2022年9月、紀平梨花(20歳、トヨタ自動車)は中部選手権で復帰することになった。全日本選手権に向け、1年半ぶりの実戦となる。10月には、ジャパンオープンの参戦も決まっている。
「チャレンジしているところを見てもらえるように頑張りたい」
紀平は気丈に意気込みを語っている。反撃の狼煙を上げられるか――。
2018-19シーズンに16歳でシニア転向した後、紀平は目覚ましい躍進を遂げてた。いきなりグランプリシリーズ(GP)で2連勝。グランプリファイナルでも難易度の高いジャンプを次々に決め、ソチ五輪女王、アリーナ・ザギトワを破って優勝した。
デビューシーズンでの戴冠は、浅田真央以来の快挙だ。以降もその勢いは止まず。四大陸選手権、全日本選手権で連覇を成し遂げている。
「北京五輪に向け、ロシア勢に太刀打ちできるのは紀平しかない」
そうした意見が多数を占めた。得意のトリプルアクセルは、世界を制する強力な武器で、成功率の高さは瞠目に値した。大技があることで、ショートプログラム(SP)で失敗しても、フリースケーティング(FS)では一気に巻き返すことができたし、二つが揃った時は無敵だった。
そして2020年の全日本ではSPで首位に立った後、FSでは2002年の安藤美姫以来となる4回転サルコウを成功させ、他を寄せ付けずに1位になった。合計スコア、234.24点は断トツ。2位の坂本花織を10点以上も引き離しての優勝だった。
ところが2021-22シーズン、右距骨疲労骨折で安静を余儀なくされる。肉体は悲鳴を上げていたのだ。治療に専念することになり、ほぼ内定していた北京五輪出場も逃すことになった。
五輪シーズン、運命は急転した。だがその紀平が、いよいよ戻ってくる。