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「日本の動物福祉を世界トップレベルに」を目指す、アニマル・ドネーションのAWGsの取り組み

集英社オンライン / 2022年9月20日 10時31分

日本初の動物専門寄付サイトを運営する「公益社団法人アニマル・ドネーション」がこの7月で設立13年を迎えた。まだまだ一般への認知が低い“動物福祉”について、これまでの活動を通しての成果や課題点を代表の西平衣里氏とAWGs担当の望月舞氏にうかがった。

愛護センターにいた状態のいいキジトラ猫が教えてくれたこと

アニマル・ドネーション(以下アニドネ)の誕生のきっかけは、代表の西平氏が自身の家族として迎えたトイプードルと愛護センターで出会ったキジトラ猫だったそう。

「会社員時代は忙しくて、ペットを飼いたくても飼えなくて…。退職後、ヘアサロンの経営を始めて少し時間に余裕ができたので、トイプードルを飼い始めました。


子犬の頃からお腹をよく壊す子だったので、いろいろ調べ始めていた時にワークショップで動物愛護センターに行くことに。そこにきれいなキジトラ猫がいて、とても大切に育てられていたことがわかる毛並みがつやつやの子でした」

西平氏にはその猫が、健康面でも精神面でも問題がないように思えて、なぜ愛護センターにいるのか、職員の人に聞くと「飼い主さんが高齢でしかも一人で入院することになり、飼い続けることができなくなったため連れて来られた」という事情だった。

「この子の今後が気になり尋ねると『成猫なので引き取り手が少なく、もしかしたら処分になるかもしれません』と言われ、愕然としました。
当時、社会問題となっていた『独居老人』とも重なり、ペットだけでなく人間もつらい思いをしている場合もあることがわかり、人間もペットも両方救える仕組みを作りたいと思ったのがきっかけです」

動物のために何かしたい人とがんばっている団体を繋げる

その後1年くらいかけて業界関係者に会ったり、勉強会に参加したりしてどのような仕組みにすべきか思案を続けた。
保護活動をしている団体にも何度か足を運んでいると、多くの団体では活動に必要な物資なども自身たちで持ち出しているケースが少なくないことがわかった。

「特に資金面は圧倒的に不足していて、保護に行ってもお金があればもっと救えるのに、現場で命の選別をするのはつらいというお話をよくお聞きし、胸がつぶれる思いでした」

西平氏は前職が情報誌のクリエイティブ担当だったので、初めは動物保護に関連する団体の情報プラットフォームを作ろうと考えていたが、保護活動はできないけれど、自分のように動物のために何かしたい、寄付したいという人と、資金に困っている団体を結び付けることで人もペットも救いたいという想いに変化したそう。

「そういったことをやりたいと言うと、『システム作りましょうか』という方や『一緒に活動しますよ』という方が名乗り出てくれて、4人で立ち上げたのが動物専門の寄付サイト『アニマル・ドネーション』です。
その当時は一般的に寄付といえば郵便振り込みが多かったと思いますが、私自身よく間違えることが多くて…。もっと誰でも簡単にできないかと思い、まだ少なかったオンラインで寄付できる仕組みを導入することにしたんです」

愛犬のために調べていたら、サイト立ち上げに結び付いた

多くの方や企業からの支援に支えられている

2022年8月末現在、寄付金額は累計で3億円に達し、内訳は個人と企業が同じくらいの割合で推移している。スタートした頃は個人の割合が多いと想定していたが、企業からの問い合わせが予想以上に多かったことに驚いたそう。
企業の商品を購入すると一部アニドネに寄付される仕組みや、動物関連映画とのコラボ、イベントに募金箱を置くなど、企業の寄付の企画は幅広い。

「企業側から見ると、中間支援組織であるアニドネが認定した適切な団体への寄付が行われるということが安心なようで好評いただいています。また、2015年に公益社団法人を取得したことも大きかったですね。寄付いただいた個人の方も寄付金の優遇税制対象となります。寄付金額の40〜50%は還付され戻ってきますので、寄付をしていただきやすくなったと思います。
そしてアニドネの組織自体、一緒に活動するスタッフはほとんどがボランティア。このように寄付以外の面でも支えられています」

「どんなカタチであれ、動物のために自身のチカラを活かすこともドネーションだと考えています」と西平氏

認定団体には寄付だけなく、サポートも行っている

寄付先の団体の認定するためにはかなり時間と労力をかけている。年に1度、動物福祉をがんばっている団体にエントリーを募り、アニドネのリサーチャーボランティアが現地に出向き実際の活動状況を確認し、その後に外部の第三者委員なども交えて活動内容から経営状態までチェックし丁寧に認定の判断を行っていく。
認定期間は2年で更新時には再審査するようにして、活動がきちんと継続されているかもチェックをする。

「認定させていただく基準で大切な項目のひとつが、私たちが目指す『日本の動物福祉を共に世界トップレベルに』を一緒にがんばっていただけるかどうかです。
また、さまざまな団体の方と日々接しているので、それぞれが抱える問題点について、ある団体のいい取り組みを他の団体に紹介したり、多頭飼育されていた犬猫たちの保護から新たな飼い主への譲渡までをスムースにできるようなノウハウを提供したりするなど、寄付だけでなく、そういった支援もできるのがアニドネの強みだと思っています」

認定団体の一つ「日本聴導犬推進協会」では、寄付金は候補犬の医療費に使われている

さらに緊急事態への寄付の立ち上げも行っている。例えば、ウクライナの動物支援ではいち早く動くことに。

「3月あたりからアニドネの支援者の皆さんや内部からも『自分たちにも何かできないか』という声をいただき、急遽支援チームを作りました。
ただし支援先は戦火に見舞われているので、情報を集めるのに苦労しました。人脈を頼りに2団体を選定し、寄付のスピードなどを考慮してYahoo!ネット募金に協力いただき支援基金を立ち上げました」

動物福祉の問題を一つ一つ解決していきたい

アニドネは昨年の8月に動物福祉のさまざまな問題点を提起した「AWGs (Animal Welfare Goals)」のサイトをオープンしている。

犬や猫の目線に立ってスタートしたAWGs

サイトでは、動物福祉の問題点について解決したい13のゴールを掲げている。

「動物福祉においては、日本の法整備や一般の方の意識が世界に比べて遅れていると感じています。
ただ、“動物福祉”と言われてもどんなことがポイントなのか、犬や猫を飼っていてもわからない人は多いと思います。そこで少しでも知っていただくため、わかりやすい表現を使いながら問題点についてしっかりレポートしていくように心掛けています。
例えば『いつもあなたと一緒に』というゴールがあるのですが、その中の活動として『繋ぎっぱなしの犬を救いたい、外飼いの規制へ』という具体的な項目があります。
犬を繋ぎっぱなしで散歩に行かないなどの行為が虐待になり、彼らに肉体面でも精神面でも苦痛を与えていることを記事にしながら、署名等の直接的なアクションに繋げていきます。このように、13のゴールについて、それぞれにテーマを設定しレポートやアクションの目標を立てています。
また、AWGsを応援するボタンを押すと、公式キャラクターが成長したり、気軽にSNSでシェアできたりなど、楽しみながら動物福祉のことを考えるきっかけになるサイト設計になっています」と担当の望月氏。

これらのゴールに向けて進むことで日本の動物福祉を世界トップクラスにすることを目指す

現在、約25の企業がAWGsの企業アンバサダーとして参画しているが、一般への認知はまだまだ足りないと感じている。
最近は、団体や企業からAWGsのテーマで講演してほしいという依頼も増えてきているが、並行して、今ペットを飼っている人の意識を変えてもらえるように、問題点を知ってもらい、動物福祉に興味をもってもらえる活動を続けていく。

「この13のゴールをベースに動物福祉の教科書的なものも作ることができると思いますし、いつかは子どもたちが動物福祉への理解を深められるような支援活動ができたらと考えています」と西平氏。

動物福祉の向上を目指す仲間をどんどん増やしていきたい

現在アニドネでは寄付対象として33の団体を認定しているが、今後は各都道府県に少なくとも1つずつは支援先ができるようにしていきたいとのこと。アニドネと共に同じ目線で動物福祉に取り組んでいく団体を増やしていくのが目標だ。

「そのために皆様からの寄付は大切なので、思い立ったら気軽に寄付ができる企画や、高齢化社会で注目が高まるであろう遺贈などのご案内にも力を入れていきたいです。

私どもが目指す『日本の動物福祉を共に世界トップレベルに』が達成されるには、法律の整備や業界内外の協力、そして何より一般の方の理解が必要です。AWGsの啓蒙活動や講演などを通じて、皆様に認知していただける機会を今後もどんどん増やしていきたいと思っています」


取材・文/百田なつき 写真提供/アニマル・ドネーション

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