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村上の第1打席がファイナルシリーズの勝敗を決する。復調か、それとも……【伊勢孝夫のCS展望】

集英社オンライン / 2022年10月12日 8時1分

セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)がいよいよファイナルを迎える。注目はヤクルトの村上宗隆だ。シーズン終盤に見られた打撃フォームの乱れをどこまで修正できるかが、このシリーズの結果を左右することになる。野球評論家の伊勢孝夫氏の分析。

狂ったフォームの修正は間に合うか

村上は、どのような気持ちでファイナルステージを迎えるのだろう。シーズン最終戦でなんとか56本目を打ち、呪縛から解き放たれた爽快な気分で試合に入っていけるのか。それともシーズン終盤に狂わせたフォームの修正が気になり、焦りや不安を持ちつつ迎えるのか。

こればかりは本人に訊ねてみなければわからないことだが、私の選手、コーチとしての経験から言えば、そう楽に臨めるものではない。というのも、一般的に打撃フォームの修正には、どんなにがんばっても3週間近くはかかってしまう。なので、このファイナルに間に合うかは、ギリギリのタイミングといえるだろう。



彼がフォームを崩した主たる要因は、記録に対する精神的な重圧から、どんな投球でもスタンドインさせてやろうという意識が働き過ぎ、引っ張りにかかってしまったことに尽きる。そうしたフォームだと、ドライブがかかってむしろ打球は上がらない。

さらに飛ぶ方向もライトの方ばかりになってしまう。技術的には「左腕の振りが強くなりすぎ、かつ腰が早めに開く」という、一番よくない状態になってしまっていた。

もちろん、そのあたりは本人が一番わかっているだろう。試合前の打撃練習でも、センターからレフト方向へと意識して打ち返す練習を繰り返していたはずだ。ところが始末が悪いことに、こうした症状のときはいざバッターボックスに立つと、修正ポイントの意識が飛んでしまい、また引っ張りにかかってしまうのだ。

それも日を追うごとに重症になるが、本人がわかっているだけに、そばにいるコーチたちも、なにも言えなくなってしまう。シーズン終盤の村上は、そんな状態だった。それだけに最終打席で出た1本で、どれほど心が解放されたか。

とはいえ一度、崩れたスイングというものは、たった1打席の一発で修復できるかというと、そう簡単なものではない。とくに56本目は最後の打席だった。これがもしその後にも試合があったら、感覚を呼び覚ます機会にもなったと思うが、あいにく最終戦。

その後、社会人との練習試合はあったものの、練習はあくまで練習だ。そう考えると、感覚が容易に戻っているとは考えにくい。

阪神バッテリーは“どの村上”を想定するのか

対戦するタイガースからすれば、村上を抑えられるか否かがシリーズの行方を左右するわけだから、その状態や心理を察知することは、最重要事項となるだろう。

村上に対する基本的な攻め方は、内角高めを見せて意識させ、外角低めで勝負するというもの。不調時はこれに加え、真ん中高めのボール球を使い、効果的に振らせて抑えてきた。ここに関しては投手の右左は大きく変わらない。

阪神には青柳晃洋、左の伊藤将司といった好投手がいる。青柳の対左打者の基本は内角にスライダー系で意識させ、外角低めにシンカーを落とすというもの。伊藤将は、基本は外角でカウントを稼ぎ、決め球も外角に集める傾向がある。

ポイントとなるのは、阪神バッテリーがシーズン中と同じ攻め方をするのか、それともCSで異なった攻め方をしてくるかどうか。くわえて、“どの時期の村上”を想定して攻めてくるかだ。

不調時はいいように抑えてきたが、はたして3週間近く過ぎても同じ攻め方をしてくるのか。それとも好調時をイメージして慎重に攻めるのか。このあたりの見極めが鍵を握るだろう。

では、村上の方はどうだろう。どのような攻め方をされても、内角の球を叩いて打ち損じ、一塁側ファウルを連発するようなら、まだフォームの修正は十分でないと見るべきだろう。

外角の球も同様で、セカンドゴロやライトへのドライブのかかった打球は、引っ張り傾向の表れで、シーズン終盤の不振だった頃のスイングだ。それは焦りや不安が拭い切れていないということを表す。

逆に外角の投球を引っ張り込まずにセンターからレフトに打ち返すようなシーンが見られるようになれば、復調傾向とみていいだろう。気分的にも落ち着きが戻り、ボールも見えていると判断すべきだ。打球というものはそれだけ正直で、打者の精神面も如実に表すものなのだ。

いずれにせよCSファイナルは、初戦の村上の第一打席がひとつの山になるだろう。その結果である程度、村上の状態が読み取れる。阪神のベンチもスコアラーも、まずはそこに注目しているはずだ。

CSファイナルは特異な短期決戦だ。最大6試合、毎日、同じ相手と戦う。それも球場も変えずにだ。日本シリーズならば移動日があるが、それもない。これは想像以上にタフな戦いといえる。とくにファーストシリーズから勝ち上がってきたチームは3、4戦目あたりで集中力が途切れがちだ。

ヤクルトからすればアドバンテージがひとつあるため、1勝すればその時点で2勝計算となる。6試合で3勝すればいいーーそう考えられれば、ヤクルトが圧倒的に有利だ。村上も、そのように楽観的に臨めればいい。ともあれ、勝敗をわけるのは村上の初戦の第一打席。私はそう見ている。

構成/木村公一 写真/小池義弘

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