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ベルサイユ宮殿にコミックスが!? ベルばら50周年記念本・担当編集者が語る舞台裏

集英社オンライン / 2022年9月21日 16時1分

少女漫画の金字塔『ベルサイユのばら』連載50周年を記念し『愛と感謝の50周年 ベルサイユのばら アニバーサリーブック』が発売された。本書の編集に携わった有馬弥生さんに、50年間ずっと輝き続ける『ベルばら』の魅力を語ってもらった。

文庫、完全版、リミックス版…時代の変わり目とともに生まれ変わる『ベルばら』

少女漫画の頂点に燦然と輝く『ベルサイユのばら』は、1972年に「週刊マーガレット」で連載がスタートし、1973年12月には全82回の連載が完結する。連載開始と同時に大ヒットとなったが、日本中を席巻する大ブームとなったのは1974年の宝塚歌劇での上演によるところが大きかった。しかしこの頃にはコミックスもすでに完結し、作者の池田理代子氏は漫画家仲間と海外旅行中。帰国時に空港で取材陣に囲まれてそのフィーバーを知った、というのはファンの間では有名な話だ。


『愛と感謝の50周年 ベルサイユのばら アニバーサリーブック』より、ベルサイユのばら50年史

「『ベルサイユのばら』は、少女漫画で初めて「ベルばら」という<略称>が使われた作品だという説もあるくらい、何度もブームを起こしてきた作品です。1978年に私が集英社に入社してからも、アニメ化され、映画化され宝塚で舞台化されるたびに雑誌で特集が組まれ、そのたびにコミックスが売れるのを目の当たりにしてきました。「50年史」のコーナーでは、昭和、平成、令和の「ベルばらブーム」を、カラーで特集しています」(担当編集者:有馬さん、以下同)

1974年「マーガレット」のプレゼント企画で制作された「ベルサイユのばら手帳」。当時ファンのマストアイテムだった。『愛と感謝の50周年 ベルサイユのばら アニバーサリーブック』より

池田理代子氏自身も、『ベルサイユのばら』に比肩する傑作『オルフェウスの窓』の連載終了後、1980年からオスカルの姪っ子が主役を務める『ベルサイユのばら外伝』を執筆。1986年から連載された『エロイカ』では、『ベルばら』の実質的な続編として、アランやロザリーなどの活躍を描いている。

『ベルサイユのばら外伝』名探偵ル・ルー編序章(「ベルサイユのばら完全版」9巻収録)

常にアップデートされる『ベルばら』はコンスタントに売れ続け、1994年には文字本だけだった集英社文庫から、手塚治虫作品とともに初めての漫画作品として選出され発売されることになる。以降、雑誌掲載時のカラーに加えて新規着彩したページを加えた「ベルサイユのばら完全版」やコンビニエンスストアで発売されるリミックス版などが続々刊行されていくことになる。

集英社文庫(コミック版)「ベルサイユのばら 全5巻セット」。本棚としても使えるボックス入り

「集英社の人気作品の関連書籍を作る部門としてコミックメディア編集部が1990年代に設立され、私は1995年にその一員になりました。そしてこの頃になると、連載当時の担当者がすでに引退しているケースも増えていて。なので、『ベルばら』のように、雑誌での連載が終わっても人気が続く作品については、コミックメディア編集部で担当する、という流れが生まれたんです。雑誌に掲載され、コミックスとして販売されてきた名作たちを再度売り出すために、コミック文庫をはじめとして、いろいろな「形」を考える必要がありました」

周年の節目で生まれ変わり、その度に新しい売れ方をする

2002年に開催された、日本経済新聞主催の「ヴェルサイユ展」に合わせ、『ベルサイユのばら』30周年のファンブックができないかと、コミックメディア編集部に打診があった。その時、「やります!」と手をあげたのが、有馬さんだった。

