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長野の山奥で迷い込んだ戦慄の「心霊山小屋」 一夜を明かした登山者を襲った血も凍る怪奇現象とは?

集英社オンライン / 2022年10月8日 17時1分

アウトドア技術を駆使して一般人が行けない秘境にある心霊スポットを調査する〈ホラー探検隊〉。今回は、遭難者の遺体一時安置所としても使用されていた空木平(うつぎだいら)避難小屋。数々の心霊譚が囁かれる「呪われし山小屋」で隊員たちが体験したものとは……

嵐のなか不気味な山小屋に避難

一晩を過ごすことに決めた空木平避難小屋。日が暮れるにつれ雨は強まり、雨音と風で扉が動く音も大きくなっていった

2022年8月某日、私たちは長野県のほぼ真ん中を南北に貫く中央アルプスの一座・空木岳を登山していた。一帯の山々を見渡せる眺望やハイマツに覆われた斜面にところどころ白い岩肌が覗く山容が見事で、日本百名山にも選出されている名峰だ。



我々は朝7時に駒ヶ根高原スキー場を出発し、ゆっくりと休み休み登っていた。途中に大地獄、小地獄というスリル満点の崖地もあり登山を楽しんでいたのだが、途中から雲行が怪しくなった。

空木岳の道中には「大地獄」「小地獄」という岩場も。鎖がついているとはいえ、慎重に進んだ

最初はぽつぽつと表面を濡らす程度の小雨だったのだが、やがてだんだんと雨粒が大きくかつ激しくなっていき、次第に嵐の様相を呈していた。登山用の雨具を着ていてもここまで激しいと身体が濡れて冷えてしまう。山頂までもう少しだったので、寒さに耐えながら登っていたものの、体力の限界も近い。

すると、数メートル先も見通せないほどに雨粒が煙るなか、一軒の建物が浮かびあがってきた。山小屋である。雨宿りができるだろう。だが、真っ白い霧のなかに佇むそのシルエットは、まるで西洋のホラー映画のようで不気味だ。

陰鬱な雰囲気も当然。じつはこの小屋、いわくつきの心霊スポットなのだ。そのことを知っていた私は入るのに尻込みしていたのだが、雨風はどんどん強くなるばかり。仕方なく私たちはこの山小屋で雨宿りすることにした。その夜、恐怖に戦慄することも知りもせずに……。

空木平避難小屋前の掲示。本来はここから山頂が見渡せるはずが、たどり着いた頃は霧と雨で、ほとんど視界も無かった

日本屈指の心霊小屋

登山道道中にある慰霊碑。複数見かけたことから、事故の多い山域だったことがうかがえる。手を合わせて先に進んだ

逃げ込んだ山小屋は、空木平避難小屋という無人の山小屋である。かつては汚いボロ小屋であったらしいが、2003年に改築工事が施され、現在は地元・駒ヶ根市が管理しておりトイレも設置されている。近くの沢には水も流れており、補給も可能。また、晴れた日には空木岳の山容が眼前に迫るようにそびえ、反対側を見れば南アルプスの山容まで一望できる素晴らしい立地だ。

このきれいで整った小屋が心霊スポットだといわれてもイメージが湧きづらいが、そのレベルは中央アルプス随一、いやもしかすると日本屈指の心霊現象が多発する小屋かもしれないのだ。というのも、ここはかつて山岳事故による遭難者の遺体一時安置所として使用されていた過去があるのだ。

なんでも昭和30年代より前の話だが、遺体を安置するだけでなく小屋の前で火葬して一時的に埋めていたこともあるらしい。墓穴が浅く、後日になって白骨が剝き出し状態で覗いていたという逸話も伝わっている。そうした陰惨な過去があるからか、この小屋における心霊体験談は枚挙にいとまがない。たとえば——

夜、明かりを消して就寝しようとした直後に誰もいないはずの床板が「ミシッ……」と軋みだしたことからはじまって、小屋の至るところから「パキン!」「ドンドン!」と何者かが鳴らすような怪音が一晩じゅう聞こえてきた、なんて体験談もネット上にある。

また、山岳救助活動に携わった木下寿男氏が著した書籍『山の軍曹 カールを駆ける 中央アルプス遭難救助の五十年』(山と渓谷社/2002年3月)においても、空木平避難小屋での心霊体験が記されている。該当箇所を部分的に引用させていただきたい。

「静寂のなか、涸れ沢の下のほうからチリーン、チリーンという鈴の音が響いてきた。(中略)ズッ、ズッという足音も聞こえてきた。その足音は石室の前まできて、とうとう石室の屋根を登り始めた。屋根を踏む音がビシッ、ビシッと石室の中に響いてきた」

