンションの地下室での避難生活が始まり、
そしてハリコフ(ハルキウ)から西部の街リヴォフ(リヴィウ)を経て、
ブルガリアまで逃れていく過程を絵と文章で綴った。

韓国の出版社が書籍化すると世界で大きな反響があり、
日本でもNHK「おはよう日本」(6月6日放送)で紹介された。
現在、世界数カ国で出版が決定している。

戦争によって破壊された日常、別れなければならない家族、恐怖との戦い……
心に迫る絵と切実な文章で綴られた、今こそ読まれるべき一冊。
ロシア語監修/解説:奈倉有里

本書の売上1冊につき100円をウクライナ赤十字社に寄付します。

(本書より) 「子どもたちの腕に名前と生年月日、そしてわたしの電話番号を書いた。 万が一、死んでしまっても身元が分かるように。」

「ねぇ、どう思う? 戦争中でも、わたしのたんどーび(誕生日)ってあるのかな?」(娘の言葉より)

「私の生きてきた35年をすべて捨てるのに、猶予はたった10分しか与えられなかった。 母親を、家を置いて。わが子たちのために」

「リヴォフ(リビウ)、別れの街。夫と別れなければならない地点。夫は国境を越えることができなかった。 男性たちは国外に出ることはできない」

【黒柳徹子さん推薦!】
「鉛筆一本もって地下室に避難し、戦争と二人の子どものことを描き続けるウクライナの絵本作家。走り書きのような絵と文章は、差し迫った彼女の心が表れている。今までなかった戦争日記!」

【著者オリガさんの言葉】
わたしがこの日記を書くのは「戦争反対!」と叫ぶためである。
戦争に勝者はいない。そこにあるのは血、破壊、
そしてわたしたちひとりひとりの心の中に出来た大きな穴だけだ。
わたしは民族で人を分けない。人を定義するのは、民族ではなく行動だからだ。
多くのロシア人が戦争に反対しているということも知っている。
今わたしは国籍や民族を問わず、わたしを助けてくれる人たちと共にいる。
彼らには「力」がある。
戦争は終わり、そういう力を持った人たちは今は、はっきりと分かる。戦争と人間が別物であるということが。
戦争は人間など気にしない。戦争はわたしを思いっきり揺さぶった。

侵略されるヘルソン州出身・たったひとりで闘いにきたウクライナ美女格闘家の信念〉へ続く

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください