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「ダメ出し」からの卒業。「ホメ出し」で軽やかに人間関係を築くコツ

集英社オンライン / 2022年9月16日 11時1分

SNSなどのメディアプラットフォームを通じて、誰もが気軽に自分の意見を発信できる現代。その反面、人やものごとへの否定的・批判的な意見、いわゆる「ダメ出し」も簡単にできてしまう時代でもある。コピーライターの澤田智洋さんは、ダメ出しではなく、相手の魅力やすばらしいところを発見して伝える「ホメ出し」を提案。澤田さんに、人をホメるときのコツや、ホメ出しがもたらすものについてうかがった。

ホメ言葉が「資産」になる

『わたしの言葉から世界はよくなる コピーライター式ホメ出しの技術』(宣伝会議)の著者であり、コピーライターとして、企業や自治体、映画のコピーなどを数多く手掛けてきた澤田さん。もともとは人をホメることが得意だったわけではなかったという。



「コピーライターは『世界を肯定的な目で見て、最適な言葉で表現する』ことが求められる仕事。働き始めるまで『ホメること』とはむしろ縁遠かった僕ですが、仕事を通じてそれが習慣づけられた結果、人と接するときにも、自然と相手のいいところを見つけてホメることができるようになっていきました。

誰かに言われたホメ言葉を、ずっと覚えていることってありますよね。いいホメ言葉を贈ることは、相手にとっての『言葉の資産』になり得る。生きるうえでの喜びや心の支えにもなるような、いい言葉を相手にプレゼントすること。それが、ホメ出しの目的です。

ダメ出しの真逆である『ホメ出し』が根づくことで、社会をいい空気に変えていくことができると考えています」

『わたしの言葉から世界はよくなる コピーライター式 ホメ出しの技術』(宣伝会議)

とはいえ、日常的に人をホメることに慣れていない人も多いかもしれない。そういった人は、何から始めればいいのだろうか。


「人と話すときに、『惚れレンズ』をつけて相手と接してみることをおすすめしています。相手に対して意図的に『惚れる』意識を持つことで、『この人には長所がたくさんある』という前提で相手と接するようになるので、おのずとホメポイントをたくさん見つけられるようになっていきます」

いいところを「報告する」というスタンス

相手をホメるときに澤田さんが基準にしているひとつが、「自分の心が動いたかどうか」だという。

「僕の提案するホメ出しは、『こうホメておけば自分が得をするから』『相手によく思われたいから』という意図でホメたりすることとは違います。『あなたには、こういうすばらしい一面がありました』『こんないい一面を見つけたので、伝えますね』と相手に報告することが、ホメ出しの基本スタンスです。

一対一で誰かとコミュニケーションを取るときは『いいところを絶対に見逃さないぞ』という姿勢で相手と全身全霊で向き合うようにすると、必ずどこかで『あ、この人のここが素敵だな』と心が動く瞬間があります。それは日常的に接する人であっても、初対面の人であっても同じです」

職場など、複数の人とコミュニケーションを取る場でのホメ出しにもコツがあるという。

「会議や打ち合わせのような場では、仕事は仕事として進行しつつ、『今日はBさんのいいところを見つけるぞ』と一人だけに意識的にロックオンしておくことで、その人のホメ要素を見つけやすくなります。

また、『森』ではなく『木』の部分を見てホメるという着眼点もひとつあります。会社の後輩に対して『いつも仕事が丁寧だね』とホメるのも素晴らしいのですが、その『仕事が丁寧』をちょっと分解してみる。

たとえば『抜け漏れがないように、何度も資料をチェックしてくれているよね』といったホメ方のほうがより具体性があり、相手の印象に残りやすくなります」

現在、言葉と福祉とスポーツを専門に活動する澤田さん。東京2020パラリンピックでは閉会式のコンセプト/企画を担当した

相手に抱いた印象は「捨ててみる」

好感を持っている人の良いところは比較的見つけやすく、ホメやすいかもしれない。一方で、「苦手な人」をホメるのはそう簡単ではないと感じる人も多いのではないだろうか。

澤田さんは、「相手をカテゴライズしないこと」で、苦手だと感じていた相手の印象も変わってくることがよくあると言う。

「人は多面体であり、表に見えているのはその人のほんの一部。僕たちはどうしても『この人はこういう人』とカテゴライズしがちですが、それは誰もが持つ多面的な側面を切り捨ててわかりやすい一面にだけフォーカスし、人にラベルを貼る行為ともいえます。

『苦手』『不快』と感じる部分があったとしても、それがその人のすべてではないということ。複雑なバックグラウンドや思考パターン、置かれている環境などのさまざまな要因が影響して、言動や行動に現れてしまっていることも大いにあると理解しておくと、相手を決めつけることは減るのではないでしょうか」

親しい人や付き合いが長い人に対しても、その人にこれまで抱いてきた印象を捨てて「出会い直す」意識を持つことで、また新たな一面を発見できるという。

「過去に抱いた印象を捨てることで、『出会い直し』ができる」と澤田さん

「世の中の評価基準」だけでホメない

「資本主義や競争社会における価値観だけでホメないことも大事」だと澤田さんは言う。たとえば子どもを持つ親ならば、「テストでいい点を取った」「スポーツで活躍した」などの目に見えやすい結果や評価軸で、我が子をホメることはやはりあるだろう。

もちろん、本人が努力して成果を上げたことを認めてホメること自体はいいことだ。しかし、その基準ばかりではかってしまうと、本当の意味で相手の魅力を掘り出していくことはできないと澤田さんは考える。

「たとえば、僕の息子の特技のひとつには『高速で何十回も回る』というものがあって、しょっちゅう、家のなかでフィギュアスケーターのようにクルクル回転しています。

別に、クルクル高速で回転する能力自体が、社会で役立つわけではないですよね。けれど、回っているときの彼は本当に楽しそうで目がキラキラしていて、すごく『この世界と調和している感じ』がある。なので、その瞬間を見たら逃さずホメるようにしています。

親であれば、自分の子どもを誰かと比べてしまうこともときにはあるかもしれません。けれど、目の前の我が子がイキイキ・キラキラしているタイミングがあったら見逃さずホメる、否定しない。

職場でも同じで、『仕事が早い・効率的』などの評価軸で相手をホメがちかもしれませんが、たとえば、仕事とは無関係の『この人と話していると雑談が尽きなくて楽しい』というホメ要素も、相手にはあったりする。

『人の魅力は資本主義の枠だけには収められない』ことを意識し、『世の中の役に立つ・社会で評価に値する能力かどうか』という枠の外に出て相手を見ることも、ホメるときにとても大切だと思っています」

「現代社会でよしとされる価値観や評価基準は、たまたま今の時代に重要視されているだけで、曖昧で流動的なもの」だと澤田さんは見ている。一般的なものさしだけに振り回されない姿勢を持っておきたい。

ホメ出しは筋トレのようなもの

澤田さんは、ホメ出しは「筋トレのようなもの」だと考えている。

「筋トレも、最初はしんどいけれど続けていくと慣れてくるし、着実に筋肉もついていきますよね。ホメ出しも同じで、最初は自分のなかで違和感があるかもしれませんが、習慣化されていくことで、やがて『人のいいところを発見してホメる』が、自然なことになっていきます。

普通に生活していると、人はどうしても相手への印象やキャラクターを決めつけがちだし、相手のわずかな一面だけを見て判断し、ダメ出しをしたりする。でも、そのほうが脳への負荷や刺激が少ないし、いちいち多くの情報を処理しなくていいので、脳は疲れなくて済む。ある意味、当たり前のことともいえます。

一方で、惚れレンズをつけて人と話したり、相手へのこれまでの印象を捨てて接したりするホメ出しの作業は普通はやらないことですから、脳にとっては大変。いわば『脳にあらがう』行為です。

でも、人間はおもしろいもので『ホメ出しをする』という意識で毎日過ごしていると、やがてそれが普通のこととしてできるようになっていくんです。一日5分でも10分でも、短時間からでいいので、習慣化していくことがポイントです。何より、ホメ出しはたくさんの発見や気づきにつながるので、とても楽しいですよ」

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