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NEXT濱口(『ドライブ・マイ・カー』)誕生なるか!? 国際映画祭で発掘された日本人フィルムメーカー

集英社オンライン / 2022年10月15日 12時1分

サンセバスチャン国際映画祭のニュー・ディレクターズ部門に、日本の新人監督たちが選出された。果たして、『ドライブ・マイ・カー』でアカデミー賞を受賞した濱口竜介監督に続く才能は誕生するのか? 新人発掘に力を入れる、国際映画祭の現状をレポートする。 ※トップ画像©Alex Abril

国際映画祭が狙う次の日本人監督は?

『百花』でシルバー・シェル賞(最優秀監督賞)を受賞した川村元気監督
©Pablo Gomez

菅田将暉&原田美枝子主演の映画『百花』(2022)で長編に初挑戦した川村元気監督が、第70回サンセバスチャン国際映画祭でシルバー・シェル賞(最優秀監督賞)を受賞した。同賞を日本人が受賞するのは初めて。本映画祭は新人発掘に定評があり、『ドライブ・マイ・カー』(2021)でアカデミー賞国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督が、初めて参加した国際映画祭でもある。



『ドライブ・マイ・カー』は国際映画批評家連盟賞の年間グランプリを受賞し、サンセバスチャン国際映画祭のオープニングで授賞式が行われた。濱口監督をいち早く紹介して注目を浴びたのがニュー・ディレクターズ部門。韓国のポン・ジュノ監督に国際映画祭で初めて賞を与えたことでも知られ、濱口監督は第56回に『PASSION』(2008)で参加している。

今年、同部門に日本から選ばれたのは、『宮松と山下』(2022/11月18日公開)の関友太郎・平瀬謙太朗・佐藤雅彦監督と、『なぎさ』(2017)の古川原壮志監督で、長編に初めて挑戦した面々だ。選考委員のロベルト・クエトは「創造力に富んだ2作」と、チョイスに自信を見せた。

『宮松と山下』は11月18日(金)より新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、シネスイッチ銀座ほか全国公開
©2022『宮松と山下』製作委員会

『宮松と山下』はエキストラ俳優・宮松(香川照之)の、自身も知らなかった過去が明らかになっていく人間ドラマ。一方『なぎさ』は、心霊スポットだと友人に連れて行かれた先が、偶然にも主人公の妹が事故死したトンネルだったことで、過去へと誘われていく心の旅。

映画『なぎさ』は昨年の第34回東京国際映画祭のNippon Cinema Now部門で世界初上映された
©MMXXI Takeshi Kogahara, Mami Akari

両作ともテイストは違えど、過去と現在、虚構と幻想を並列に描きながら、主人公の過去と内面を掘り下げていく構成。観客は、一体何の映像を見せられているのか?と戸惑いながらも、物語の深みに没入させられる新鮮な映像体験を味わうことになる。

すでにドラマやCMで活躍している実力者たち

世知辛い現実社会に立ち向かう主人公を直球で描くのが主流の今、映像表現を追究した2作を選出したのもサンセバスチャンらしい。前出のクエト委員は、『宮松と山下』については「わずかなセリフで想像を掻き立てる主人公のキャラクターが素晴らしい」、『なぎさ』は「物語、編集、叙情詩的構成のどれもが型破り」と評した。

監督たちの経歴も共通している。”新人”とはいえすでにドラマやCMで活躍している実力者たち。その彼らが時間をかけて真摯に映画作りに向きあいつづけた結果、ここにたどりついた。

『宮松と山下』の(写真左から)平瀬謙太朗、佐藤雅彦、関友太郎監督。平瀬監督は『百花』の共同脚本家でもある
©Pablo Gomez

『宮松と山下』を監督したのは、東京藝術大学大学院映像研究科・佐藤雅彦研究室を母体とする監督集団「5月」のメンバー。2012年より同研究室でカンヌ国際映画祭を目指した映画製作プロジェクト「c-project」を立ち上げ、短編『八芳園』(2014)と『どちらを』(2018)は、カンヌ国際映画祭短編コンペティション部門に選出されている。

