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一社員のアイデアから始まった人気スーパー銭湯「おふろの王様」が業界で生き残る意外な理由

集英社オンライン / 2022年10月8日 17時1分

空前のサウナブームの今、“ととのう”体験を求めてサウナ巡りをする人が増えている。こうした中で、スーパー銭湯の先駆けとしてサウナ・銭湯ブームを牽引してきたのが「おふろの王様」だ。温浴施設として20年以上愛されてきた人気の秘密はどこにあるのか? おふろの王様を運営する東京建物リゾートの代表取締役社長執行役員・加藤久利氏に話を訊いた。

一人の社員のアイデアから「おふろの王様」は始まった

「なくてはならない癒しの場」を掲げて、老舗スーパー銭湯・おふろの王様は1999年に1号店を板橋区光が丘にオープンさせた。

創業店舗である光が丘店は定期借地権満了のため2018年に閉店

これまで不動産事業を主軸にしていた、東京建物が温浴事業に参入したのは、「新規事業として立ち上げたことが経緯になっています」と加藤氏は言う。



「今から25年くらい前、東京建物本社のある東京・八重洲付近にあった健康ランドに、後輩社員と週2くらいのペースで通っていました。その頃はまだサウナブームなどはなく、銭湯が主流でしたが、後輩は先見の明があったのか、新規事業として温浴施設の運営を企画提案。それで採択されたのが今の『おふろの王様』の原点になっています」

東京建物は、日本最古の総合不動産会社として知られており、業界に先駆けて住宅の割賦販売や分譲マンションの開発を手がけてきた。常に新しいものを取り入れる進取の精神により、若い人材の意見を積極的に受け入れる企業風土が育まれてきたのだという。

一人の社員の思いから始まったおふろの王様だが、多店舗展開していくビジネスモデルではなく、地に足つけて出店する形態をとっている。もちろん、店舗数を増やせば増やすほど利益につながるわけだが、そうしないのは「地域特性に合わせ、しっかりとしたマーケット調査を行っているから」だと加藤氏は説明する。

「決まった店舗フォーマットを作り、それを横展開させていく金太郎飴型の経営ではなく、出店エリアの特徴や地域性、そこに住む人のニーズなどをしっかり捉え、案件の選定を行ってきました。当然、出店場所によって温浴施設に求められる需要は異なってきますので、1年間だけ儲かるような短絡的なやり方では長続きしません。

地域に根ざし、地元に住むお客様に何十年も受け入れられる店舗づくりが大事になるわけで、おふろの王様では時代に合わせて少しずつ新しいものを取り入れてきました。そういう意味では、おふろの王様は各店舗ごとに特色が分かれていて、ひとつとして同じような造りはしていないんです」

「お風呂」と「不動産」の意外な親和性

新規出店する物件情報は、グループシナジーを活かして連携しており、常に先を見据えた店舗の開発に取り組んでいるという。

不動産デペロッパーが温浴事業を継続的に行っているのは他に例がなく、東京建物では、「おふろの王様」を“キラーコンテンツ”のひとつとして使えると認識しているそうだ。

「新規出店時のエリアの選定も不動産と近しいところがあり、商圏人口の数や近隣に競合となりうる店舗がないこと、将来的な街の発展性があるか、どのような利用ニーズが考えられるかなど、エリアごとにポテンシャルが変わってきます。いわば温浴事業は不動産と非常に親和性のあるもので、補完し合えるような関係性を保てているからこそ、今でもおふろの王様が市場に残ることができている所以だと考えています」

現在、おふろの王様は首都圏を中心に10店舗展開している。

10種類以上の豊富なお風呂はもとより、エステやボディケアといったリラクゼーションや美味しい食が楽しめるレストランなど、幅広いサービスを享受できるのがユニークな点と言える。

メインダイニング王様の食卓@和光店

元来、お風呂や温泉好きの日本人をターゲットにしてきたが、さまざまなサービスを提供するようになったのは「美容や健康、そして人同士がふれあえる憩いの場を目指し、進化させてきた」と加藤氏は語る。

「第一世代は『入浴特化型施設』としてお風呂の湯種を豊富に揃え、さらには湯上り後の散髪や飲食のニーズに応えるために理髪店や食事処を設けてきました。そして、第二世代は『複合型施設』という形で、健康や美容のアプローチを強化し、店舗内にあかすりやタイ古式マッサージ、エステなどを取り入れていきました。また、この頃から天然温泉や岩盤浴にもこだわり、より多様なお客様に満足してもらえるよう企業努力を行ってきました」

「高濃度炭酸泉」も今やスーパー銭湯の定番

働きながら癒される新しい試みも…

そして第三世代は昨年12月にオープンした和光店を例に挙げる。「複合滞在型レジャー施設」を掲げ、サウナ好きや若年層のお客様などの新しいターゲットを見据えた店舗づくりになっている。

和光店の2階にある「かまくらうんじ」は当初、岩盤浴ゾーンの構想もあったそうだが、長時間滞在できるスペースを設け、ワーケーションやリモートワークでも使えて、癒されながら仕事をする空間にすることに決めた。

KamakuLounge(かまくらうんじ)

「SNS映えを意識したリラクゼーションラウンジ『かまくらうんじ』では、リモートワークや滞在型のレジャー体験といったトレンドを踏まえて作りました。加えて、本格的な天然温泉や複数のサウナを完備することで、 1日中いても飽きない楽しさを提供できるように心がけています。滞在型の近距離レジャー施設では、来店するお客様の滞在時間が長くなればなるほど、顧客満足度が高まります。利益向上も期待できると思っていて、今までのおふろの王様にはない新しい取り組みの店舗ではないでしょうか」(加藤氏)

座り疲れしないイスなど仕事しながら癒される空間を追求

1階のレストランエリアでは地産地消のメニューが味わえ、施設利用者以外の客も食事をすることが可能になっている。

レストランや宿泊業を手がける会社と協力し、売れ筋の動向を見ながらメニュー開発を行っていて、テイクアウトの弁当も近隣住民には好評を博しているそうだ。

こうした地域住民の交流を促し、新たなにぎわいの創出を狙った店舗は、ちょうどコロナ禍の真っ只中にオープンした手前、緩やかな立ち上がりとなったが、「最近は当初の想定通りの集客を見込めるようになってきた」と加藤氏は話す。

「和光店に関しては、コロナ禍に開業したこともあり、なかなかプロモーションを行えていませんでしたが、ようやく集客面に関しては計画通りの推移となっています。しかし嬉しい誤算もありまして、次の問題として浮上したのが『人気が出すぎて、本来の目的である“癒し”や“リラクゼーション”の提供に影響をきたしかねない』という点です。

2階のかまくらうんじは‟ご褒美”をコンセプトにしたラウンジスペースで、ゆったりと寛げる空間になっていますが、おかげさまで好評のため休日は特に混雑してしまう時間帯もあり、十分にリラックスしていただけるようにさらに配慮していかなくてはならないと考えています。この点については次に越えるべき課題として、どう改善していくかを検討しています」

サウナカルチャーは、一過性のブームではなく、文化に昇華していくと話す加藤氏。幅広い層に楽しまれる「複合滞在型レジャー施設」として、これからの「おふろの王様」から目が離せない。

取材・文/古田島大介

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