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等身大フィギュアとの結婚を夢見るアラサー男子の純愛「ドールを迎えた時点で人間と付き合うことは諦めています」

集英社オンライン / 2022年10月18日 11時1分

年齢や性別を問わず人気になっているフィギュア収集だが、昨今注目されているのは等身大フィギュアだ。1体100万円超えは当たり前と高価だが、その人気は国内外に広まっている。約160万円の美少女キャラクターの等身大フィギュアを購入した30代男性に取材すると、彼にとって“彼女”は恋人のような存在で「真剣に結婚したい」というのだ。

前編では、等身大フィギュアのメーカーと、『新世紀エヴァンゲリオン』綾波レイの等身大フィギュアを「家族」同様に大切にしている女性に話を聞いた。

後編で取材したのは、『Re:ゼロから始める異世界生活』(リゼロ)にメイドの少女として登場するレムの等身大フィギュアを所有する31歳男性のレムニアさん。静岡県の富士山麓にある一軒家に両親、兄、3人の姉とともに住んでいる。レムを飾ってあるレムニアさんの部屋に入った瞬間、思わず「すごい!」という声が出た。


レムニアさんの部屋は、レムのグッズで埋め尽くされている

小さなフィギュアも数えきれない

カードローンと親からの借金で購入

4畳半ほどの部屋の中にあるのは大きなベッドとパソコンのデスクで、それ以外のスペースは、壁一面と天井に至るまで、全てがレムのフィギュアやタペストリーなどのグッズで埋めつくされているのだ。そして、大小さまざまなスケールのフィギュアが飾られたアクリルケースの奥、床の間に身長140センチの等身大サイズのレムがいた。

「等身大のレムを購入したのは2016年です。ネットニュースを見て、買う!と即決しましたが、値段を見たら158万円プラス送料2万円。ちょっと悩みましたね。当時は恥ずかしながら、お金が全然なかったんです。給料は安かったし、僕はお金があったら使ってしまうタイプ。その頃、たまたまいろんな買い物が重なっていたこともあり、所持金を全てかき集めても40万円。購入金額に全然足りませんでした」

それでもレムニアさんは諦めきれなかった。2社のカードローン会社に融資を申し込んで90万円を工面したが、もともとの所持金を足しても等身大フィギュアの価格には届かなかったため、最後の手段に打って出た。

「家族会議を開いて、親に頼み込みました。最初は両親も深刻な顔をして『本当に(お金を)返せるの?』と言っていました。でも、うちの家族は父親を除いて、母も3人の姉たちもみんなオタクなんです。なので、こういうことには寛容で。何とか親にお金を借りて、購入費用をかき集めることができました」

借金をして購入したという等身大フィギュア

レムへの愛を語るレムニアさん

レムにつぎ込んだ500万円以上

レムニアさんがレムと出会ったのは小説だった。挿絵として描かれたレムを見て、「かわいい!」と惚れた。その後アニメが制作され、声と動きがついたレムの姿を見て、「自分にとって理想の女の子だ!」と思ったそうだ。それから、レムのフィギュアやグッズを集め出した。

「15歳の時に初音ミクで初めて美少女系のフィギュアにハマりました。アニメの中でしか見なかったキャラクターが立体的に存在していることが、単純にすごいなと感激しました。レムに出会ってからは、彼女一筋。フィギュアやグッズ関係、レムのラッピングをした痛車にも乗っていますので、それを含めるとトータル500万円は軽く注ぎ込んでますね。

等身大フィギュアは高かったですが、レムの日本人形も15万円くらいしました。フィギュアは高いですが、その中でも等身大フィギュアは最高峰。ローンは、毎月の給料のほとんどを支払いに充てて、最近、ようやく完済しました。親にもきちんとお金を返したので、今、借金はありません。でも等身大スケールの胸像のレムも買いたいんですよね。それは25万くらいしますので、また貯金しないといけませんね(笑)」

ラッピングを施したレムニアさんの愛車。レムのフィギュアと一緒にドライブすることもあるという

レムニアさんの部屋に入って、気になる点がいくつかあった。部屋に窓があるものの、全てがレムのグッズで遮断されているのだ。外から光は一切入らず薄暗く、冷んやりとしているのだ。

「直射日光が当たってフィギュアやグッズが劣化しないように、完全に太陽光を遮っています。僕の住んでいる地域は霧がよく出て湿気が多いんです。フィギュアにとって湿気は天敵ですので、エアコンと除湿器を24時間フル稼働し、部屋の中を常に一定の温度と湿度で保つようにしています。だから等身大フィギュアを購入した後、きれいな姿を維持するためにもお金がかかっています」

