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78歳のカトリーヌ・ドヌーヴ。65年のキャリアを経てなお輝く驚異的な美しさをプレイバック

集英社オンライン / 2022年9月27日 16時1分

10代から活動を始め、今年でキャリア65年。78歳になった今も第一線で活躍し、フランス映画界の至宝と呼ばれるカトリーヌ・ドヌーヴの足跡を振り返る。

新作映画は『愛する人に伝える言葉』

カトリーヌ・ドヌーヴという女優にどのようなイメージを持っているだろうか? 最近だと、是枝博和監督の『真実』(2019)で、彼女自身を彷彿とさせるフランスの国民的大女優とその娘(ジュリエット・ビノシュ)との間の長年の確執を軸に、常に観客の求める“大女優”像を私生活でも演じ続ける女性という難役に扮して話題となった。

『愛する人に伝える言葉』でブノワ・マジメル演じる息子の母を演じた
© Photo 2021 : Laurent CHAMPOUSSIN - LES FILMS DU KIOSQUE


そのドヌーヴが、新作『愛する人に伝える言葉』(2021)でまたしても素晴らしい演技を披露し、伝説に新たなる1ページを書き加えた。

ドヌーヴの役どころは、息子(ブノワ・マジメル)を愛するがあまり、妊娠していたその恋人を捨てさせた過去がある母親。演劇講師として独身を貫いている息子は、母に複雑な感情を持ち続けてきたが、母は息子の人生にとって最善の選択をアシストしたと信じている。

『愛する人に伝える言葉』
© Photo 2021 : Laurent CHAMPOUSSIN - LES FILMS DU KIOSQUE

だが、息子が癌で余命いくばくもないことがわかったとき、母は自分のしたことが、息子を失いたくないためのエゴに過ぎなかったのではないかと自問する。

こういう複雑な感情を持ち、子どもを支配しようとする母親役は、前作『真実』での役とも繫がる。そういった心の機微を説得力を持って演じ切ることができるのは、まさにドヌーヴ自身が女優として、女性として積み重ねてきた65年に及ぶキャリアがあってこその到達点だろう。

年齢に応じた女性の魅力を演じるヨーロッパ女優

女性の年齢のことをとやかく言うのは失礼ではあるが、78歳のドヌーヴのこの美しさはやはり驚異的。彼女は10代で映画デビューし、1960年代から第一線で活躍してきた。1972年創刊の「ロードショー」の表紙を飾ったのはドヌーヴなのだが、その彼女が今日もなお第一線にいるのは改めてスゴイのひと言に尽きる。

ドヌーヴが表紙を飾った1972年の「ロードショー」創刊号
©ロードショー創刊号/集英社

概して、ヨーロッパの女優たちは『愛、アムール』(2012)のエマニュエル・リヴァや『さざなみ』(2015)のシャーロット・ランプリング、『男と女 人生最良の日々』(2019)のアヌーク・エーメの例を挙げるまでもなく、中年になり、老齢になってもなお、その年代をナチュラルに体現した女性として映画に出続ける人が多く、それはヨーロッパ映画界や観客がそれを当然と考えているからに思える。つまりは、大人の観客がいるということ。一方、若さ至上主義の傾向があるハリウッドでは、女優たちのキャリアの命は短く、35歳ともなるとほぼ役はなくなると言っていい。

『昼顔』(1967)
Everett Collection/アフロ

ドヌーヴのスゴイところは、ハリウッド的な整形美人ではなく、ほぼ素のままで美しさを保っている点。もちろん、『昼顔』(1967)などに出演していた20代の頃よりはややふっくらとし、(失礼ながら)おなかのお肉もついているような印象はあるものの、ハリウッドの女優たちにしばしば見られるような大幅な経年劣化は起こさず、その反動としてのサイボーグのような人工的な若さでもなく、年齢に見合った美しさの中でトップを保っているところが肝なのだ。

1970年代から彼女の主演作を見続けてきて思うこと

『リスボン特急』(1972)
Album/アフロ

筆者は1970年代から、ずっと彼女の主な主演作をリアルタイムで見続けてきているが、最初に映画館で見たのは1972年の『リスボン特急』だった。そのとき彼女は28歳だったはずで、まだこちらが子どもだったこともあるが、きれいなお姉さんという印象だった。その後も、その時代時代の彼女を見るたびに、同じように思ってきた。たとえば1980年の『終電車』や1992年の『インドシナ』のときも、「いつだって美しさをキープしていてスゴイな」と思ったものだ。

『インドシナ』(1992)
AFLO

一度だけ、1997年に来日した彼女に会ったことがある。そのときは、たぶんダニエル・オートゥイユと共演した『夜の子供たち』(1996)の公開に合わせての来日だったと思う。記者会見と、フランス大使館でのパーティで間近に接した。

記者会見で「いつまでもお美しい秘訣は何なのでしょうか?」と聞かれた彼女は、次のように即答した。

「答えはふたつあります。ひとつは、お水をたくさん飲むことです。私はいつでもミネラルウォーターをたくさん飲んでいます。もうひとつは、常にだれかに恋をしていることですね」

もちろん、この答えに会場はわっとどよめいた。すると、その反応を見越したように、彼女はこう続けた「私が今、恋している男性が誰なのか教えてあげましょう。それは私の孫です(笑)」

『夜の子供たち』(1996)
AFLO

映画監督ロジェ・ヴァディムとの間にもうけた息子クリスチャン・ヴァディム、イタリア人俳優マルチェロ・マストロヤンニとの間にもうけた娘キアラ・マストロヤンニにはそれぞれ子どもがいるため、プライベートではドヌーヴも孫がいるおばあちゃん。この茶目っ気たっぷりの答えには、本当に大女優の風格というか、余裕が感じられた。

78歳の今も第一線で活躍できているのは、単にその美しさだけでなく、当意即妙なやりとりができる頭の良さとセンスも関係しているはずだ。

現在は『La Tortue』(2023)を撮影中で、アンドレア・ライズボローやモーガン・セイラーと共演する『Funny Birds』が撮影待機中。10月22日に79歳の誕生日を迎えるが、精力的に作品に出演し続ける彼女の伝説は、まだこれからも続きそうだ。

文/谷川建司

『愛する人に伝える言葉』(2021)De son vivant 上映時間:2時間2分/フランス


バンジャマン(ブノワ・マジメル)は膵臓がんを宣告され、母のクリスタル(カトリーヌ・ドヌーヴ)とともに、名医として知られるドクター・エデを訪れる。彼に一縷の希望を託す母子だったが、ステージ4の膵臓がんは治せないと率直に告げられる。ショックのあまり自暴自棄になるバンジャマン。一方、母親のクリスタルは、息子が「不当な病」になったのは、自分のせいではないかという罪悪感に駆られる。

10 月 7 日(金) 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座 他、全国ロードショー
配給:ハーク/TMC/SDP
© Photo 2021 : Laurent CHAMPOUSSIN - LES FILMS DU KIOSQUE

公式サイト
https://hark3.com/aisuruhito/#modal

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