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女性人気No.1のコンドームは、女子高生100人の声をもとに生まれた。男は薄さにこだわるけど女は…

集英社オンライン / 2022年10月15日 15時1分

「0.01mm」の薄型をはじめ多種多様なコンドームが販売されるなか、女性人気No.1のコンドームがある。それがジェクス株式会社(以下、ジェクス)が販売する「グラマラスバタフライ」だ。このコンドームが生まれた背景をジェクス・マーケティング企画部 部長の井上貴光さんに聞いた。

とにかく「女子高生の声」を第一に開発を進めました

ジェクスが販売するグラマラスバタフライは「女性が自分で選ぶ、女性のためのコンドームを作りたい」というコンセプトで生まれた商品だ。コンドームっぽさを感じさせない蝶柄のかわいいデザインや、先端に水溶性ゼリーをとどめる独自技術(ジェルトップ加工)で痛みや違和感のない使用感など、女性が喜ぶポイントが盛りだくさんだ。



グラマラスバタフライが生まれた2007年は「性の低年齢化」が問題となっていた時期。女子高生をはじめとした若年層に「早くエッチを済ましてしまった方がいい」という価値観が広まったことにより、性行為の経験年齢が大幅に下がっていた。それに伴いクラミジアといった性感染症が急増、またHIVが社会問題となって注目されたこともあり、性感染症と望まぬ妊娠のリスクを女性が負わなければならないという状態だった。

「当時のコンドームといえば薄さ競争が激化していて、売り場には男性に向けてデザインされた商品ばかり並んでいました。そんなコンドームを女性、特に若い女の子たちは恥ずかしくて気軽に手に取れませんでした。しかしコンドームは妊娠や性感染症を予防するために大切なものである以上、女性が買いやすくするための工夫が必要とされていたのです」

そこでジェクスは女子高生をメインターゲットに据え、女性が手に取りやすい商品の開発を行うことにした。その際、6人の女子高生を中心にチームを発足させて開発を行い、街頭で女子高生100人にモニター調査するなどしてデザインの選定を実施。すると40種類の候補の中から、ほぼすべての女の子が現在のデザインを選ぶという結果になったのだ。

100人の女子高生のモニター調査で選定されたパッケージ

「この時に選ばれたのが現在のグラマラスバタフライのパッケージである、蝶をモチーフにしたデザインです。当時、コンドームのデザインに関わるスタッフは男性しかいなかったため、女性のコンドームに対する思いや考えが分からなかったという実情がありました。そのため女性の気持ちを理解するべく、とにかく彼女たち女子高生の声を第一に開発を進めました。
当時の社長には『男性社員は口を出すな!』と言われましたが、あれは大英断だったと思います(笑)」

コンドームは“性交道具”ではなく"医療機器"である

消費者が店頭でコンドームを選ぶときにかける時間は、わずか6秒。そのためグラマラスバタフライはキャッチコピーなどを一切廃して「化粧品のパッケージのようなオシャレさ」を前面に出したかわいいデザインに特化した。これまでコンドームを買う基準が「薄さ」だったのに対し、この商品は女性がつい手に取ってしまう「オシャレさ」で勝負に出たのだった。

なお女子高生が現在のデザインを選んだ理由は「なんとなく」「かわいいから」など抽象的だったこともあり、井上さんたちは選ばれた理由がはっきりわからず、本当に売れるのかどうか半信半疑だったという。

それでも女子高生にヒアリングを行ってできたデザインや機能性のおかげで、グラマラスバタフライは15年間も女性に愛されてきた。そして、薬局などでのPOS調査(物品販売の売上実績を単品単位で集計する手法)によると、現在最も女性に選ばれている商品にまでなったという。

女性の気持ちを第一に考えて開発されたこのブランドが目指すのは「初めて手に触れるコンドームがグラマラスバタフライであってほしい」ということ。ジェクスは性教育に力を入れており、学校や保健所などにコンドームを提供したり、性教育セミナーやLGBTQイベントに参加したりなど、積極的に活動を行なっている。

「コンドームは決していやらしいものではなく、"医療機器"であり、正しい知識で使用する必要がある商品です。ですが、性に関する情報は教育とアダルトに二極化していてなかなか必要な情報に辿り着けません。そこで私たちはコンドームを使用してハッピーなラブを促進するため『ラブ活』と称して啓蒙活動を行い、コンドームメーカーという立場から実践的な情報の発信に取り組んでいます」

