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ウッド・アイアン・オイルのトリプルショックで「未完成住宅」トラブルが急増中!

集英社オンライン / 2022年10月1日 17時1分

新型コロナウイルスやウクライナ危機による影響で、食品や日用品、電気代などの値上がりが続く昨今だが、住宅価格も例外ではない。ウッドショック・アイアンショック・オイルショックのトリプルパンチで住宅建材の値上げ・品薄が続いており、それに伴ってトラブルも発生している。

注文住宅の購入者や、中古マンションを購入してリノベーションを考えている人にとっては、建材高騰に伴う住宅価格の値上がりだけでも大変だ。それに加えて、建材や設備がなかなか入荷されないために住宅が未完成のまま購入者に引き渡され、さらに建材到着後の工事でも水漏れなどのトラブルが起きるといったケースが増えているという。

住宅の建設現場で、今何が起きているのか。そして、「住宅」という一生に一度の大きな買い物で、建材・設備価格の状況を把握しながら支出を抑え、トラブルに巻き込まれないためにはどうすべきなのか。住宅診断士の田村啓氏に聞いた。


給湯器や食洗器は半年待ちになるケースも

まずは、住宅建材・設備といってもいろいろあるが、具体的にはどの部分がどの程度値上がりしているのか。

「ほぼすべての部分、といってもいい状況なのですが、建材だと木造住宅に使われる構造用合板(強度の高いベニヤ板)、設備だと半導体が使用されているトイレや給湯器、食洗器などが顕著です。値上がりしても手に入るならまだいいのですが、給湯器や食洗器などは納品まで半年以上待たなければいけないようなケースもあります。こうした各建材・設備の値上がりによって、建物代全体で約2~3割は上昇している状況です。価格上昇前の建物代が2000万円とすると、400~600万円程度の値上がりということになります」(田村氏)

現在は施工会社が値上がりした分を負担して住宅購入者への値上げ幅を抑えているケースが多いが、それも限界となれば今後はさらなる値上がりが見込まれるという。見積もりの段階では予算内だったのに、着工までの間に建材が値上がりして予算オーバーになる、といったケースも少なくないため、予算ギリギリで進めているとローンの返済計画が狂ってしまったり、建材のグレードダウンが必要となる場合もある。

「未完成引き渡し」によって水漏れトラブル!?

さらに、希望していた食洗器やトイレ、照明器具などの入荷が間に合わず、やむを得ず未完成のまま住宅引き渡しを行い、入荷次第設置する「未完成引き渡し」によるトラブルも発生している。

「たとえば食洗器や床暖房などを後から設置し、最初は問題なく使えていたものが、しばらく経ってから水漏れが発覚するといったケースが起きています。住宅引き渡し前は、特に水回りは不具合がないように何度も水を流して、現場監督が入念にチェックをするものです。しかし引き渡し後の場合は、取り付けて一度動作を確認して問題なければOKというような簡易的なチェックにならざるをえないことが多く、現場監督が立ち合えないこともあるため、トラブルが起こりやすいのです」(田村氏)

画像提供:田村啓氏

完成まで引き渡しを待てばトラブルは防げるかと思えば、引き渡し日程がずれることでまた別の問題が生じてくる。

「引っ越し時期がずれることで、仮住まいの家賃などの金銭的負担はもちろん、引っ越し準備の仕切り直し、お子さんの転校手続きの調整など、さまざまな手間が発生してしまいます。こうした手間を考えると、一部未完成でも引っ越しを済ませてしまおうと考える方が多いのです」(田村氏)

建材の品番までチェックして、トラブルに備えた覚書を作る

こうした、建材の不足・値上がりによって起きるトラブルを避けるためにはどんな対策を講じるべきなのか。

「値上がりや完成遅延の可能性を考えて、予算とスケジュールに余裕を持つこと、施工会社とコミュニケーションをしっかり取ってコストとスケジュールを常に共有することですね。

打ち合わせで各箇所に使う建材を決めて契約に至るわけですが、各建材の品番までしっかりチェックしておいて、値上がりの際にはどんぶり勘定ではなく建材ごとにいくら値上がりしたのか比較表を提出してもらいましょう。予算の調整が必要な場合はどこを削るべきか検討しやすくなりますし、費用を抑えるために施主に黙って建材のグレードを下げる『ステルス値上げ』を防ぐこともできます。

スケジュールについても、工程表を随時共有して、遅れそうな場合は早めに教えてもらいましょう。また、引き渡しが遅れた場合の遅延損害金や、水漏れなどのトラブルが起きた場合についての覚書を最初に作っておくことをおすすめします」(田村氏)

施工会社とコミュニケーションをとる際には高圧的にならないように注意したい。

「施工会社の怠慢ではなく、世界的な建材不足・値上がりが原因なわけですから、『最初の見積もりと話が違う! 見積もり通りの値段でやるべきだ!』『遅れたのはそちらの責任なんだから、遅延によって発生した費用は施工会社が全部払うべきだ!』などと高圧的な『べき論』で対応してはいけません」(田村氏)

不可抗力のトラブルは施工会社ではなく施主の責任

ギリギリの状況でやっている施工会社も多い中、その事情を鑑みない高圧的な態度を取られたら、施工会社も「われわれにそんな義務はない」と態度を硬化させてしまう可能性があるからだ。

「そもそも住宅建設において起こる不可抗力のトラブルは請負工事をしている企業だけでなく、施主の責任でもあり、『べき論』で高圧的に話しても施主である自分の首を絞めるだけです。情報を共有し、遅延損害金の覚書を作成しておくなどの準備は大事ですし、水漏れのようなトラブルは施工会社の責任なのでしかるべき対応を求めるべきです。
しかし、不可抗力の値上げや遅延については、『予算は増やせないのですが、設備を削ったり材料を変えても影響が大きくない部分はありますか?』『引っ越しが遅れることで仮住まいの家賃がこれくらい余計にかかってしまうのですが、ある程度負担をお願いすることは可能でしょうか?』と対等な立場で遠慮はせずとも配慮をして相談したほうが、施工会社も柔軟に対応してくれると思いますよ」

予算に余裕を持たせるために、後回しにしても大きな影響がない箇所を見極めることも大事だ。

「庭の植栽やウッドデッキなどのエクステリアや、テーブルやソファなどの家具は、後からゆっくり整えていっても問題のない部分。エクステリアと大物の家具分で人によっては200万円以上の支出が抑えられます。予算に余裕がない場合は、やみくもに建材をグレードダウンするよりも、生活に大きな影響のない部分は一旦保留することも検討しましょう」

まだまだ続く世界的な物価高。注文住宅の購入やリノベーションを検討している人は、思わぬトラブルに巻き込まれないよう、市況を把握しつつ、余裕ある予算とスケジュールを組み立てていこう。

取材・文/田中三呂

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