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「何より根性がある」橋本環奈を主演に。青春ループ・ホラー『カラダ探し』羽住英一郎監督が目指した新しい怖さ

集英社オンライン / 2022年10月14日 14時1分

『海猿』『MOZU』『太陽は動かない』などのエンターテインメント大作で知られ、2022年はドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』(日本テレビ、Hulu)も話題になった羽住英一郎監督。新作映画は、人気ケータイ小説を実写化した10月14日公開の『カラダ探し』。どのように初のホラー作品を撮り上げたのか? オマージュを捧げた作品や、自身が最も恐怖を感じたものとは?

7月5日、深夜0時。孤独な女子高生・森崎明日香(橋本環奈)は、気がつくと、クラスメイト5人と学校にいた。そこへ突如、全身血まみれの少女“赤い人”が現れ、全員を惨殺。その日から、6人は同じ毎日を繰り返すことになった——。

2011年に作家・ウェルザードによるケータイ小説が発表されて以降、マンガ化やアニメ化がされてきた『カラダ探し』。映画化権を獲得したのは、『IT/イット』シリーズをヒットさせたワーナー・ブラザース映画だ。そしてワーナーが白羽の矢を立てた監督が、『ワイルド7』(2011)、『太陽は動かない』(2020)でタッグ組んできた羽住英一郎監督となる。


「ループもの」の難点を青春映画の要素でカバー

——『カラダ探し』の監督オファーを聞かれたときは、どう思われましたか?

羽住英一郎(以下、同) 僕は怖がりで、自分から進んでホラー映画を見にいくタイプじゃないので、ホラー映画を自分に撮れるかなって、最初は不安がありました。でもプロデューサーの原祐樹さんから、「ホラー好きに向けて作るのではなく、間口の広い映画にしたい。最後は恐怖に打ち勝って、気持ちよく劇場を出られる映画にしたい」と言われたときにすごく興味が沸きました。

——脚本家に迎えたのは、ドラマ『パンドラの果実』でも組まれた土城温美さん。脚本開発で苦労された点は?

原作は、小説だけでも20冊以上出ている膨大な物語。どの部分をどう切り取るかで議論を重ねました。「ループもの」なので主人公たちが何度も殺されるんですけど、何回も繰り返されると、見てるほうは慣れてハラハラできなくなる。どう飽きさせずに1本の映画にしていくか、バランスの取り方に苦労しました。

羽住英一郎監督

——飽きさせないためにした工夫は?

フェーズを変えて、“赤い人”じゃないものが出てくるようにしたり、生徒6人の絆を深めていって“青春”のほうへグラデーションを作ったり。原作にとらわれすぎず、映画としてどう劇場で楽しませるかを考えました。

——主演の橋本環奈さんのキャスティングはどのように?

最終的に6人が友達になる話に落とし込みたかったので、主人公の明日香は、最初は“ぼっち”になっている設定にしたんです。そこから徐々に打ち解けていく繊細な変化を表現できて、アクションもできる——なんでもできる子じゃないといけないと思ったときに、早い段階で名前が挙がったのが、橋本さんでした。演技もアクションも上手だし、何より根性があるので、彼女なら過酷な現場も乗り越えられるだろうなと。

——共演には、眞栄田郷敦さん、山本舞香さん、神尾楓珠さん、醍醐虎汰朗さん、横田真悠さんら次世代俳優がずらり。彼らの起用理由は?

それぞれのキャラクターが抱えているものを体現できて、映画作りを楽しめる人たち。若いエネルギーに満ち溢れているキャストが集まると、グルーヴ感が出るだろうなと期待してキャスティングしました。

人が怖がるものと名作へのオマージュ

——撮影準備で苦労したことは?