「もともと図鑑や『VOW』などの企画本が好きだったのと、海外ロケに行ってもいいという声も聞こえてきていたので(笑)、立候補して『ベルサイユのばら大事典』を企画しました。この時結成された「チームベルばら」メンバーで50周年のアニバーサリーブックも制作しています。プロジェクトが始まると同時に、池田理代子先生の長年の担当だった元上司が、『ベルばら』個人研究者のTさんを紹介してくださり…。今回も多大なご協力をいただきました。

初の取材ではライターさんとベルサイユまで取材に行ったのに、デジタルカメラが壊れてしまい、冷や汗。パリ市内のカメラ店に駆け込んだら、日本人の店長さんが出てきて(!)カメラを貸してくださったんです。「チームベルばら」は、スタート時から多くの親切な人に支えられております。

そうそう、2002年にはベルサイユ宮殿に、ベルばらグッズは何もなかったのですが、今はフランス語版のコミックスがおみやげ店に置いてあります。その位、海外での知名度も一気に上昇したんですよ」

2002年発売『ベルサイユのばら大事典』より。借りたデジカメで撮影した、貴重な写真とともに

この記念事典が大変好評を博し、2006年には『オルフェウスの窓大事典』を作成。以降、名言カレンダーや手帳、カルタなど、いろいろなジャンルのベルばらコンテンツが制作されるようになる。

「『ベルサイユのばら大事典』で、事情があって2Pの空きができてしまったんです。そこで、チームのライターさんたちとひねり出したのが「ベルばらカルタ」でした。この企画に池田理代子プロダクションさんが許可をくださり、最終的には宝塚のOGである紫苑ゆうさんに読み札を読んでいただいたCD付きで商品化までしました。新しい提案にもいつも柔軟に耳を傾けてくださる池田理代子先生と、事務所の方には感謝しかありません。
微妙に笑いの要素をまぶしても揺らがない原作の力と、応援してくださるファンの方々のおかげで、思いきった企画を実現することができました」

『ベルサイユのばら大事典』のコラムとして、2002年に当時のスタッフが作った誌面構成案(現物)。まじめな大河ロマンをかなりな勢いでいじっている

原画展きっかけでスタートしたエピソード編、新世代の『ベルばら』に感動!

左:完売した2013年「マーガレット」10号 右:同年22号にてついに表紙を飾る

「マーガレット」が50周年を迎える2013年のこと。記念色紙を求められた池田理代子氏は、「ベルばらの新作を描かせてもらえないか?」と編集部に提案する。40年ぶりに「マーガレット」に『ベルばら』が掲載された50周年記念号(2013年10号)は、まさかの完売。そして再録掲載!! 以降、エピソード編と銘打たれたシリーズはマーガレットコミックスで4巻分、9つの新作エピソードがつづられた。マーガレットコミックス11巻の池田理代子氏インタビューによると…

池田 連載当時、「オスカルが死んでから10週で終わりにするように」と編集部から言われていたんですが、マリー・テレーズとフェルゼンが出会うエピソードとか、まだ描きたいことがたくさんあった。それが今回のお話に反映されている部分はありますね。

とコメントしているとおり、本編の間をつなぐようなエピソード群は単なる外伝ではなく、“真のエンディング”と言えるシリーズとなっている。今回の『愛と感謝の50周年 ベルサイユのばら アニバーサリーブック』でも、エピソード編の詳細な解説が組まれている。

『愛と感謝の50周年 ベルサイユのばら アニバーサリーブック』より、エピソード編ガイド

「2012年に、朝日新聞社主催で開催された「40周年記念 ベルサイユのばら展」では、記録的な数のお客さんが詰めかけ、会場のデパートのグッズ売り場に長蛇の列ができ、記念グッズはあっという間に売り切れが続出しました。
私見ですが、ベルばらグッズやふろく制作の機運は、そのあたりから高まったと考えています。また、翌2014年からスタートする「わたしのマーガレット展 〜マーガレット・別冊マーガレット 少女まんがの半世紀〜」では、オスカルとアンドレの立像も制作され、『ベルサイユのばら』は再び注目を集めました。
同時期にはエピソード編のコミックスも発売され、雑誌「SPUR」ではハイブランドとのコラボも表紙を彩り、携帯ゲームやスタンプも発売され――オスカルはまたしても軽やかに時代を超えていったように思えます。池田先生ご自身が「昔の絵より新しい絵が好き」とおっしゃっているように、その時ご自身が「描きたい」と思われているものを描いていらっしゃるからこそ、古くならないのではないでしょうか」

