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衛生意識は日本人そっくり⁉ コロナ禍からの復活を期すバンコクの今を「地球の歩き方」編集室に聞く

集英社オンライン / 2022年9月25日 17時1分

コロナ禍を乗り越え、ようやく刊行が再開された人気ガイドブックシリーズ「地球の歩き方」。8月4日にまず『ハワイ編』『ニューヨーク編』が発売され、その後は続々と新刊登場の予定だ。日本人観光客の多いタイの首都『バンコク編』も、年末発売に向けて鋭意制作中。現地を取材した編集者に、バンコクの最新事情やコロナ対策を聞いた。

コロナ禍をなんとか耐え抜いた観光立国タイ

「取材をしていて、もとのタイが戻りつつあるな、と感じました」

『地球の歩き方』タイの制作を担当する水野純さんは、そんな印象を話す。タイの首都『バンコク編』の2022年末発売に向けた取材から帰国したばかりだ。観光立国のタイはコロナ禍の影響が大きいようにも思うが、耐え抜いたところのほうが多いそうだ。



「レストランやホテル、バックパッカーの拠点・カオサン通りのゲストハウスなど、閉業したところは確かにあります。それでも、甚大なダメージというほどでもないと思います。みんな我慢して、しのいでいたのでしょう」

雨季のタイを「バンコク編」の取材のため走り回った水野さん(撮影:室橋裕和)

もちろん変化はある。週末は大賑わいとなったウィークエンドマーケットは、閉めている店が目立つ。土産物屋台とナイトライフで知られるパッポン通りにも店は出ていない。

「目に見える影響がいちばん大きいのは、日本人観光客に人気だったナイトマーケット『アジアティーク』かもしれません。そこではニューハーフショーの『カリプソ』を含む半分ほどの店が閉まっています」

それでも、少しずつ賑わいと観光客が戻ってきているという。

「ナイトマーケットでは『鉄道市場』も閉まったのですが、近くに再オープンしてお客さんが増えています。『アジアティーク』でも、そばを流れるチャオプラヤー川に古い帆船を係留して、そこで食事ができるようになって盛り返してきています。これはタイ海軍が使っていた軍艦をモデルに、レストラン&バーとして新しく建造したもので、気合の入った新アトラクションです」

しかし2021年のタイはそれこそ閑散としていたという。水野さんは「こんなときだから、タイで何が起きているのか見ておきたい」と、取材というわけでもなくコロナ禍のタイに何度か渡航し、到着後隔離の不自由さや、観光客のいなくなったバンコクの街を体感した。

「カオサン通りも王宮も、誰もいなかったんです」

しかし今年に入り、タイの入国規制が段階的に緩和され、少しずつ観光客が戻ってきた。こうした変化を見て、改訂版の刊行を決めたそうだ。

よく似ている? タイ人と日本人の衛生意識

現在のタイの感染者数は1日1000人前後と落ち着き、ワクチン接種も人口の75%を超えた。公共の場でのマスク着用義務は6月に撤廃されている。それでもタイ人の多くはしっかりマスクを着けているし、店頭での消毒や体温検査も行っているという。このあたりは日本人の感覚に近いようだ。

人気の屋台やレストランが並ぶ中華街でもマスク姿が目立つ(写真提供:水野純)

それにタイでも、密を避けるマインドが広がってきている。コロナ前、地下鉄やBTS(高架鉄道)のラッシュアワーの混雑は東京並みだったが、いまはかなりゆったりしている。テレワークが進んでいるのだろう。また宅配サービスも普及した。

「人気の食堂を取材したのですが、お客さんが全然いないんです。でも厨房では慌ただしそうに調理をしていて、できた料理を宅配のバイクがどんどん受け取っていく」

もともとレストランや屋台での「お持ち帰り文化」がさかんなタイでは、デリバリーへの対応がしやすかったのだろう。

観光名所ウィークエンドマーケットの入口に検温機が設置されていた(写真提供:水野純)

「消毒薬を持ち歩く人もいますし、電車に乗るときは改札の前で体温チェックがあります。ショッピングモールなどの入口にも検温機が置かれていたりしますね」

おおらかな国民性と言われるタイの人々の意外な(?)慎重さというわけだが、そうなると気になるのは外国人旅行者への視線だ。日本のように、外国人を受け入れるのは時期尚早といった空気はないのだろうか。

「それは大丈夫だと思います。衛生面でマナーを守っていれば心配することはありません」

と、水野さん。タイ人のホスピタリティは健在というわけだが、そんなタイもワクチンの接種証明か陰性証明があれば、入国時の隔離など行動制限はすべてなくなっている。これを受けて欧米や韓国の旅行者が増えてきた。

そのため、これまではスタッフを減らして半分だけ営業していたようなホテルも「本格稼働」を目指しているが、急な需要回復に追い付かず人手不足のところも。

「取材を申し込んだホテルから、人が少ないので対応できないと断られたこともありましたね」

それに取材をした8月は酷暑にして雨季というなかなかにハードなシーズン。

「マスクをして地図のチェックに歩き回るのはたいへんでした」

と、水野さんは苦笑する。やはり差し替えの物件が多いためその作業や、既存の物件のデータも変わっているところがあり、確認に手間取ったそうだ。

バンコクではBTS駅でも抗原検査キットの自販機が置かれている(写真提供:水野純)

こうして年末に刊行予定の『バンコク編』も約2年ぶりの改訂となる。もちろん感染対策のページも用意する。出入国の際の検疫に関する情報や、タイの感染対策の紹介なども盛り込み、古い情報をすべて差し替える。

「基本的な感染対策をすれば、あとは以前同様のタイが戻ってきている感じですね」(水野さん)

コロナが過ぎ去り、もとのようにタイを楽しめるようになってきている、ということなのだろう。

『バンコク編』に続いて、『タイ編』は来年刊行の予定だ。タイ旅行を待ち望んでいる人も多いだろうが、水野さんはこんなアドバイスをくれた。

「コロナ前よりも、タイの物価も上がっているし、円安なので以前ほどは安くありません(笑) それに感染時の入院などもカバーできる保険には必ず入っておいたほうがいいでしょう。旅行者が戻ってはいますが、王宮や寺院などはまだまだ空いていて、いまがゆっくり観光できるチャンスだと思います」

秋の旅行シーズンから、『歩き方』発刊再開ラッシュの年末年始にかけて、海外に旅立つ日本人も増えそうだ。

取材・文/室橋裕和

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