1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

時を忘れて遊んだわが青春の「スーパーカー消しゴム」は今も手に入るのか?

集英社オンライン / 2022年10月5日 11時1分

私の子どもの頃の記憶に、欠かせないアイテムがある。それは「スーパーカー消しゴム」だ。単なるクルマの形をした消しゴムなのだが、ミニカーがおもちゃ屋でしかお目にかかれない高嶺の花だったのに対し、駄菓子屋で買えたこのクルマは、私の遊び時間の相棒だった。毎日のように夢中になっていた、当時の遊びを紹介する。

通称「クルケシ」遊びの思い出

駄菓子屋に行き、なけなしのお小遣いで買った「スーパーカー消しゴム」。“クルマの形をした消しゴム”だから、通称「クルケシ」。これでいろいろなことをして遊んだ。

車種はスカイライン、セリカ、フェアレディZなどまさしくスーパーカー揃いだ

クルケシをボールペンノックのバネの反動で弾いてその移動距離を競う、というのが最も一般的な遊び方だったということを、実は私はおとなになってから知った。というのも私と、クルケシ友達だったKくん、Tくんの三人がやっていたのは、別の遊び方だったからだ。



弾いて遊ぶのは同じだが、私たちのは、親指と中指で弾く「おはじきメソッド」だったのだ。このやり方で独自のルールをつくり、競っていたのだが、今回はその遊び方を紹介したいと思う。

① クルケシレース

最初に紹介するのは野外で行うレース形式の遊びだ。少し柔らかい土の地面があればどこでもできた。まず、つま先で地面に溝を作ってコースを作る。片足を引きずりながら移動する感じだ。その溝の内側をコースとし、クルケシを指で弾いて移動させる。一番先にゴールした人が勝ちだ。

コースアウトしたらクルケシを元の位置に戻し、次の番を待つ。手堅く、距離を刻んでいってもいいし、イチかバチか、力いっぱい弾いて距離を稼ぐ方法もある。カーブではリスクを背負って大逆転のショートカットを狙うのもアリだ。指の力の強弱だけでなく精度も必要で、駆け引きも多かった。

平日はもちろん、学校が休みの日は、全長何十メートルというコースで大レースを開いた。特に工事などで一時的に盛り土になっている場所は、起伏に富んだ難しいコースができて最高だった。

アスファルトの路地で、チョーク書きのコースを作ることもできるが、そこには排水口のようなトラップも多いので、基本的には広場や公園の砂場が定番の会場だった。当時流行っていたマンガ『よろしくメカドック』に習って"キャノンボール"などのレース名をつけたりして遊んだものだ。

② クルケシサッカー

こちらは室内の遊びだ。クルケシをボールに見立てて蹴る、ということでは、もちろんない。
タタミ1畳をサッカーコートに見立て、そこにお気に入りの11台のクルケシをフォーメーション配置する。ボールは小さめのビー玉で、これをクルケシにキックさせるのだ。

ビー玉をクルケシの右後輪脇に置き、クルケシの左後輪を指で弾くことで、間接的にクルケシにビー玉を蹴飛ばさせるスタイルだ。ゴールはお菓子の箱などを切り取って作る。
これを交互に行うことで、相手のゴールにビー玉を入れたら1得点。しかしゴールの前にはキーパーをはじめ、配置したクルケシが障害となってそれを阻むので簡単にはいかない。

また、ビー玉の最寄りのクルケシにしかキック権がないので、キックさせやすい形状の車種を選んでどこに配するかも重要だ。コートアウトしたらスローインやコーナーキックとして、相手にニ度のビー玉運びのチャンスが与えられる。

敵クルケシにわざとビー玉を跳ね返させてコートアウトさせ、スローインチャンスを得てゴールに近づけるなどという高等テクニックもあった。壁のないビリヤードと考えてもらうとわかりやすい。こちらは『キャプテン翼』にちなんだチーム名や必殺シュートを充てて、燃えたものだ。

クルケシをネットオークションで落札

こうしてあらためて思い出してみると、大して知恵がはたらくわけでもなかった小学生の自分たちが、よくこんなルールを考え、秩序あるゲームを編み出していたな、と我ながら感心する。試行錯誤を繰り返して研ぎ澄ました、紛れもない「僕らのクルマ遊び」だった。

クルケシの改造は暗黙的に禁止されていたが、車体の底面に合わせてタイヤの下半分をカッターで切り取るという方法だけは許可されていた。

これにより、たとえばレースにおいては、スピンさせるように弾いてコースアウトしにくい安定した水平移動が可能になるが、反面、立体的に弾きにくいのでショートカットが制限されたりと、機能のトレードオフを迫られた。元に戻せないので慎重な判断が必要とされる。今、考えても実に奥が深いではないか。

晴れた日は外でクルケシレース。
雨の日は室内でクルケシサッカー。

男子が大好きなスーパーカーの形をした、たかが消しゴムは、私たちが小学生だった数年という時間を豊かにしてくれた。だが、その後中学生になって放課後は部活動に勤しむように。クルケシをぎっしりと集めた箱を開くこともなくなり、いつしかその箱がどこにいったのかもわからなくなった。

気づけば、実物のクルマを求める歳になって、更に時が経ち、今はクルケシのコラムを書いている。人生は実に不思議だ。

そういえば何年か前、今は名古屋に住むKくんから「クルケシ、どっかで手に入らないか?」と電話があった。二人の息子に与え、一緒に遊びたいのだと言う。知り合いの駄菓子屋に聞いても手に入れる方法が見つからなかったので、今回はネットオークションで購入した。

4個詰め(当時価格20円)が45袋入った1箱が10000円ほどだったので、価格は当時のおよそ11倍。箱にNo50と明記されていることから、50シリーズは展開されているようだ。

1袋4個詰めで1シリーズ全12種類。僕は6袋(24個)でコンプリートできた

今回、入手したクルケシは、Kくんが、彼の息子たちと、新たなクルケシ遊びができるように送ってあげようと思う。

駄菓子のコラムを書いていて思うのは、駄菓子屋で売られていたモノたちは、子ども時代の記憶の引き出しを開ける鍵となるだけでなく、こうして読者の皆さんとそれぞれの思い出を共有し、自分のこどもに伝える手段にもなってくれているんだ、ということ。

クルケシは、ネットで売買されていたり、ちょっと高いけど復刻版製品がリリースされていたりするので、これを読んで懐かしいと思ったら、ぜひもう一度手に取って欲しい。


文・写真・イラスト/柴山ヒデアキ

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください