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いつもの写真を特別にするコツは? 豊かな表情を引き出す「あかるい写真館」に聞いた

集英社オンライン / 2022年9月19日 16時1分

雑誌や広告、アートなどで活躍中のフォトグラファーが記念写真を撮影する東京都・神田錦町の「あかるい写真館」。ディレクションに長けたプロによる撮影で、記念写真も“あかるい”表情に。特別な一枚を撮影するコツを教えてもらった。家族の記念日や友人とのお出かけ時の撮影のご参考に。

「あかるい写真館」で撮影された結婚1周年の記念写真。コロナ禍で、この日初めて両家がそろったという

女の子の七五三。記念に兄と一緒に撮影した

いつもの写真を特別にする方法

雑誌や広告、CD・DVDジャケット、アイドルのライブパンフレット、ドラマのポスターなどの幅広い撮影・ディレクションを手がける写真事務所「ゆかい」が運営する、東京・神田錦町の「あかるい写真館」。フォトグラファー5人が所属し、家族や友人同士の記念写真を軸に写真館サービスを行っている。



「あかるい写真館」の写真の特徴は、ディレクションに長けたフォトグラファーによって引き出される依頼者たちの個性豊かな表情。単なる記念写真も特別な一枚にしてくれる。

初対面で短時間にいい表情を引き出すのはプロならではだが、そのテクニックを少し教えてもらえればいつもの写真が記憶に残る特別な一枚になるかもしれない! 「あかるい写真館」を訪ね、「ゆかい」代表で写真家の池田晶紀さんに話を聞いた。

* * *

「ゆかい」代表の池田晶紀さん(左)と、所属する写真家の池ノ谷侑花さん

とりあえず好きなものを持ってみる

――池田さんはお父さまが50年にわたって写真館を経営されていたそうですね。

池田晶紀(以下、同) そうです。昔ながらの写真館は決まった背景紙とライティング(照明)で型にハメていきますが、もっと寄り添った写真を撮りたいなと思って始めたのが「あかるい写真館」です。

広告などのデザインをする写真は、テーマに沿ってオリジナルのディレクションをして撮影します。「あかるい写真館」でもそれと同じように、お客さんの目的に寄り添ったディレクションを体験してもらいたいなと考えたんです。

――対象は、面識のない一般のお客さんなわけですよね。具体的にはどのようにディレクションするのですか?

「どんな集まり?」「写真を撮る理由は?」と聞いてみると、案外、何らかのテーマはあるものなんですね。けっこう長文のメールで答えてくださる方も多い。そうやってテーマを作ってみることと、好きなものを持ってきてもらうのが出発点です。

――好きなものを?

好きなものとそれを好きな人の間には関係性があって、「行為」が生まれるから自然な写真になるんですね。好きなおもちゃなら遊び出してもらえばいいし、楽器なら構えてもらったりします。

それに、特に子どもは好きなものがどんどん変わっていくでしょう。写真は時間を切り取るものですから、ぜひ残してください。こんなこともあったなぁって未来の自分を笑わせたり、楽しませたりするつもりで撮るのがいいですね。

好きなものをもてば自然なポーズや表情が生まれる

自然な演技は難しいので、あえて不自然を演出する

――「未来の自分を笑わせる」というのは大事なキーワードな気がしますね。

被写体がその気になるのは大事です。撮影者と被写体の関係性の中で、撮る時間そのものを楽しんで、たくさんシャッターを切る。せっかくデジタルの時代ですから、何百枚でも撮ってみましょう!

――テーマも決めるんですね。

テーマがあれば、写真に写るのが苦手な人も「何をすればいいか」がわかって撮られやすくなります。
何の記念なのか、無理にでも決めてみるとかね。なんで今写真を撮るのかちょっと考えてみると出てきますよ。

――なるほど。写真に写るのが苦手、写真が嫌い、という人は少なくありませんよね。

「あかるい写真館」のお客さまでも、撮られるのが苦手な家族の写真がないから改めて撮りに来るという人は多いですね。写真が苦手な様子そのものを活かしても面白いですよ。

――私も撮られるのは苦手ですが、「未来の自分を笑わせる」やテーマがあると少し写りやすくなる気がします。

写真は届いて初めて価値になるものだと思います。この大事な時間を切り取って、誰に残したいのか。それは未来の自分自身でもいいし、未来の子どもたちでもいいんですが、届け先をイメージして、何を知らせたいのか考えてみるといいと思います。それに、どなたでも皆さんお芝居はできるんですよ。

――誰でも演技はできる?