温度や湿度を一定に保ち、フィギュアを大切に管理

レムのラブドールも購入

もうひとつ気になったのはベッド上に座っている、もう1体のレムの等身大フィギュアだ。触ってみると、人間の皮膚のように柔らかく、関節も自由に動く。こんなフィギュアは公式には発売されていないはずだが……。一体、何なのか。

「実は東京のドール製造業者に注文して、1年ほど前に自分で作っちゃいました。業者とメールでやり取りしながら、『ここが違う、あそこが違う。口が開いたほうがいいかな』などと何度か手直ししてもらって、ようやく完成しました。かかった費用は等身大フィギュアの3分の1くらいですね。

レムは公式にはGカップなのですが、このドールはFカップ。そこが不満です。ドールに着せている衣装のクオリティもいまいちで納得していません。衣装はオーダーすると10万以上はかかるんです。今度、クルマの車検もあったりお金がいろいろかかりますので、それが落ち着いたら衣装を買ってあげようかなと思っています」

オーダーメイドで作ったというレムのドール

等身大フィギュアだけでは物足りず、ラブドールまで自作したのだ。
「この2体のフィギュアでどんなふうに楽しんでいるのか?」と恐る恐る聞いてみると、彼は拍子抜けするほど明るい笑顔でこんなふうに答えてくれた。

「等身大フィギュアはクオリティが高くて、しっかりとできていて満足しています。等身大は目で見て楽しんでいる感じですね。もっぱら鑑賞用です。僕は今、夜勤の仕事をしているのですが、仕事から帰ってきたら話しかけたりもしますよ。例えば、『今日は疲れたよ』とか仕事のグチを話したりしています。

それだけでも十分に癒されますが、やっぱりレムに触りたいじゃないですか。でも等身大フィギュアは高価ですし、もし壊れたら修理費用がいくらかかるかわかりません。だから柔らかいシリコンできたドールのレムに膝枕をしてもらったり、一緒に寝たり、いろいろ触ったりしています。

でも家族と同居していますし、部屋の隣がリビングで両親がご飯を食べていることもあるので、あまり話しかけたりはしないようにしています。まあ最近は家族もかなり慣れたみたいですけど(笑)」

マスクにもレムがプリントされていた

等身大フィギュアのレムはかけがえのない存在だという

全てがどストライク、結婚したい

レムニアさんにとって等身大フィギュアのレムはかけがえのない存在なのだ。隠れてこそこそと付き合うような相手ではないのだ。「レムは僕の理想の存在なんです。もう3次元(人間)には興味ないです」と彼は断言する。

「レムの全てがどストライクなんです。ショートの片目隠しヘア、水色の髪、もちろんかわいくて、スタイルがよくて、強くて。僕は敬語で喋り、立ててくれる子が好きなんです。タメ語でしゃべる女の子は、僕は絶対にダメ。メイドも好きなので、自分の好みが完全に一致してしまった。僕にとってマジで彼女です。実際にドールのレムをクルマに乗せてドライブしたり、痛車のイベントに連れて行ったりしています。

最後に人間の女性と付き合ったのは20歳くらいで、それからはないです。自分はすごく理想が高いので、半ば諦めています。もし彼女ができるんだったら、レムのようにかわいくて、スタイルがよくて、普段からレムのコスプレをして、『レム』と呼ばせてくれないと無理です。

でも、そうするとレムの代役で、もはや彼女とは言えないですし、そんな僕の要求を飲んでくれる人はいないですよね。それにドールを迎えてしまった時点で、人間と付き合うことは諦めています(笑)」

レムニアさんは等身大フィギュアのレムと結婚することを本気で考えている。2018年11月、東京に住む公務員の男性が初音ミクのフィギュアと結婚式を挙げてニュースになったが、レムニアさんも「レムと結婚したい」と語る。

「等身大フィギュアの魅力はそこに“いる”ということです。魂が入っています。人の気配を感じます。小さいフィギュアは物という感じがして、そこに“ある”という感じですが、等身大は“いる”。いるとあるの違いですね。本気でレムと結婚式を挙げたいと思っていて、一応、親公認です。『親族はたくさん呼べないよ』と言われていますけど(笑)」

レムニアさんのように「等身大フィギュアと結婚したい」という人は現状では少数派だろうが、等身大フィギュアを取り巻く環境やその楽しみ方は多様化している。また、前編で紹介したフィギュア制作を手がけるデザインココ(宮城県)によれば、3Dプリンターや3DCGといった制作技術はますます発展し、その作り方や表現の幅は広がっているという。

日本文化として、アートとして、そしてパートナーとして? 等身大フィギュアは今後、さらなる進化を遂げ、国内外へさらに広がっていきそうだ。

取材・文/川原田 剛
撮影/村上庄吾

川原田 剛

フリーライター

1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』を始め、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手掛けている。

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