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夫がいる家と奈良の実家。「意外と待てる女」尾野真千子が帰る、ふたつの場所

集英社オンライン / 2022年10月6日 12時1分

今年だけで5本の映画が公開され、肝っ玉母ちゃんから等身大の女性まで幅広い役を演じ分けている尾野真千子。16歳でデビューして25年。俳優として輝きを増す彼女の魅力に迫った。

映画『千夜、一夜』で演じた待つ女

--新作映画『千夜、一夜』(2022)では、2年前に失踪した夫を探す奈美役を演じられました。出演したいと思われた決め手は?

台本を読んだときに、すごく難しい話だなと思ったんです。エンタテインメント作品のように、パッと見てわかる話ではないし、なんなら地味(笑)。でも、そこが魅力でもあったし、やりがいがありそうだなと感じました。

2年間夫を待ち続ける奈美を演じた
©2022映画『千夜、一夜』製作委員会

--田中裕子さん演じる登美子も、30年間、失踪した夫を待つ女性として登場します。夫の無事を信じ続ける登美子と、新しい恋人ができ、夫との離婚を考え始める奈美。待つ女ふたりの思いに胸が締め付けられるようでした。



台本を読んでいるときは、奈美がすごく薄情な女に見えたんです。裕子さんが演じられた登美子が正解だと思うし、映画としても美しい。「ずっと待つのが女でしょ」みたいな思いが私にもありました。でも、よくよく考えてみると奈美の選択が一番現実的なんですよね。もし私が同じ状況になっても、奈美の生き方を選ぶかもしれないと思いました。ずっと待ち続けるって、やっぱり辛いから。

田中裕子(左)は30年間夫を待ち続ける登美子を演じた
©2022映画『千夜、一夜』製作委員会

--田中裕子さんとの共演はいかがでしたか?

いやあ、怖かったですね(笑)。なんていうのかな、恐怖の怖さとは違うんです。まとっているオーラが、心地いい怖さなんです。今日はどんな裕子さんが見られるんだろう、みたいに、撮影中はいつも楽しみで。ドキドキ、ワクワクする怖さでした。その怖さは、いつか私も持ちたいと思えるものでした。

--普段はどんな方なんですか?

すっごい大女優だけど、雰囲気としては親戚にいそうな感じのチャーミングな方。でも、やっぱり何かすごいものを持っているように見えるんです。内にあるものを全部は見せないというか、裕子さんなりに隠している部分はあると思います。それを少しだけチラリと見せてくれたり、聞かせてくれたりする瞬間もあるし、「あ、ここから立ち入っちゃいけない。違った、違った」となることもある。想像がつかない感じが、すごく魅力的でした。

--尾野さんには、誰かを待った印象的な思い出はありますか?

私はお父さん子だったので、小さい頃はお父さんの帰りが待ち遠しくて仕方がなかったです。仕事に行ったばかりのお父さんを追いかけたら、家の周りで迷子になったことがありました。でもね、それ以外にはあまり待った思い出ってないんです。

もちろん、俳優は“待つのが仕事”って言われるくらいだから、4〜5時間普通に現場で待つことがあるんです。でも、ものすごく寂しがり屋だから、現場に行っていろんな人の邪魔をして遊んでます(笑)。プライベートで誰かと約束をしても、会うのが楽しみすぎちゃって、いつも20〜30分前に現地に着いちゃうんです。だから待つのは結構平気。意外と待てる女かも。

俳優として、今が一番いい時期だと思う

--映画では、夫にとっての“帰る場所”が、果たして自分の所なのか自問する場面も。尾野さんにとっての帰る場所とは?

私の場合は、夫がいる家と奈良の実家ですね。夫も家族も、絶対に私の帰りを待っていてくれますから。待ってくれる人がいる場所が、帰る場所なのかもしれません。

--デビューして25年。精力的に作品に出演されていますが、これほど長く続けてこられた原動力は?

親が「次、◯◯に出るよ」という報告を楽しみに待ってくれているんですよね。事務所も事務所で、またいい作品を持ってきてくれるんです。いいものを見ちゃうと出演したくなるし、例え悔しい経験をしたとしても「次、見せてやろうじゃないの」みたいな気分になったり。まだ辞めるという方向には、気持ちが向かない。だから続けられている気がします。

--お芝居って、楽しいんですか?

楽しいですよ! なんかね、ハマるときがあるんですよ。例えばカッコつけたセリフとかがあると、「何言ってんだ? 私」みたいに一瞬恥ずかしくなって我に返ることもあるんです。でも、そんなキザなセリフがカチッと自分の中でハマるとすごく気持ちいいし、「カッケー」って思います。それに、「今の芝居は良かった」と褒められるとね、やっぱり嬉しいですしね。

--今回の映画にはありましたか?

夫をビンタするシーンは、気持ちよかったです。ただ、カットがかかった後は叩いたことに対する罪悪感が湧いてきて、すっごく謝りましたけどね。でも、本気でやらせてくれたことはありがたかったです。

--今年の11月で41歳になります。年齢や経験を重ねるごとに、求められる役柄も変化してきたと思います。今の年齢だからこそ感じる、お芝居の面白さは?

独身女性の役もできるし、結婚して子供がいる役もできる。若い役を演じるときも、自分の若い時代を知っているから「なんとなくこんな感じだったな」みたいに思い出すこともできる時期だと思っています。

もちろん、できなくなった役もありますよ。初々しい高校生なんてできないですし。でも、肝っ玉母ちゃんみたいに、無理なくできる役も新しく生まれました。子供たちに「おばさん」って言われる年齢になったし、ある一線を超えたなって感じます(笑)。だから、今が一番いい気がする。きっと、これから年齢を重ねてもずっと、同じことを言ってる気がしますけどね。

『千夜、一夜』(2022) 上映時間:2時間6分/日本

©2022映画『千夜、一夜』製作委員会

北の離島の美しい港町。登美⼦(田中裕子)の夫・諭が突然姿を消してから30年の時が経った。彼はなぜいなくなったのか。⽣きているのかどうか、それすらわからないなか、彼⼥は愛する⼈とのささやかな思い出を抱きしめながら、帰りをずっと待っている。そんな登美⼦のもとに、2年前に失踪した夫・洋司(安藤政信)を探す奈美(尾野真千子)が現れる。彼⼥は前に進むために、夫が「いなくなった理由」を探していた。しばらくして、奈美には新しい恋人ができ、夫との離婚を決意。そんなある⽇、登美⼦は街中で偶然、奈美の夫の洋司を⾒かける……。

10月7日(金)テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開
配給:ビターズ・エンド
©2022映画『千夜、一夜』製作委員会
公式サイト
https://bitters.co.jp/senyaichiya/

取材・文/松山梢 撮影/石田壮一 ヘア&メイク/黒田啓蔵(Iris) スタイリスト 関口琴子(ブリュッケ)

尾野真千子
1981年11月4日生まれ、奈良県出身。『萌の朱雀』(1997)で俳優デビュー。主な出演作は『そして父になる』(2013)『きみはいい子』(2015)『ヤクザと家族 The Family』(2021)『茜色に焼かれる』(2021)『ハケンアニメ』(2022)『こちらあみ子』(2022)など。

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