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20代~30代前半にiDeCoをオススメしない2つの理由-お金を使うことで得られる大切なもの

集英社オンライン / 2022年9月26日 15時1分

2022年10月1日から多くの会社員がiDeCoに加入できるようになる。iDeCoには節税メリットが多いので、会社員の節税対策として関心を集めている。しかし、iDeCoを始めるに前に今一度、本当に加入が必要かどうか慎重に考えるべきである。特に20代や30代前半で一度拠出すると60歳まで引き出せないiDeCoに加入するのは要注意。制度改正前に「お金の本質」について考えてみたい。

「資産額が多い=幸福」は人生を単純化しすぎ

筆者はファイナンシャルプランナーであり、僕自身、お金は幸福な人生を実現するための道具であって、幸福の定義によって必要なお金の量や使い方は異なると考えています。しかし、近年では「資産額が多い=幸福」と単純化している人を多く見かけます。



まず大前提として幸福というのは主観であり、あなたが何に幸福を感じるのかを知っておかなければ幸福な人生をデザインすることができません。

あなたにとって幸福な状態とはどんな状態でしょうか?
そして、あなたはどうありたいですか?

もし、あなたがお金を1円でも増やすことが最大の幸福と感じるのであれば若いうちから老後に向けて投資をすることは正しいです。だけど、そうでないのであれば、あなたの幸福の定義においてどうお金を使えばいいかをまず考えてみるべきです。

また多くの人は金融資本ばかり意識しますが、人生には金融資本だけではなく時間や健康といった見えない資源も存在します。若いうちは時間と健康という資源を多く保有し、反対に金融資本を持っていないため、保有する資源を活用し金融資本を手にします。

しかし、時間は有限であり、目にすることができないため、資源が枯渇しそうになって初めて認識するようになります。ゆえによく聞く「若いときにもっと好きなことをすれば良かった」という言葉が出てくるわけです。

また時間があっても健康でなれば、お金から得る効用は大きく下がります。

あなたにどれだけ時間があって、お金があろうとも健康状態によっては好きなものを食べることが難しいかもしれません。またどれだけ素晴らしい映画を映画館で見ようとしても座り続けることが苦痛になれば、映画を心から本当に楽しむことも難しくなります。

そう考えると、お金を使って得られる効用は「健康」であることが大前提であり、身体機能が低下するほど効用は落ちると考えられます。しかし、若いうちは健康な状態がずっと続くと思ってしまうため、楽しみを先に取っておこうとするのですね。

だからこそ、もし自分が健康でいられる期間が限られていると知ったときに「これだけはしておきたい」と思うことがあるのであれば、やっておく方がいいのではないでしょうか。

僕自身、大阪生まれの大阪育ちでしたが、35歳で妻のふるさとである高知県に完全移住しました。仕事のことを考えると大阪に居続ける方が良かったのですが、それでも地方移住の夢を先延ばしせず、若い間に移住できたことは非常に良い決断だったと思っています。

お金を使って得た「経験」で残りの人生を生きる

お金は使うとなくなるというのが一般的な認識ですが、お金を使うことで得る経験などがあるため、正しくはゼロにはなりません。お金と経験を交換しているのです。

そして、その経験はあなたの中で生き続けます。10万部以上売れた『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)の中でも、その経験から得るものを「思い出の配当」と表現されています。

つまり、お金を保有して残りの人生を過ごすのか、経験を持って残りの人生を過ごすのかという違いでもあります。ここで勘違いして欲しくないのは、将来に1円もお金を残さず使い切れというわけではありません。

必要以上に未来にお金を残すことについて考えた方がいいと言っているのです。将来的に年金は破綻せず、減額した金額を受け取ることになります。減額された年金額と生活費などの差額から、おおよそ老後に必要な金額を見積もることができます。

その部分に対してはつみたてNISAやiDeCoを活用しながら準備をするべきですが、それ以上にお金を未来に残す余力があるのであれば、今使うことも選択肢に入れてはどうかという提案をしているのです。

稼いだお金を自由に使えるのは結婚するまで

さらにもう一つ、自己資本にお金を使うという観点でも20代からiDeCoを利用するのは、あまりオススメしません。

あなたは自分という労働資本を持った資本家でもあります。あなたの労働でお金を生み出した資金をどう使うかは資本家であるあなたが決めるわけです。

投資をする場合、株式のインデックスを買うのか、自分に投資してさらに稼ぐ能力を磨くのかという2択です。リカレント教育という言葉があるとおり、近年ではいくつになっても学ぶことが重要な時代において、20代から自分にお金を使えないのは少し残念なことです。

労働人口が減るのに、移民を受け入れない日本人は老齢者になっても働き続けるというのがメインシナリオでしょう。長く働く人生において人的資本を高めて苦痛の少ない仕事を手にすることも幸福な人生において重要な要素ではないでしょうか。

またiDeCoで選択できる投資信託はインデックスファンドが中心です。インデックス投資では長く続けて投資資産が2倍になる程度です。ちなみに72を利回りで割ると2倍になる年数がわかります。

利回りが6%なら12年ということです。株式の実質リターンはおおよそ5〜6%と言われているので、どれだけリスクを取ってもiDeCoでは限界があります。これがインデックス投資が「入金力ゲーム」と言われる理由です。

言い換えると若いときに稼ぐ力を増やして、入金力を上げてから投資すればいいということです。

また時間は有限ですので、どれだけ自己投資をしたくても時間が足りなくなってきます。そうなると、自分に使えない資金は金融資本への投資に回っていきます。

あなたが結婚や子供を望んでいる場合、将来的にあなたが稼ぐお金はあなただけのものではなくなっていきます。自分の人生を振り返っても、自分の稼いだお金を誰の目も気にすることなく使えたのは結婚するまででした。

まとめると、
「若い時は経験に使った方がお金から得る効用が大きい」
「自由に使えるのは結婚まで」
という2点から、20代からiDeCoをすることをオススメしません。


iDeCoは一度拠出すると原則60歳までは引き出しができません。とりあえず貯蓄する、とりあえず投資をするというのは、とても立派で(簡単な)選択ですが、それが自分の人生において良き選択かどうかはまた別物です。

もし、あなたが20代、30代前半なら60歳までお金を引き出せないiDeCoを本当に今から始めるべきか慎重に考えるべきでしょう。

文/井上ヨウスケ

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