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久保建英、15ゴール関与で今季覚醒なるか!? マドリー復帰の現実的シナリオ

集英社オンライン / 2022年9月22日 14時1分

スペインのプロサッカーリーグ「ラ・リーガ」4季目となる今シーズン、レアル・マドリードからレアル・ソシエダに完全移籍を果たした久保建英。開幕節で決勝ゴールを決め、その後も連続出場中と、好調な滑り出しを切っている。その要因は何なのだろうか。DAZNラ・リーガ中継の解説者を務める、日本サッカー界きってのスペイン通、サッカージャーナリスト・小澤一郎さんに話を聞いた。(トップ画像/開幕戦で決勝ゴールを決め、喜びを分かち合う久保建英とチームメイト 写真:なかしまだいすけ/アフロ)

FW起用は良い意味でのサプライズ

――今季ここまでの久保建英の活躍について、小澤さんの率直な感想を教えて頂けますか? 予想通りなのか、それとも驚きの方が大きいでしょうか?



久保建英の実力を考えれば驚きはないんですが、過去3シーズンのラ・リーガ(スペインリーグ)の中での活躍ぶりや立ち位置と比較すると、今シーズンはやはり驚きが大きいです。
特に、FWで起用されている点ですね。Jリーグ時代でもラ・リーガでの3シーズンでも観たことがない、久保の新たな一面を目の当たりにしているので、良い意味でサプライズです。

――久保建英に2トップの一角、セカンドトップ的な資質があったということ自体が驚き、という感じでしょうか?

久保が攻撃的な選手ということは分かっていました。けれども、ラ・リーガでの過去3シーズンでは右サイドのウイングで「相手を抜いて決定的な仕事をする」、特に「クロスからのアシストをする」というようなイメージ、ブランドが定着していたと思います。

しかし現在のレアル・ソシエダでは右サイドではなく、より中央でプレーしています。これまでもトップ下でプレーができることは分かっていましたが、レアル・ソシエダにはトップ下のポジションに、チームの中心選手であるダビド・シルバがいる。そのため久保はより高い位置のFWで起用されています。その起用法は想像していなかったので、日本代表の森保監督も含めて「こんな一面もあるんだな」と、良い意味で受け止められていると思います。

――レアル・ソシエダの、チームとしての特徴はどのようなものでしょうか?

ラ・リーガの中で、レアル・ソシエダはクラブ予算的に中規模のクラブです。戦力的にも上から数えて5、6位くらいで、ヨーロッパの大会でいうとチャンピオンズリーグではなく、ヨーロッパリーグを目指すようなクラブですね。
そういう中堅チームなのですが、例えば残留争いをするとかではなくて、常に上位争いはしています。でも優勝争いは流石に厳しいよね、というような立ち位置のクラブと言えます。

サッカーの戦術的にはスペインサッカーのイメージそのもので、ボールをしっかりと握り、パスを回す、攻撃的なパスサッカーというクラブ。
なぜそういう攻撃的なパスサッカーが構築できるのか、ということを紐解くと、育成年代の地元の子供たちの存在が要素として挙げられます。外から良い選手を次々に買えるクラブではないので、良いサッカーをするために、子供たちを育て上げているんですね。

どちらかというと、今のプロサッカー界はトップダウンでサッカーを落とし込む、つまりトップチームの戦術を育成年代にも教える、というのが主流です。レアル・ソシエダはそうではなくて、これはバスク特有の地域性でもあるんですが、地元の子供たちを大事にしながらボトムアップ方式でチームを強化していくことで、成功しているクラブです。

それが攻撃的なサッカーに繋がっているという意味でも、地元のファンのみならず、世界のサッカーファンに「レアル・ソシエダのサッカーっていいよね、見たいよね」というようなイメージが定着しています。経営的にも、ピッチ上のサッカー面的にも、ラ・リーガの模範的なクラブの一つだと思いますね。

久保の過去の在籍クラブと現レアル・ソシエダとの違い

――久保建英が昨シーズン所属していたマジョルカでは、結果として1ゴールのみと、あまり活躍ができませんでした。マジョルカとレアル・ソシエダの違いはどういう部分でしょうか?

ビジャレアル時代を除きますが、過去3シーズン、マジョルカとヘタフェという、基本的に1部残留が目的のチームに久保は在籍していました。残留目標のチームだと、どうしても守備に追われる時間が、久保のみならずチームとして多くなります。
「低い位置でまず守備をしてから攻撃に移る」という形になり、攻撃にあまり枚数を割きません。そうなると攻撃時に久保の近くに味方がおらず、基本的には「久保一人に頼む」というカウンター攻撃になりやすいんです。その場合、一人で2、3人を相手にしなければいけないので、コンビネーションを得意とする久保の良さがなかなか出せません。

また、低い位置の守備だけで考えた時にはどうしても「他の守備的な選手と比べるとやっぱり守備ができないよね」というマイナス評価にも繋がりやすい。つまり、どちらかというと不得意なことをまずメインでやらされて、なおかつ攻撃ではより難易度の高いことを求められていた。簡単に言えば、久保の特徴とチームのスタイルが、ミスマッチだったのだと思います。