研究活動として企画を出しあい、試作を繰り返して製作するのが彼らのスタイル。『八芳園』は、カンヌで巨匠アッバス・キアロスタミ監督に「最初の5分は最高。以降は冗長」と評されたことを反映し、日本公開時に編集し直した。今回も評判は上々だったが上映後に早速、反省会を開いたという。

「短編を作っても日本ではおきどころがなく、作って終わりみたいなところがある。でもカンヌが『八芳園』を新しい映画の形として受け入れてくれたことで、自分たちが映画祭を目指す理由はそこにあると思った。また今回の上映で、今さらながら観客にちゃんと伝わるものを作っていかなければならないと気づかされ、ようやく”映画とは何か?”がわかってきたように思います」(関監督)

『なぎさ』の古川原壮志監督
©Pablo Gomez

『なぎさ』の古川原監督は、映像製作の仕事のかたわら、10年前から映画を製作。短編『Birdland』(2019)で第24回釜山国際映画祭に参加した際、ほかの国の新人監督たちと交流して刺激を受けた。以降、短編『なぎさ』(2017)を長編にすべくサンダンス・インスティテュートの脚本ラボや、フィルメックスの人材育成プログラム「タレンツ・トーキョー」に参加して企画を練り上げてきた。

「サンダンスで一緒だったのが、カンヌで新人監督賞として特別表彰された『PLAN75』(2022)の早川千絵監督。タレンツ・トーキョーでは同作の水野詠子プロデューサーと一緒でした。あのふたりがタッグを組んで何年もかけた作品がカンヌで評価されたことで、もっと映画について考えなければと思いました」(古川原監督)

新作企画『The Little Mermaid(仮題)』は、「タレンツ・トーキョー2022」(10月31日~11月5日)が実施する、世界での活躍が期待される企画を選抜する「ネクスト・マスターズ・サポート・プログラム」に選ばれた。古川原監督は、すでに次に向けて動いている。

国際映画祭がこぞって伊丹十三監督にフィーチャー

サンセバスチャン国際映画祭で上映された4Kデジタルリマスター版『タンポポ』。満席の会場からは度々、大きな笑いが起こっていた
©伊丹プロダクション

新人発掘だけでなく、映画祭は、海外の知られざる異才を再発見する場でもある。サンセバスチャン映画祭が今回フィーチャーしたのは、伊丹十三監督(1933-1997)。海外でラーメン・ブームを巻き起こした『タンポポ』(1985)の4Kデジタルリマスター版を世界初上映した。

さらに、11月2日〜20日に開催される台北金馬映画祭では、『タンポポ』をはじめ伊丹監督作全10作が4Kデジタルリマスター版でレトロスペクティブ上映される予定だ。

台北金馬映画祭の伊丹十三レトロスペクティブのビジュアル。日本映画専門チャンネルでは2023年1月から伊丹十三全10作品の4Kデジタルリマスター版を放送する
画像提供:Taipei Golden Horse Film Festival

4Kデジタルリマスター版を手がけた日本映画放送株式会社の宮川朋之常務執行役員によると、『タンポポ』や『お葬式』(1984)が紹介されることはあったが、海外で本格的に伊丹監督の特集が組まれるのは初めてとのこと。伊丹プロダクションに問い合わせは多数あったそうだが、デジタル化されていなかったこともあり対応できなかったという。

今回は日本映画放送が擁する日本映画専門チャンネル開局25年の目玉プロジェクトとして、4Kデジタルリマスター化が実現。英語字幕の監修を伊丹監督の次男である万平氏が担当した。台湾では劇場公開も予定されており、日本社会を鋭く切った社会派エンタメ監督・伊丹十三が国内外で再評価されそうだ。

文/中山治美

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