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アムウェイ「取引停止令」が教えてくれる、なくならないマルチ商法の甘い罠と騙されないための3つのポイント

集英社オンライン / 2022年10月17日 19時1分

2022年10月14日、消費者庁は日本アムウェイが会社名や目的を明らかにしないまま、違法な勧誘を行っていたなどとして、業務の一部を6か月間停止するよう命じた。過去に筆者が経験したネットワークビジネスの内部事情や、マルチ商法に引っかからないための3つのポイントを解説する。

ネットワークビジネス(マルチ商法)とは何か?

先日、ネットワークビジネスを行っている日本アムウェイが会社名や目的を明らかにしないまま、違法な勧誘を行っていたなどとして、消費者庁は6か月間勧誘などの一部の業務を停止することを命じました。

そもそもネットワークビジネスを知らない人や「ネズミ講」との違いもわからない方もいると思うので、簡単に解説します。



基本的な理解としてネットワークビジネスはいわゆる「マルチ商法」という理解で問題ありません。そして、マルチ商法とネズミ講との違いは「実在する商品の有無」にあります。マルチ商法が商品の販売を目的とした組織であるのに対して、ネズミ講はもっぱら金品(配当)の受け渡しを目的とする組織であり、前者は合法、後者は違法です。

それ以外は非常に似た仕組みですが、ざっくり言うと、基本的には自分の紹介で入った会員が商品を販売したり他人を紹介したりすると、その一部が自分の利益になるような仕組みです。当然、会員になると商品を仕入れ値で購入できるので、それを一般価格で販売することで利益を手にすることも可能です。

アムウェイでは洗剤や化粧品など日用品の取り扱いが多数あった

しかし、いわゆるマルチ商法の甘い売り文句は、自分の紹介者が頑張ってくれると自分は何もしなくても収入が入ってくる、いわゆる不労所得者になれるよ、というものが多いです。

筆者も経験したマルチ商法の夢と現実の差

筆者も20歳の頃、友人からマルチ商法(日本アムウェイではありません)に誘われましたが、不労所得が主な勧誘文句でしたし、今回のアムウェイのように、会社名や目的を明らかにせずに勧誘されました。

具体的には、突然友人から連絡があり、食事に誘われ、「夢はないのか?」と聞かれ、返事に困っているとロバートキヨサキさんの著書『金持ち父さん貧乏父さん』を薦められました。不労所得の素晴らしさを説かれ、「すごい先輩がいるから会ってみないか?」と手引きされ、そこで初めて会社名を聞くという流れでした。

都市部にお住まいの方であれば、繁華街の喫茶店などでマルチ商法に勧誘されている人を一度は見たことがあると思います。

正直に言うと、筆者はその勧誘でネットワークビジネスに加入し、少しの期間活動をしたこともありますが、決して楽して不労所得を手にできるようなビジネスモデルではありません。

当時、そのグループの中で不労所得を手にしていたのは「プレジデント」や「アンバサダー」といった大層な肩書を持ったシンボル的な人のみで、多くはお金のない学生やフリーターのような人ばかりでした。今思えば、あの白いスーツを着ていた(噓ではなく本当に着ていました)シンボル的な人も、本当にお金持ちだったのかさえ疑わしいです。

また、活動自体も地味で、ひたすら友人知人を勧誘していかないといけませんし、友人に連絡しても「マルチ?」と当たり前のように疑われ、結果として友人も失いました。それでも続けなければ収入にはなりませんので、続けていく必要があり、友人が尽きれば新規開拓も必要になってきます。

やっていることを簡単に言ってしまえば、ゴリゴリの営業です。今だからわかりますが、そこで結果を出せる営業能力があるのであれば、完全成果報酬制の保険営業をやっている方がよほど現実的です。その営業能力があれば年収1000万円くらいは達成できるはずです。

甘い誘惑に騙されないための超基本的な3つのポイント

ネットワークビジネスはれっきとしたビジネスの一つの形であり、CMなどせずクチコミで広げることでコストを抑えるという仕組みです。だからこそ合法なのですが、勧誘方法が悪質というのが、今回のアムウェイの問題だったのです。

この勧誘時によく利用される夢のある話ですが、残念ながら世の中にはそうそうおいしい話は転がっていないのが現実です。

しかし、いざ夢のある話を聞くと冷静でいられないのも事実なので、なぜおいしい儲け話がそうそうないのか、その理由を一緒に考えてみましょう。

考えるポイントは3つです。

① 合法かどうか?
② 合法ならなぜ自分にその話が回ってきたのか?
③ なぜ自分以外の人はスルーしたのか?


あなたの元においしい儲け話が転がってきたとします。まず、ここで真っ先に考える必要があるのは、「合法なのか違法(詐欺)なのか」です。詐欺であれば論外なので、ここではまず詐欺ではないと仮定しましょう。

次に本当においしい儲け話であれば、なぜ自分の元に来たのかを考えてみてください。

基本的に投資話などは資産家から話が回っていくものです。事実ヘッジファンドなどに投資をしたい場合は最低1000万円、ファンドによっては億単位が必要となります。

もし自分より先にこの儲け話を聞いている人たちがいたとしましょう。普段このような話に縁の無い自分にまで儲け話が来たと言うことは、先に聞いた人たちは、この儲け話を見送っている可能性があります。

なぜ見送ったのでしょうか? ここは真剣に考えるべきです。

騙されやすい人の特徴

騙されやすい人は儲け話が回ってきた理由を真剣に考えずに、本当に幸運で稼げる話が転がり込んできたと思い込みます。

理由はいくつかありますが、その一つに「人間は自分が信じたいと望むようなことを自分から望んで信じる」からです。本当であれば嫌々している仕事を辞められるかもしれないし、憧れのタワマンを買えるかもしれません。

信じたい情報だけを信じる、都合の良い情報しか見られなくなる傾向は行動経済学で「確証バイアス」と言われています。

さらに人の持つバイアスの一つに「後悔回避(Regret Avoidance)」があり、人はやらなかった後悔を強く持つ傾向があります。この儲け話は正直信じられないと思っているけど、それでも本当だったらやらなかったことを後悔するので、だったらやってみようとなるわけです。

このように冷静に考えればおいしい儲け話はないことがわかるのですが、それでもいつまで経ってもこんな事例がなくならないことにも理由があるということです。

「人は合理的に考えることを咄嗟にはできない」ということを行動経済学は教えてくれます。それを理解しておくだけでも悪質なネットワークビジネスに引っかからない可能性が増すと思いますので、参考にしてください。

文/井上ヨウスケ

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