「ウサギは前の涸れ沢を超えて、対岸の草地のお花畑に逃げ込んだ。ふとそこを見ると、ウサギが逃げ込んだところにスーッと亡霊が立っていた。それは陽炎のようにボーっとしていて、透き通って見えた」

「戸を閉めようとして、なにげなく外を見たときに、私はギョッとしてその場に凍りついてしまった。外の漆黒の闇のなかに、人間の頭蓋骨が白くボーっと浮かび上がっていたからだ」

——謎の怪音に加え、透き通る亡霊、そして頭蓋骨までも目撃するとは恐ろしい。これだけでも相当な体験数だが、同書には、就寝中に幽霊に襲われるなどほかにもエピソードが収録されているので、是非ご一読をお薦めする。
(参考: https://www.amazon.co.jp/dp/4635140024

避難小屋前の草地。花も多く、亡霊が立っていたという逸話はこの場所だろうか。軒下でボーッと雨宿りをしていると、見てはいけないものが出てくる気がして小屋の寝袋に戻った

人ならざる者のノック音

避難小屋の中。2003年に改装されたという。余計な予備知識がなければかなり綺麗で、身を寄せやすい避難小屋だ

この日本屈指の心霊山小屋に、偶然にも避難することになった私たちだが、もちろん長居するつもりなどない。夜になれば幽霊に出くわすかもしれないからだ。ゆるいピクニック登山のつもりだったのに、心霊スポットで一夜を明かすなんてまっぴらごめんだった。

しかし、外は依然として激しい暴風雨が続いており、日が暮れかけている頃も全然止む気配がない。小屋の“いわく”に怯えていたが、土砂降りのなか歩く元気も残っていないし、やはり背に腹は代えられない。私たちは仕方なくこの心霊山小屋に宿泊することにした。

午後8時前、軽めの夕食を済ませた私たちは、早くも就寝準備をしていた。することもないし、怖い思いをする前に寝てしまうに限ると思ったからだ。全員がヘッドライトを消すと、周囲は漆黒に包まれて視覚は完全に役割を終えた。

いまだ外は嵐が続いており、小屋のトタン屋根や入り口の扉が激しい音を立てている。屋根は常に「バララララ」と大小さまざまな雨粒がぶつかる音を響かせており、激しい風によって扉も「ゴンッ! ゴンゴン…」とたびたび大きな音を鳴らしている。

視覚がきかないからか、聴覚のほうが敏感になったようでやたらと音が気になってしまい、なかなか眠ることができなかった。

数十分ほど経った頃だろうか。突然、扉が「コン、コン」と2回鳴った。ノックの音に聞こえ(ほかの登山者か?)と思ったが、誰も入ってこない。となれば、誰のノックというわけでもないのだろう。たんに風が扉を揺らして音が鳴ったのだ。たまたま軽い音で2回だけ鳴ったのがノック音に似ていただけ。

そう、ひとり納得したのだが——

その後も「コン、コン」が頻繁に聞こえてくることに気がついた。どうせ風の音だと思いつつも、明らかに頻度が増している。最初は「ゴンッ!」という鈍い音が聞こえるなかで、数十分に一度コンコンが混じる程度だったのが、気づけばコンコンばかりになった。

コンコン。10分後にまた、コンコン。今度は5分後にコンコン。たまたまノックのような音が混じるようになっただけだと思っていたが、それにしては“たまたま”が多くないか……。

私は真っ暗闇のなか、ひとり戦慄していた。いわくを思い出して変に怯えているだけだとわかりつつも、一度意識すると恐怖は拭いきれなくなる。気のせいだと私は自分に言い聞かせて無理やり就寝した。


翌朝、晴れ間も覗く穏やかな日和。昨夜の恐怖がまるで嘘だったかのよう。私は昨夜のコンコン音の原因を探るため、扉を調べた。試しに強めに押してみると「ゴンッ!」。そのあとに余韻が「ゴンゴン…」と続く。昨夜のはじめのほうに聞いた音だ。では、軽めの力で押してみると——

「ゴン、ゴン…」

あれ、コンコンにならない。どう押しても鈍い音しか出ないし、余韻も必ず入ってしまう。軽い音を出すべくいろんな強さで押してみたが、どれも鈍い音しか鳴らない。
諦めて最後に、中指の第二関節の背で扉を2回叩いてみた。

「コン、コン」

あ、きのうの音……。
指でノックしないと、この音は出せなかったのだ。では、昨晩の「コン、コン」は本物のノック音だったのだろうか。暴風雨のなか外にいた“誰か”が、一晩中ずっと扉を叩き続けていた、とでもいうのだろうか。それは果たして、人間だったのだろうか……。

少し重い引き戸の、空木平避難小屋の扉。一晩中続いた音は単なる風だったのだろうか、それとも…

文/成瀬魚交 写真/滝川大貴

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