一方レアル・ソシエダでは「基本的にハーフウェーラインより低い、自分達の陣地に戻らなくて良いよ、守備の時には後ろは任せてくれ」というサッカーが可能です。その代わり攻撃時では、ピッチの最後の3分の1、ゴールを決めるエリアでの仕事が求められます。

開幕戦でのゴールがまさにその形だったんですが、チームとして高い位置の守備でボールを取ってくれて、久保は前に攻め残りしているので、最終的なラストパスが入ってくる。攻撃に専念できるという意味で、あのゴールシーンは象徴的だと思います。

もちろん久保はこれまでの3年間で、より守備をする、ハードワークする、という面の能力を伸ばしたと思います。ただし、久保の本当の武器や強みを発揮する、というチームではなかった。それが発揮できるチームに初めて入ることができた、ということを考えると、開幕からの順調なプレーぶりは、当然の活躍でもあると思います。

サッカージャーナリスト・小澤一郎氏 撮影/Kazuki Okamoto

――では久保建英自身、これまでより純粋にサッカーを楽しめているような環境でしょうか?

それは間違いないと思いますね。これはトップレベルの選手でないと分からないフィーリングなんですが、これまでのチームだと「自分が欲しいタイミングでボールが入って来ない」ことが多かったと思うんですね。そうすると動き直したり、ボールに近づき過ぎたりするプレーが増えて、より苦しい状況でボールをもらうことが多くなります。

上手い選手たちと一緒にプレーすると、欲しいタイミングで良いボールが入ってくるので、ボールを受けた時点で相手が周りにいなくてチャンス、となります。レアル・ソシエダは久保一人だけでなく周りの選手も当然上手いので、過去の在籍チームと比較しても、今は一番楽しくプレーできているだろうし、相当充実しているのではないかと思いますね。

更なる高みへ到達するために必要な“数字”

――今シーズンの数字的な目標として、20ゴールに関与する(ゴールとアシストの総数を20以上にするという意味)という目標を久保建英は掲げています。小澤さんはどう予想されますか?

もちろんそれをクリアして欲しいですが、これまでの実績からすると20ゴール関与は難しいかな、とは感じています。ただし、15ゴール関与は可能なのではないでしょうか。

逆に言えば、それくらいできなければ、彼の次のステップアップが難しくなってきます。今回、完全移籍でレアル・ソシエダに来ていますが、おそらく彼の最終的な希望はレアル・マドリードに戻ることでしょう。
レアル・マドリード在籍選手の昨シーズンの数字を見ると、アセンシオが10ゴールで、ヴィニシウスは17ゴールなんですよね。つまりレアル・マドリードで攻撃的な選手として出場したいのであれば最低10ゴール、絶対的なレギュラーになるのであれば15ゴ―ルは必要だということ。
とは言っても、そのレベルにいきなり到達するのは難しいので、具体的に言うと今シーズンは7ゴール、8~10アシストくらいを目指すのが現実的だとは思います。

――プレースタイル的には、ゴールかアシストのいずれかを伸ばすべきというよりは、どちらも狙える選手になっていくべきでしょうか?

アシストが得意でそこに特化してしまうと、選手としての怖さが無くなってしまいがちです。今のダビド・シルバがまさにそういうプレーヤーなのですが、そうすると相手がラストパスに反応してきて、カットされやすくなるんですね。

まずゴールを見せた上でアシストもできる方が、プレイヤーとしての幅が広がると思います。だからFWで起用されている今の内に、どんどん意欲的にゴールを狙い、得点を決めておいた方が、アシストを伸ばすことに関しても相乗効果がある、と言えるでしょう。

――現状の久保建英の弱点は、どのような部分でしょうか? そこを含め、今季どのようなシーズンを送っていくと思いますか?

弱点で考えると、守備時の強度、ハードワークを連続して行う部分は、これまでメディアで指摘されることはありました。けれども、私にはそうは見えませんでした。これまでの3年間は、チームとして低い位置に下がりすぎて守備をしていたので、彼だけの問題ではなく、チームの守備の構造的な問題である、と考えていました。

以前私がスペインで乾貴士を取材した時に、「日本人選手には日本人独特の感性の高さがあり、監督が1言えば10汲み取れる」というような話を、当時の監督から聞いたことがあります。乾はスペイン語をほとんど話せなかったのですが、パッと指示して練習させたら、監督が想像した以上のプレーをスペイン人選手よりもできてしまうので、そういう部分でも評価が高かったんです。
久保にも乾と同じような感受性の高さがあり、守備の立ち位置やプレッシングの掛け方なども深く理解できているので、本当に賢いプレーヤーだと思います。

なおかつ、現在ラ・リーガでプレーしている外国人選手の中でも、久保はトップレベルでネイティブなスペイン語を話します。コミュニケーションや戦術理解でも問題がないのは、強みの一つだと思いますね。

これまでは、彼の課題をなるべく課題として見られないように、誤魔化しながらプレーする、少し無理難題があるような3年でした。ですが今シーズンは、伸び伸びと自分の武器で勝負できる初めてのシーズン、完全に大化けしてくれるシーズンになるのではないか、と期待しています。


取材・文/佐藤麻水

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