2012年に提唱した「ラブ活」パネル

現在はスマホツールやインターネットの普及で性の情報にアクセスがしやすくなっている反面、間違った情報や知識なども入り混ざっているのが現状だ。そして、若い女性は男性がコンドームをつけずに性行為するのを断れないことも多いのだとか。
また近年では男性の草食化もあって性の低年齢化は落ち着いてきたが、一方で「性の二極化」が進んでいるという。性行経験の早い人はとても早いが、遅い人はとても遅いのが、近年の若年層の特徴だ。

「セックスは生きるために必要な行為」

そんな状況を鑑みてジェクスは「恋、しよう」というキャッチコピーを掲げ、リスクのない素敵な恋を応援している。

メインビジュアルには人気イラストレター・たなかさんを起用した

また女子高生の性やカラダ、恋のお悩みの解決をサポートするするため、イラストを用いたビジュアルや女子高生へ向けた情報発信にも取り組んでいる。またYouTubeをはじめとしたSNSでの情報発信などを行い、正しい情報をもとにコンドームを使ってもらえるように啓発を続けている。心身ともにナーバスな時期にある若年層にアプローチができるのも「女性に手に取ってもらう」を目標に掲げ続けてきたブランドのコンセプトがあってこそだろう。

「ですが、未だに問題もあります。現在でもコンドームのCMはテレビで放送が難しいなど、告知の手段が少ないのが大きな課題です。コンドームは『セックスを連想させる卑猥なもの』という理由でCMやキャラクターとのコラボレーションには規制や抵抗が強いことが多いです。だけど、セックスは生きるために必要な行為です。コンドームをもっと身近に買いやすく感じる社会にしていきたいと考えています」

また、ナイトクラブでの夜遊び、マッチングアプリの普及、などで不特定多数のセックスをする人もいて、そこでも望まぬ妊娠や性感染症の増加が懸念されている。男女それぞれの知識不足は女性に大きなリスクを負わせてしまうことになるからこそ、ジェクスは性の正しい知識を啓発するために取り組みに力を入れているのである。また性の問題は女性だけでなく男性にも多いのだとか。

2021年、横浜エイズ文化フォーラムでの啓発活動

「男性が性に関する知識をるためには、アダルトビデオを参考にせざるを得ない場合が多いことが問題です。近年ではYouTubeなどで性教育を発信するAV男優も出てきました。また、床オナニーをはじめとした間違ったマスターベーションの仕方が原因で、膣内射精障害に悩む人もたくさんいます。そのような人たちのために、当社のサイトでも男性向けに性知識を向上させるための特設サイトを作ったりしています」

衣食住性と呼べるくらい性を身近に

近年、女性の性の課題に取り組む「フェムテック」や、女性向けのセルフプレジャーグッズ「ウーマナイザー」などが発達し、女性の性を取り巻く産業も成長を遂げている。ジェクスはフェムテックが話題になる以前より女性に寄り添う商品を取り扱っていて、女性の性交痛に寄り添う商品も展開している。

『リューブゼリー』は、膣内のうるおい不足による性交痛を和らげるゼリーだ。1982年に日本家族計画協会から相談を受けて45歳以上の女性に向けて潤滑ゼリーを開発したが、2020年にジェクスが行った調査では 年齢にかかわらず66%の女性が性交痛を経験しているということがわかった。そうした人に向けて痛みを和らげるゼリーは重宝されていて、現在では20代を中心に人気の商品となっている。

『リューブゼリー』

このゼリーはコンドームを使った時の違和感をなくす役割もある。装着した際につっぱった感覚になることが、コンドーム使用時の痛みの原因のひとつだという。そのため、コンドーム装着時に使用することでその破損を防ぎ、結果として性感染症や妊娠を防ぐことにも役立つ。性交痛を和らげるだけでなく、性行為をより良くしてほしいと願うジェクスならではの商品だ。

「コンドームのCMをTVで流せるくらいに、性をもっと身近なものにするのが私たちのミッションだと考えています。性と教育の間で、実践的な情報を伝えていくことが使命だと考えております。グラマラスバタフライについては、女性に求められるコンドームNo.1ブランドとして、これからも女性に寄り添った商品展開をしていきます」

現在でもセックスをはじめとした性に関するサービスや商品は、アダルトビデオをはじめとして男性主体のものが多いのが現状だ。しかし、グラマラスバタフライはそうした風潮に一石を投じたと言っても過言ではない。「女性が自分で選ぶ、女性のためのコンドーム」は、これからも女性主体の性を支えていくだろう。今後のジェクスの展開に期待が膨らむばかりだ。

女子高生100人にモニター調査で選ばれたコンドームはコチラ(すべての画像を見るをクリック

取材・文/福井求

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