50周年の節目に伝えたかったのは「愛と感謝」

本書の制作にとりかかる前に、有馬さんは、何度も資料を提供してくれた個人研究者のTさんを始め、たくさんのファンの意見を聞き、本の方向性を考えたそうだ。京都国際マンガミュージアムのトークショーで「昔から、漫画は文学に比べて、一段地位が低いものとして扱われてきました。そして、漫画の中でも少女漫画は、少年漫画にくらべて、より貶められてきた。私はそれをひっくり返したくて闘ってきたのです」とおっしゃった池田理代子氏の言葉が、常に胸の中にあったという。

「ベルばらの50年の闘いを中心に本を作ろうと力んでいたら、池田先生の事務所の方から「『ベルサイユのばら』は、あくまでも娯楽作品なので、楽しい本にしてください」とアドバイスをいただき、目からウロコがどっと落ちました。本のサブタイトルについても、いくつかの案をいただきましたが、その中に「愛と感謝の50周年」というのがあり、「それだ…」と。本を作って売る側の一員として、素晴らしい作品を世に出してくださった池田理代子先生に、そして、『ベルばら』を愛読し続け、本を買ってくださった読者の方々の両方に、愛と感謝を伝える本にしたい…と、目指すところもはっきりしたのです」

50年の歴史のカラーグラビアや豪華な寄稿陣によるエッセイに加え、池田理代子氏ご自身のコメントがふんだんに掲載されているのも本書の特徴のひとつ。これまで周年のたびに何度もコメントは掲載されているが、連載開始50周年を迎えた池田氏からのメッセージは、今までにも増してとても愛にあふれている。

『愛と感謝の50周年 ベルサイユのばら アニバーサリーブック』より。後半は池田理代子氏をクローズアップ!!

2022年、50周年を迎えてなお、展覧会の発表や新作劇場版アニメの発表などのたびにSNSをバズらせる『ベルサイユのばら』。そのパワーの源である、まっすぐな愛を本書から感じてほしい。

「ずっとファンだった方も、初めて『ベルばら』に触れた方も、この本をきっかけに、もう一度原作を読んでみてくださるとうれしいです。読むたびに新しい発見があるので! ちなみに私が今回、この本を作るために原作を読み返していて一番胸に響いたのは、ルイ16世のこのシーンでした。みなさんのイチオシのシーンも教えてください」

有馬さんの心に響いた感謝の思いを伝えながら断頭台に向かうルイ16世(マーガレットコミックス9巻、完全版8巻に収録)

Ⓒ池田理代子プロダクション 取材・文/ハナダミチコ

愛と感謝の50周年ベルサイユのばらアニバーサリーブック

池田 理代子

2022年9月15日発売

2,420円(税込)

A5判/160ページ

ISBN:

978-4-08-790083-5

連載開始から50年、世代を超え、世界中の読者の心を揺さぶってきた『ベルサイユのばら』。その軌跡と魅力を伝えるファンブック・永久保存版!

コンテンツ:
・作者自身のコメント入りで紹介するイラストギャラリー
・カラーでたどる「ベルサイユのばら」50年史
・もっとベルばらを知る…エピソード編ガイド
・ベルばらを継ぐ…著名人描きおろしイラスト&寄稿
・池田理代子先生描きおろし「理代子のひとりごと2022」
・今だから聞ける、言える「50周年50問50答」
・満を持して新作:ベルばらカルタ50th

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