“赤い人”のビジュアルです。マンガ版を参考に考えたんですけど、少女だからどうしてもかわいく見えちゃうし、6人の高校生が束になっても敵わない感じにはならない。メイクテストを繰り返したり、テスト撮影をしてライティングを工夫したりして怖さを追求しました。顔も含めて全身真っ赤にすることは、かなり後になって決まりました。

——怖がらせるために色は重要なんですね。撮影にあたって、「観客を怖がらせる方法」を研究されたのではないかと思います。人はどういうものを怖がると思いましたか?

やっぱり、暗いところは怖いですよね(笑)。暗くて見えないことの怖さは大きい。ただ、暗すぎて見えないとストレスに感じてしまうので、ある部分から先が暗くて見えない、というライティングにしています。

あとは、映画で体験したことがあるもの、というのもひとつの怖さだったりするじゃないですか。「こういうカットがあるということは、ここに何かあるんだな」とか、「このカットがこれだけ長いってことは、何かあるに違いない」とか。要は「フラグが立つ」ということ。何本も映画を見ていると自然と刷り込まれていく「映像体験からくる怖さ」も意識しました。

——それでいうと、影のみで惨殺シーンを描くところは、ヒッチコックなどの映画を思い出しました。

そういう古典的な表現もやってみましたね。

——井戸から手が出てくる場面は、『リング』を思い出したり。

ロケをさせてもらった学校に、たまたま井戸があったんですよ。そこに井戸があるということは、やっぱり『リング』へのオマージュとして使わないわけにはいかないだろうと思って(笑)。

——十字架が出てくると、これは『エクソシスト』かなと。

そうですね。キリスト教系のアメリカンホラーには必ず出てくるので、とどめはやはり十字架かなと思ったり(笑)。ずっと同じテイストが続くと飽きてしまうので、怖さのテイストを変えていこうとは思っていました。

——ほかに、どんな作品の影響がありますか?

“赤い人”や“エミリー人形”をあまり見せないという意味では、『エイリアン』がそう。今でこそフィギュアにもなってるので、エイリアンがどんな形をしているのか、みんなわかってると思います。

でも僕が中学生の頃に映画館で見たときは、何回見ても、どんな形をしてるのかわからなかったんです。「全体像がわからない怖さ」はあると思ったので、見る人にわからなくてもいいんだ、くらいの見せ方にしようと思いました。

臨場感のある音や精神的な怖さも

——音によって恐怖をかき立てられる部分もありました。冒頭で言えば、森を風が抜ける轟音(ごうおん)や、人影が忍び寄る足音など。

暗くしたりして映像であえて情報を見せないと、観客は音を頼りにする。そのときに、足音や息づかいは重要なアイテムになるので、音響にもこだわっています。例えば、“赤い人”の足は血で濡れているので、足音の湿り具合にこだわったりとか。

——ホラー映画のヒロインは、スクリーミング・クイーン(絶叫女王)と呼ばれたりします。悲鳴も怖さをかき立てる要素ですね。

そうですね。でも、本当に驚いた人は息を呑んだりして、声が出なかったりする。だから、あまり叫んでばっかりにならないようにはしています。

——映像、音に加えて、精神的な怖さも多々ありました。個人的には、“赤い人”がベッドの上でピョンピョン跳ねるところが「イヤだー!」と(笑)。

(笑)。あとは仲間が死んで、誰もいなくなる場面は精神的に怖いですよね。ひとりだけになると、急に心細くなるので。修学旅行で怖い話をしてたら、みんな眠っちゃって、自分だけ起きてる——みたいな怖さに近いものがあります(笑)。

監督として「怖い」と思ったこと

——今回撮ってみて感じた、ホラーの難しさとは?

自分が、物差しじゃなくなっちゃうことです。例えば泣けるシーンは、何回編集で見ていても、「こうしたほうが、もっと泣ける」とわかるんです。でも怖いシーンに関しては、一度慣れてしまうと、何を基準にしたらいいのかわからなくなる。だから「怖さの満足度」を高める作業が、すごく難しかったです。

——完成前に試写会を開いて観客の反応を見たそうですが、その意見が参考になりましたか?

