1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

“男役が演じるけど男ではない”ことがオスカル役の難しさ。汀夏子が振り返る宝塚のベルばら

集英社オンライン / 2022年9月23日 11時1分

原作が1972年の連載開始から50周年、宝塚歌劇『ベルサイユのばら』が1974年の初演から48周年を迎える2022年。『ベルばら』の輝かしい歴史を総まとめにした『愛と感謝の50周年 ベルサイユのばら アニバーサリーブック』が発売された。本書にコメントを寄せた元・宝塚歌劇団トップスター、汀夏子さんが、人生の転機となった『ベルサイユのばら』オスカル役の奥深さと、原作者・池田理代子先生への感謝のメッセージを語る。

『男役』だから、こんな自分でも輝くことができた

デビューからおよそ半世紀となる大ベテランながら、現在も精力的にステージに立ち、羽のように軽やかなしぐさで女性を魅了する汀さん。汀さんにとって宝塚の「男役」は、自分を輝かせてくれた、アイデンティティのようなものだという。




中学1年生ではじめて宝塚歌劇を見た時から、コレや!と思ってました。背が低いから男役はムリや、と言われたこともありましたが、美人でもなく、歌もうまいわけでもない自分が、男役なら舞台で輝けるんです。ほんまに天職や思うてます。コロナの影響で、みなさんとお会いできない時期が続き、「あれは夢だったんかなー」なんて思ったりしていましたが、お客様と顔を合わせ、喜んでいただけるのがなによりうれしいんです。今でも、踊りのお稽古は続けていますよ。


身長163cmの汀さんは、『ベルサイユのばら』で組んだ後輩で、アンドレ役の麻実れいさんとおよそ9㎝ほど身長差がある。

「ベルサイユのばら 集英社完全版7」口絵。新規カラーが美しい

身長に差があったから、オスカルとアンドレ、私と麻美さんが並んだとき、「絵」になったんだと思います。ほら、見た目のイメージってあるじゃない? そういう意味でも、あの時オスカル役を演じられたのは幸運でした。オスカル役のおかげで、今でも私を覚えていてくださる方がいて、ステージにあがる機会につながるわけですからね。

社会現象的ブームの中で『ベルサイユのばら』を演じるということ

とはいえ、当時の『ベルサイユのばら』は爆発的な人気により社会現象化。月組・花組の舞台も大ヒットする中、雪組のトップとしてオスカルを演じることへのプレッシャーで当初はいっぱいいっぱいだったそう。

演じることが決まって、コミックスを揃えようと思ったけど、人気がありすぎて、まったく手に入らへん状態だったんよ。デパートでイベントがあった時もね、ぶわーっと人が並んで、グッズが飛ぶように売れてました。オスカルのファンの中には、「人間がオスカルを演じるなんて」という方も多かったので、熱烈なファンのお眼鏡にかなうよう、メイク中はまんがの絵を鏡の横に置いたり、必死でした。オスカルの前髪の「クルン」の位置にもこだわって、糊でとれないようにおでこに貼ってたんです。でもステージの上ではずっと踊りっぱなしだから、すぐとれちゃう(笑)。


稽古中、原作者・池田理代子先生と対面する機会があったという。その時の感想を聞くと――


…アントワネット様やッ! と思いました(笑)。当たり前ですが、まんが家さんが、描かれている作品とお顔が似ているとは限らないですよね。でも池田先生はアントワネット様そのもの。気品と美しさに感動したのを鮮明に覚えてます。

男役は男以上に男、だからこそ難しかったオスカル

デビュー前から男役ひとすじで進んできた汀さんにとって、オスカル役は想像以上に難しいものだったそう。

オスカルは男ではなく、凛々しい女の人ですよね? でも宝塚の男役は、たとえ女が演じていても「男」なんです。男役として、男に見えるように表情もしぐさも間合いも練習を積んでいるから、そのまま意識せずにオスカルを演じると「男」になっちゃうわけ。かといって、女らしくしてもオスカルにならない。男役として、男もできるし、女としての自分で女も演じられるけど、オスカルはどっちでもない。っていう事実に気がついた人はあまりいないと思うわ(笑)。

その「間」をどうしようか? というのでずいぶん試行錯誤しました。女性だから、気持ちは可愛くなくちゃいけない。オスカルも、外では近衛兵の隊長として凛々しくしてるけど、しぐさには細やかさや可愛げがある。剣を持って踊るシーンでも「女」やないといかんわけよ。でも、男役のまま女を演じると女々しくなるか、男のままになるかのどっちかやから、その「間」がなかなかつかめなかったです。
公演初期は、ちょっと男に寄り気味やったと思います。東京公演の頃にはだんだんと「これや」っていうバランスが見えてきました。

「ベルサイユのばら〈完全版7巻」(集英社刊)より、汀さんが好きなシーン。「アンドレと契る前に自室でヴァイオリンを弾くオスカルは、ジャルジェ将軍の嫡子としてふるまうオスカルではなく、普段のオスカル。その穏やかさが出ていて好きです」

汀さんが宝塚で活躍された時代は、まだまだ「女性は結婚して仕事を引退し、子を育てるもの」という認識が一般的だった。そんな世論の中、トップとして輝く中で引退し、現在でもなお男役として活動を続ける汀さんは、まさにオスカルそのものだ。

最初『ベルサイユのばら』が私たちの雪組ではなく、月組に決まった時は、「もう私らはやれへん、地獄や!」と思ったんですが、次の年に演じられることになって「こんな幸せはない!」と思いました(笑)。『ベルサイユのばら』は、宝塚にとっても、私にとっても奇跡と言っていいくらい大きな存在です。
演じている最中は、なんとも言えないほど幸せで――。もう、このまま死んでもいい……そしたらきっと、お墓に花がいっぱいくるわーとか、図々しい事を考えてました(笑)。それ位、あの時は『ベルばら』が究極やったの。
ここで死んだら、みなさんがちゃんと見てくれて、大勢の人の心に自分の名前が残る――って思うてました。それから……まさかこんなに長生きするとは(笑)。



Ⓒ池田理代子プロダクション 取材・文/ハナダミチコ

愛と感謝の50周年 ベルサイユのばら アニバーサリーブック

池田理代子

2022年9月15日発売

2,420円(税込)

A5判 ソフトカバー、160p(カラー80p、活版80p)

ISBN:

978-4-08-790083-5


連載開始から50年、世代を超え、世界中の読者の心を揺さぶってきた『ベルサイユのばら』。その軌跡と魅力を伝えるファンブック・永久保存版!

コンテンツ:
・作者自身のコメント入りで紹介するイラストギャラリー
・カラーでたどる「ベルサイユのばら」50年史
・もっとベルばらを知る…エピソード編ガイド
・ベルばらを継ぐ…著名人描きおろしイラスト&寄稿
・池田理代子先生描きおろし「理代子のひとりごと2022」
・今だから聞ける、言える「50周年50問50答」
・満を持して新作:ベルばらカルタ50th

●「誕生50周年記念 ベルサイユのばら展―ベルばらは永遠に」

宝塚歌劇を含めた『ベルサイユのばら』50年の歴史を詰め込んだ展覧会「誕生50周年記念 ベルサイユのばら展―ベルばらは永遠に」は2022年9月17日~11月20日まで東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)にて開催中。

https://verbaraten.com/

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください