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猿やモルモットが日常食。早稲田大学探検部員による衝撃のペルー珍食紀行

集英社オンライン / 2022年9月16日 16時1分

旅の醍醐味といえば、現地の食を楽しむことだろう。だが、食材や見た目などの点で私たちの常識を超える「珍食」に出会ったとき、あなたは口に運ぶことはできるだろうか。「胃袋をもって人や文化を知ること」がモットーの早稲田大学探検部員が、南米・ペルーで出会った珍食の味をリポートする。 ※記事中にはモルモットや猿を調理した画像があります。苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

胃袋を持って現地の生活を知る

大学生活のほとんどを、旅や探検をして過ごしてきた。大学探検部で遠征を繰り返した結果、現在大学6年生となった。

そんな私が旅や探検で大切にしているのは、現地の人がどんなものを食べていて、どのような生活を送っているかを自分の胃袋をもって知ることだ。どんな国の人でも、自分の国の料理を外国人に美味しいと言ってもらうのは嬉しいもの。郷に入れば郷に従えというように、文化や常識が異なる国では現地の人と同じものを食べ、同じ言葉を覚え、一緒に生活をすることが信頼関係を築くコツだとも思う。



観光客向けのメシ屋を無視して10ヶ国以上のローカルメシを食べ続けてきた中で、特に印象深いのが、2022年4月に約1ヶ月滞在した南米・ペルーの食事だ。日本の真裏に位置するペルーでは、思わず心の底からウゲー!と言ってしまった食べ物に出会った。アンデスの高地やアマゾンではどのような「珍食」があるのか。案内していこう。

日本ではペットの「モルモット」を食う in クスコ

ボリビアから陸路でペルーに入国し、そのままクスコの街に着いた。クスコはアンデス山脈の標高約3400メートルに存在し、かつてはインカ帝国の首都だった。世界遺産のマチュピチュはクスコから車や電車を使って行くことができる。

メルカドと呼ばれる市場や、インカ帝国が誇る石積み建築に見惚れて宿に向かって歩いていたときだった。行商人のマーケットマミーが何か奇妙なものを売っている。こ、これは? 衝撃的なものが視界に飛び込んできて、思わず足を止めた。

バケツの中に山積みになっている茶色い物体について、「オラ、ケスエスタ?(こんにちは、これはなんだい?)」と聞くと、「クイ」とおばちゃんは答えた。一見してネズミか何かだろうと思ったクイとは、実は日本ではもっぱら動物園で飼育されたり、ペットとして愛玩されているモルモットだった。

クスコの路上で、クイ(モルモット)を売る女性

モルモットを家畜化しているのは、ここペルーやボリビアのアンデス山脈一帯だけ。クイの中にワカタイという南米料理には欠かせないハーブを詰めて焼くものや、体を開いて焼いたクイにとうもろこしやジャガイモをワンプレートにしたクイフリートと呼ばれる食べ方がある。

モルモットはアンデスでは一般的に食べられているのだ。ペルーに到着したばかりで最低限の現地通貨しか持っていなかったが、25ソル(約850円)で購入して宿にチェックインした。ゲストハウスに持ち帰ると、欧米人も目を丸くして「アンビリーバボウ」と言っていた。

ハーブを詰めて焼いたクイ

鶏肉に近いが何かが違う…

ナイフで切ると赤みがかった肉が出てきた。口に入れて噛むとレバーのように崩れ、ハーブがほのかに口中で香る。味は鶏肉に近いけど何かが違う。この何かがネズミの味なんじゃないかと感じられた。

皮はオリーブオイルが塗られて焼かれているので美味しかった。一見パリパリしていそうだが、皮のゼラチン質でブヨブヨしているのがいい。欧米人に見守られながらクイを黙々と食べていたとき、あることを思い出した。

それは、大学5年生のとき、片思いをしていた女の子と吉祥寺の井の頭自然文化園のモルモットふれあいコーナーに行ったことだ。その子には振られてしまったが、モルモットが大好きだった彼女がこれを見たら即失神してしまうんじゃないかと思った。吉祥寺での感傷とここでしか食べることのできない美味しさを同時に噛み締めた。

「人間に似ているな…」サルを食う in アマゾン

マヌー国立公園は、クスコから東に乗合バスで約7時間、アンデス山脈を下って到着する。ここはアマゾン盆地なのでバスが下るにつれ熱帯に入り、気温や湿度、植生が変わっていった。

実は探検部に入る前からアマゾンには行ってみたいと漠然と考えていた。なぜならアマゾンは豊かさの象徴そのものだと思っていたからだ。照りつける太陽や大量に降り注ぐ雨の中で多種多様な動植物が存在する。そのようなダイナミズム満点のアマゾンで、先住民はどのように暮らしているかを知りたいと考えていた。

そこで、マヌー国立公園の玄関口にあるピルコパタ村で交渉し、近くにあるワカリヤ村で1週間、先住民たちと生活をさせてもらうことができた。ワカリヤ村は観光客の受け入れを積極的にしていた村らしいが、コロナ禍で現金収入が極端に減ってしまったそうだ。そこで村には1日23ソル(約800円)を支払い、ご飯や寝る場所を提供してもらった。

1週間滞在したワカリヤ村の住民や家

ワカリヤ村に到着すると、縄文時代のような暮らしだと思った。屋根はかつての日本の田舎やアジアのジャングルでも見られたような茅葺きで、高床の家もあった。思えばアメリカのインディアンやアマゾン先住民はもともとモンゴル系の人たちが定住し始めた土地だ。日本の真裏にいるのに、先住民の顔を見ていると確かにアジア系の顔つきをしていて親近感が湧いた。

そして、猿は唐突に私の前に現れた。村の子どもたちと遊んでいたとき、「おーい、獲ったぞ!」と呼ばれ、何をだ? と思ったらサルが大鍋に放り込まれていた。村で弓の名手と知られるヘルマン・セバスチャンが仕留めていた。

調理場のゴミ箱には毛がたくさん捨ててあり、猿を焼いて毛をむしってから、鍋に入れたのだと理解できた。洗った猿は鍋でなんと6時間煮込んでからやっと食べられるという。手や顔をまじまじ見ると人間によく似ているなとか、なんだか気持ち悪いなと正直思ったが、探検部員として心を空にして猿を食べた。

鍋に入れられた猿

勇気を出して猿の腕を食べる筆者

肉は赤身でヘルシーそう

片腕をもいで食べさせてもらった。脊髄や脳味噌は感染症につながるプリオンが怖くてやめた。腕は繊維質で、まず噛みついてから首を横にし動かして裂くように食べた。味は鶏肉にそっくり。肉は赤身がメインで、ヘルシーそうだ。ただ皮に毛がついていて、口の中で意識すると毛の感触がする。根性を出し気にしないようにした。

振り返れば、ペルーは実に面白い国だった。太平洋沿いの乾燥した砂漠のエリア、標高が富士山の頂上(3776メートル)とさほど変わらない場所に都市のあるアンデス、そして熱帯雨林のアマゾンという3つの気候がひとつの国に存在する。

民族も、先住民であるインカ帝国を主に構成していたケチュアやアマゾンの人々からアフリカ系、ヨーロッパ系などさまざまだ。気候や民族の豊かさこそが珍食を生み出している背景にあるのではないだろうか。調理されたモルモットや猿は、日本に暮らす私たちにとって目を背けたくなるかもしれないが、現地では立派な食文化なのだ。

取材・文・撮影/大下滉平

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