現在の50~60代の人々の多くは、企業において「働く管理職」であり、現場の仕事のほか、担当する仕事全体の段取りと部下の管理というふたつの責務を日々こなさなければなりません。現場の仕事では、自分がバリバリ働いていた40代のときと異なり、ときに体力・気力の低下を感じ、また現場人としての仕事や作業能力が低下していくという感覚と日々向き合っています。しかし、この世界で「やってきた」「がんばってきた」という仕事への自負心も強く、それらの低下を素直に認めようとはしないでしょう。あくまでも、「できる」自分に誇りを持って、日々仕事に励んでいます。このように、気持ちが若い、一見元気そうな、でもどこかで不安も併せ持つ中高年を集英社新書の新刊では「ヤング中高年」と呼んでいます。
ヤング中高年は、仕事上の管理業務について、昨今のブラック体質への批判にさらされ、その懸念から若いスタッフに対して安易に業務を押し付けるようなことができません。押し付ければそれだけの代償を払わないといけないことを重々承知しているからです。しかし、実際のところ、ヤング中高年は、部下からパワハラと告発されないように自制しているだけで、さまざまなキャラクターを持つ若手部下に対してもどかしい思いも抱いています。彼らとどのように接していけばよいのかと悩みながら、言動や指導の方針が定まりません。また、飲み会の席やオフィスなどで彼らが自分をどのように見ているのかも気になります。上層部からは、自分の管理能力のなさを指摘する声もあり、上と下に挟まれた状態で苦悩が深まるばかりです。
ヤング中高年は、管理職として、言いたいこともストレートに言えず、キリキリした毎日を過ごさざるを得ません。世間では、人生100年時代、50、60代はまだまだ若いと言われていますが、この年代では体力・気力の低下だけでなく、こころを「病む」人が多くなっています。仕事への動機づけも高く、自分はまだ「できる」と感じている一方で、部下を持ち、難しい管理業務をこなさなければなりません。また、介護や家庭の問題、ローンなどの金銭的負担も伸し掛かり、公私ともにストレスを抱える人が増えています。