昭和……とくに団塊ジュニア世代がノスタルジーを感じる昭和40〜60年代の文房具といえば、温かみのある「ファンシーさ」と、ギュッと詰まった「密度感」がポイントだ。
これらは昭和を知らない平成世代にとっても、レトロ感の共通概念的なものとして伝わっているため、「実際には見たこと無いけど、なんとなく古くてかわいいもの」的なイメージとして捉えられることが多いようだ。
昭和のモンスター文具が令和で大復活! Z世代も大ハマりする “ザ・昭和み文房具”
集英社オンライン / 2022年10月13日 10時1分
文房具や雑貨において、レトロ感は重要なモチーフのひとつ。特に最近は“昭和っぽさ”を前面に押し出したデザインや、昭和の名作文房具を雰囲気そのままに令和版としてアップデートさせたものが注目を集めている。今回はアラフォー・アラフィフだけじゃなく、平成生まれにとってもなぜか懐かしさを感じる、昭和み溢れる文房具を紹介。
くすみレトロカラーがかわいい昭和ファンシー文房具シリーズ
今年9月に発売されたエポックケミカルの「タイムスリッぷ」は、まさに昭和ファンシーの要素をギュッと凝縮したようなレトロデザインの文房具シリーズだ。
4色ボールペン、ロケットハートシャープ、水性マーカー、レターセット、カセットケースカードなどがラインアップ。
全体的なカラーリングは、昭和チックなポップカラーが経年変化でくすんだような、いかにもレトロな主張のある色合いになっている。
ただ、くすみ感は最近のカラートレンドでもあるので、パッと見には古いようでいながら今風のおしゃれっぽさもあるのが面白い。
全体的なデザインも、カドの取れた柔らかな丸みで構成されており、フラット&シンプルな令和の文房具とは明確に違う雰囲気を醸し出している。
昭和世代に刺さりまくる、ハート型ロケット付きのシャープペンシル
筆者が特にレトロっぽさを感じたのが、カセットテープのケースをモチーフにしたメッセージカード&ケースだ。
もはやカセットテープの実物も見たこともないという人も多いだろうが……それだけに、レトロ感は抜群である。
なにより、エポックケミカルは樹脂製品メーカーであり、昭和時代には実際にカセットテープケースを生産していた歴史がある。
実はこのケースも、社内に眠っていた当時のカセットテープケースの金型を流用して作られたものなのだ。つまり、レトロっぽいフェイクではなく、ほぼ本物!
なんと本物のカセットケースの金型で作られたメッセージカードケース。これまた昭和世代には懐かしい
残念ながら金型は経年劣化でかなり傷んでいたため、今後このケースを量産するのは難しそうとのこと。
ガチレトロなケース付きメッセージカード、気になるなら急いでゲットすることをオススメしたい。
昭和のセット文房具は密度感がたまらない!
昭和60年代のバブル景気真っ最中に流行したのが、セットもの文房具といわれるもの。コンパクトな文房具群を専用ケースに収納したもので、とにかくギミックがギュッと高密度に詰まった感じが人気だったのである。
そしてその流行の先駆けとなったのが、昭和59年に発売されたプラスの「チームデミ」。
昭和の文房具を代表する「チームデミ」(昭和59年版)
小さなプラケースを開けると、ウレタンベース(グレーの部分)にハサミやホッチキスなど小さな文房具が7点、みっちりと収まっている。
小さくてもちゃんと使える実用性と、整頓されたお道具箱のような密度感がウケて、累計販売数は650万セット以上(加えて、そっくりの偽物も大量に出回っていた)。まさに昭和のモンスターヒット文房具なのだ。
こちらが現代にアップデートされた新しい「チームデミ」(令和2年版)
みっちりと文房具が詰まった密度感は、昭和版からそのまま受け継いだ印象
そしてこの「チームデミ」が、令和2年に復刻。しかも世界的なプロダクトデザイナー 深澤直人氏の手によるリファインと来たら、もう昭和生まれの文房具マニアにはたまらない。
ケースサイズは先代と同じで、パカッと開けた際の文房具の配置もほぼ同じ……つまり手に取った第一印象は昭和のままなのだが、実は文房具を一つ一つよく見ると、微妙な違いが感じられるはずだ。
新型はフィットカットカーブ刃で切れ味が大幅アップ!
例えばハサミを開いてみると、刃が微妙にカーブしているのが分かる。これはプラスが得意とする“ベルヌーイカーブ刃”と呼ばれるもので、刃先から根元までシャープな切れ味を生み出す、平成生まれ(2012年)の技術なのである。
他にも、カッターナイフの刃が、切れ味が長持ちする厚刃になっていたり、液体のりが紙にシワを生じにくいタイプになっていたりと、全てにおいて昭和→令和の技術的なアップデートが施されている。
ケースから取り出す際は、文房具の端を押すとピョコッと飛び出す仕組み
ケースの収納スペースも、文房具型にくり抜かれたウレタンベースから、マグネットによって文房具をピタリと吸い付けて収納する仕様に変更された。
これは、シャープな雰囲気を出しつつ、ウレタンと同様にみっちりと収まる密度感も合わせて演出する仕組みだと思われる。
令和の技術で作られた文房具セットながら、昭和レトロな雰囲気もきちんと守る。これこそが、当時の文房具マニアと最新文房具ファン、どちらも満足できるWin-Winの復刻と言えるだろう。
懐かしの昭和レトロ包装紙はファンシー+密度感が魅力
昭和時代、文房具店や雑貨店で小物を買ったときに、赤い格子の中にかわいい動物が並んだ柄の紙袋や包装紙に包んでもらった記憶はないだろうか。
この柄こそが、ラッピング用品メーカーのシモジマが生み出した昭和ファンシーデザインの代表格「ストップペイル」柄である。
ザ・昭和ファンシーの象徴ともいえる「ストップペイル」の紙袋(シモジマ)
ストップペイルという名前は知らなくても、このデザインを見たことがある、という人も多いはず。
こちらはデザイナー 板垣順子氏の手によるデザインで、昭和の女の子が「かわいい!」と感じる要素を高密度に詰め込んだもの。
さらにイラストの余白部分には、当時の少女漫画などで流行していたローマ字のモノローグを入れて、さらにみっちりとした印象を出している。
つまりこれ、昭和レトロ文房具の2大要素である「ファンシーさ」と「密度感」の融合というわけだ。
巨大なチャームも昭和感がある「ストップペイルシャープ&ボールペン」(シモジマ)
一時期は廃番となっていた「ストップペイル」柄の包装紙だが、令和2年のシモジマ創業100周年に合わせて待望の復刻。さらにはペンケースやシャープペンシルといったグッズとしても展開されている。
このかわいさは全世代的なものらしく、平成生まれ女子の間でも復刻版「ストップペイル」から昭和ファンシーに目覚めるケースが増えているとも聞く。
なんとも懐かしい昭和レトロモチーフ文房具は、おそらく今後も人気ジャンルとして、数多くの製品が出てくるはずだ。現代のデザインとは一線を画した昭和のレトロかわいさを、ぜひ楽しんでもらいたい。
文/きだて たく
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