試写をしてアンケートを採っても、なかなか事細かに書いてくれる人はいないんですよ。でも、一緒に見ることで感じることはある。「ここはテンポが速すぎて観客の理解が追いついてないな」とか、「ここはちょっとタルいな」とか。それで修正することはあるんですけど、そこも怖さに関しては難しくて。初めて見た人が、どのくらい怖いのかがわからないところが難しくもあり、その難しさが発見でもありました。

——殺されれば殺されるほど青春が輝くというループ型ホラーの構造に新しさを感じました。観客には、どのように感じてもらえるとうれしいですか?

目指したのは、「アトラクションムービー」。恐怖、友情、恋など、いろんな要素を盛り込んで飽きさせないようにしたので、アミューズメントパークでアトラクションを楽しむように見てほしいです。あと、通常のホラー映画よりも、「仲間と一緒に繰り返し見たい」と思えるものになったかなと。そういう映画を目指したし、そこがジャンルとして新しいかなと思います。

——最後に、見た人の声で、一番うれしかった言葉は?

やっぱり「怖かった!」です。青春映画としては自信があったけど、怖いのかどうか確信を持てないままでしたので、そう言われたときは、本当にホッとしましたね(笑)。

取材・文/泊 貴洋
撮影/吉楽洋平
場面写真/©2022 「カラダ探し」製作委員会

『カラダ探し』(2022)
監督/羽住英一郎
原作/ウェルザード『カラダ探し』(エブリスタ)
脚本/土城温美
出演/橋本環奈、眞栄田郷敦、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠、柳俊太郎、西田尚美、柄本佑 ほか
配給/ワーナー・ブラザース映画

7月5日、高校にいるはずのない少女から、「ワタシのカラダ、探して」と言われた明日香(橋本環奈)。その日の深夜0時、気付くと学校にいた彼女は、同じく学校に集められたクラスメイト5人とともに、血で染まった少女“赤い人”によって殺されてしまう。目が覚めると、また同じ7月5日。その日から同じ日を繰り返すことになってしまった6人は恐怖に立ち向かいループを抜け出そうとする……。爽快なラストに感動!

10月14日(金)全国公開
公式HPはこちら https://wwws.warnerbros.co.jp/karadasagashijp/

羽住英一郎

映画監督

1967年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部映画学科を卒業後、ROBOTに所属。2004年に『海猿 ウミザル』で映画監督デビュー。以降、海猿シリーズの他に『逆境ナイン』(2005)、『おっぱいバレー』(2009)、『暗殺教室』シリーズ(2015/2016)、『OVER DRIVE』(2018)などを監督。ドラマと映画の連動作に『MOZU』(2014〜)、『太陽は動かない』(2020〜)などがある。ドラマ『ダブルフェイス』(2012)で東京ドラマアウォード2013単発ドラマ部門グランプリを受賞。今年は日本テレビ×Hulu共同製作ドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』が話題に。

泊 貴洋

ライター

雑誌『演劇ぶっく』(現・えんぶ)の編集者時代に、演劇と映画の学校「ENBUゼミナール」の立ち上げに参加。1999年、映画雑誌『ピクトアップ』を創刊。2004年、独立してフリーライターに。以降、『日経エンタテインメント!』や『Pen』などの雑誌やウェブ媒体にて、映画監督、俳優、クリエイター、企業人などへの取材を行う。著書に『映画監督への道』、『ゼロからの脚本術』(ともに誠文堂新光社)、『映画監督になる』シリーズ(演劇ぶっく社)などがある。

ロードショー編集部

1972年に創刊し、2008年に休刊となるまでの36年、多くの映画ファンから愛されていた 映画雑誌「ロードショー」。
現在も数多く届く復刊希望の声をうけ、集英社オンラインでは、映画に関する記事は「ロードショー」レーベルで発信します。
劇場で、配信やサブスクリプションでと、映画を作る環境も見る環境も多様化し、膨大な数の作品が作られている今だからこそ、本当に見たい映画を選び、より広く深く楽しむための情報や読みものを届けます。

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