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「戦う女性がもっと増えてほしい」注目のスタントパフォーマー・伊澤彩織28歳

集英社オンライン / 2022年10月9日 12時1分

10月14日公開の映画『オカムロさん』で武術の達人・綾子を演じた伊澤彩織。映画『キングダム』(2019)、『るろうに剣心 最終章 The Final / The Beginning』(2021)でメインキャストのスタントダブルを演じる日本では数少ない女性スタントパフォーマーだ。近年は、インディペンデント映画ながら半年以上のロングランを記録した『ベイビーわるきゅーれ』(2021)で主演を務めるなど、女優としても注目を集めている。

首が飛ぶ刺激的な映画だけど、ギャグ映画!?

――伊澤さんの最新出演作『オカムロさん』はホラー映画になりました。

実はホラー映画を見るのが苦手なんです。ただ、前にアクション部として清水崇監督の『樹海村』に参加したことがあって、そこがすごく和やかな現場だったんですよね。「ホラー映画を作るのはこんなに楽しいんだ〜」というワンクッションがあってから臨めたのでよかったです(笑)



――松野友喜人監督とは、同じ日本大学芸術学部映画学科の出身ですよね。

そうなんです。あと、共演した内田(寛崇)君も、同じ学校の同じコースの後輩で、現場に日芸の人たちがいっぱいいたのも印象深かったです。でも、松野さんが卒業制作で撮った『全身犯罪者』(『カナザワ映画祭2021』観客賞を受賞)のレベルが高すぎて、年下とか後輩っていう意識はあまりなかったですね。

松野友喜人監督・主演の『全身犯罪者』

『オカムロさん』ももちろんですけど、私は『全身犯罪者』をいろんな人に観てほしいんですよ。私はこれを観て松野さんのファンになっていたから、あの『全身犯罪者』の松野さんの作品に出られるということが、すごく嬉しかったんです。

――『オカムロさん』の脚本を読んだときの第一印象はどうでしたか?

首が飛ぶような刺激的な映画ですけど、なんというか……「あ、これはギャグ映画だ」って。親しみのあるホラーというのかな(笑)。私の母は血が苦手なので見れないかもな〜、とも思いました。私はスプラッター系も大丈夫なので、『オカムロさん』は楽しんで見れました。

スタントパフォーマーという栄光なき強者たち

――スプラッター系のバイオレンスホラーが好きな人にとってはまさに王道といえる爽快感のある映画だと思いました。アクションをするにあたって、作品ジャンルによる違いはあるのでしょうか?

ホラー作品の方が、スタントを思い切ってやれる印象はあります。日常生活の中でアクションをするときは「なんでアクションするのか」「なんでこの人は強いのか」と、キャラクターに対する疑問がときどき生まれるんです。でも、ホラーは、怪奇現象や超常現象という得体の知れなさがひとつあるので、逆にアクションに対する動機付けを取り払った状態でスタントそのものに思いっきり集中できるイメージがありますね。

――主演を務めた映画『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)もそうでしたが、最近は女性がアクションをする映画が増えている印象です。その流れをどう見ていますか?

すごく増えていると思いますし、「もっと増えてほしい!」と思いますね。本作のプロデューサーである千葉(善紀)さんは、昔から女性がアクションをする映画をたくさん作ってこられた方なので、もっともっと女性に戦わせてほしいです。

――やはり、アクション業界に女性は少ないですか。

比率で言ったら男性が9に女性が1くらいですね。でも、女性の方が練習してますよ。

例えば、多人数戦のアクションをやる時、中心になる人物の「芯(シン)」とやられ役の「絡み」に分かれるのですが、女性が「絡み」要員で呼ばれることは稀で、男性の方が現場に多く呼ばれています。女性は「芯」の限られた枠に入るために、まず自分の存在を知ってもらわないといけない。

だから自分ができることを増やすために常に練習している感じです。

私も仕事がない時は、スタント仲間を集めてずっと練習してますね。3時間から5時間ぐらいミット打ちをしたり(笑)。ただ、同じように練習を積み重ねていても、スタントパフォーマーはアスリートではないと思っていて、あくまで作品の一部。現場で休憩の時にたばこを吸う人も多いですし、本当に職人の仕事だなって思いますね(笑)

スタントパフォーマーと女優の違い

――そもそも、どうしてスタントパフォーマーになろうと思ったんですか?

スタッフとして初めて撮影現場に行けたのがアクション部だったんですよ。もともとはとある撮影にサードカメラマンとして呼んでもらえることになってたんですけど、やっぱり経験がなさすぎるからダメになってしまって。しょんぼりしているところに、「だったら、アクション部くる?」と誘われたのがきっかけです。本当に人のご縁でアクションの道に引き込まれていって、いまに至っています。

――伊澤さんはスタントパフォーマーでありながら、女優としても活動をしています。それぞれの立場で現場に入るときの違いはありますか?

アクション部で入るときは、他の演者さんの安全面のサポートに気を配るのも仕事なので、自分の動きだけというわけにはいかないんですが、役者で入ったときは安全面のサポートなどはアクション部に任せて、自分は役に入って感情を探すことに集中できるので、その違いは感じます。

ただ、プレイヤーとしてカメラの前に立ち、そのときの自分の全力を出すという意味で、根本は一緒だなと最近は思うようになりました。顔が映るか、映らないかくらいしか違いはないかもしれないです。

日本のアクション業界は超ハイレベル

――いまの日本のアクション業界の現状について、その中で自分がどんな役割を担っていきたいか教えてください。

アクションをやるようになって8年が経ちましたが、先輩たちが現場づくりを頑張ってきてくれたから、アクション部の地位も向上してるし、現場も増えていると思うんです。ただ、その増えた現場に対して、人手と予算が少ないとか、若手が伸びていないという部分もあって。私がアクション部に拾われた時のように、まだアクションのことを知らない人たちも巻き込んでいきたいです。

世界的にも、日本のアクションのレベルってすごく高いと思うんです。動ける人もたくさんいるし、スタッフワークも優秀なので、より良い現場を作るための貢献もしたいです。音楽やお笑い、デザインなど他の文化ともどんどん融合して、もっと面白い景色が見たい。「日本のアクション文化って最高だね」って思わせられるような人になりたいです。

――『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(2021年)など、ハリウッド映画にも参加しましたが、海外での活動も広げていきたいと考えていますか?

アクションは非言語コミュニケーションなので、いろんな国の方とアクションをしてみたいですね。国によって体の使い方とかリズムも違うから非常に興味深いです。だけど、まずは日本のアクション映画で主役のスタントダブルをしっかりやりたいです。スタントパフォーマーを名乗ってはいるけど、主役のスタントをちゃんと経験していなければ意味がないなと思ってるので、ひとまずはそれがいまの目標です。

取材・文/森野広明 撮影/南 阿沙美

『オカムロさん』(2022) 上映時間:1時間13分/日本
2022年10月14日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
配給:エクストリーム
© 2022 REMOW
公式サイト:https://okamurosan.com

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