そうです。小さな子どもでも嘘はつきますし。自然な演技というのは難しいので、あえて不自然を演出してオーバーな感じにしてあげると逆に自然になったりします。スタジオの場合は小物やセットでそれを作るわけですが、日常なら目にしているもののモノマネをするとか、あえて変なことをしてみるといいですね。動物園なら動物のモノマネをするとか。

新年のあいさつのための写真。鯛の写真を撮って大きくプリントしたものを持った

――遊びながら撮るようなイメージなのでしょうか?

何よりも撮っているその場を楽しんで! その中に気づきがあって、それを撮ると面白い写真になるんですよ。あと、撮ったものは被写体と見せ合います。こう写るんだな、という気づきを共有することは大事です。

――気づきですか?

わかりやすい例として、美術家の田中偉一郎さんの作品「ストリートデストロイヤー」をご紹介します。道のひび割れなどを、自分の攻撃で破壊したかのように見立てるものです。こういうふうに、日常の中に自分が関係を持てるポイントを見つけて、関わっていくと面白いですよね。さっき言った動物のモノマネなんかもそうです。あとは、普通はひとつしかないものを増やしてみるとか。

大好きなおせんべいを大量に配置

――風景と関係性を持つみたいな。

好きなものもそうでしたが、関係性は大事なんですよ。被写体と撮影者の関係もそう。こっちが笑えば被写体も笑いますし。写真がマンネリだなと思ったら、子どもに撮ってもらうとか、被写体と入れ替わっちゃうのもいいですよ。

関係性をずらすと面白い。これは「祖父母」の写真ではなく「両祖父」にずらした一枚

あえて椅子に座らない

物語を作って演じてもらう

――ありきたりなポーズにしないコツはありますか?

指示ができるように、フォトグラファーは自分の中にポーズのストックがあります。ダサめのポージングはキャッチーですし、かわいいので、昔のアイドルの写真や雑誌をチェックしたりするのもおすすめですね。

――でも、子どもや写真が苦手な人にポーズを取ってもらうのは難しいです。

物語を作って演じてもらうと面白いものになります。「あそこに鳥が飛んでるよー!」「あ、上から丸が降ってくる! どうしよう!」「今度は地面に大きな穴が開いてる!」「危ない! 壁に挟まれる!」とか。想像して動いてもらうんです。シュールなポーズで意外とおしゃれな写真になったりもします。また、歩いている途中で止まるとか、何かの動作の途中も面白いですね。

階段を上る途中で止める

――全然言うことを聞いてくれない子どもにはどう対応しますか?

レンズに乗せたぬいぐるみを何度も落っことす、というのはカメラに注目してもらう定番の技です。スリッパが脱げちゃうとか、小道具の風船が飛んでいっちゃうとか、たとえ最初は見てもらえなくてもしつこく何回も繰り返す。繰り返せばいつか必ずウケます! これは僕の父親が営んでいた写真館の50年の歴史で培われた技です(笑)。

それと、一緒に写る人がいる場合はシートベルトのように後ろから子どもを抱えてもらう。腕の中で動いている分には何とか撮れますし、それはそれで面白い絵になったりもしますので。

カメラに乗せたぬいぐるみをわざと落として子どもの注目を誘う

緊張と緩和を利用する

――子どもも大人も、うまく笑ってくれないというのもよくありますが。

笑って、というと笑わないですよね。「緊張してますね」というと自然な笑顔が出やすいです。でも一番大事なのは撮影者が笑うことですね。それと、写真を撮り終わって、「OK」と言ったあとのホッとした表情も必ず撮ってみてください。写真を撮っている間の緊張と、それが終わった緩和。2枚並べれば素敵な組み写真になりますよ。

――乳幼児の場合は?

小さい子どもは、発達段階によって何が面白いのかが変わりますよね。今は「距離感」が面白いんだなとか。それを見つけてやってあげれば、その時間を切り取ることにもなりますし、いい写真になります。きっとご家族なら簡単ですね。

遠近差や高低差を利用するのも一手

――屋外では日差しが強くて苦労する場合も多いと思います。

日中は顔に強い影ができてしまいますね。基本的に、影の中にいたほうがきれいに写ります。顔は日傘の影や木陰に入れて撮るのが無難かもしれません。木漏れ日を活かすときれいに写りやすくて便利ですが、顔の中で高さのある鼻だけ白くなったりしてしまうことも多いので、半歩下がってもらって様子を見るのがおすすめです。

* * *

秋の行楽シーズンに、ぜひ“未来の自分を笑わせる”つもりで撮影してみてほしい。

あかるい写真館
住所:東京都千代田区神田錦町3-9 神田ポートビル1F
公式HPはこちら>>

取材・文・撮影/宿無の翁
写真提供/あかるい写真館

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