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過去最高売上528億円を記録。「ハーゲンダッツ」が見せた価値観の変化への対応力

集英社オンライン / 2022年10月22日 15時1分

市販のアイスクリームの中でも、不動の人気を誇る「ハーゲンダッツ(Häagen-Dazs)」。コロナ禍においてもその勢いは衰えず、2021年12月期には過去最高の売上高528億円を記録した。多くのアイスクリーム商品が市場にひしめく中、なぜ好調を維持できるのか。マーケティング本部マネージャーの田子薫氏にその理由を訊いた。

アソートタイプや片手で食べられる定番商品が伸長

コロナ禍という厳しい市況の中でも過去最高売上を達成できた要因について伺うと、「コロナ禍で増えた巣ごもり消費が加速し、家でアイスクリームを食べる機会が増えたのが大きい」と田子氏は話す。

「2020年のコロナ禍に入った初期は、先行き不透明な社会情勢の影響から、消費者の生活防衛意識が働き、嗜好品は二の次でマスクや除菌スプレーを買い求めていたため、厳しい状況でした。そこから『ステイホーム』が叫ばれ、まとめ買い需要やプチ贅沢志向の高まりからハーゲンダッツのアソートタイプの売上がコロナ禍以前よりも伸長しました。また、テレワークの常態化によって『バー』や『クリスピーサンド』といったワンハンドで食べられる商品のニーズも高まりました」


1箱でいろんなフレーバーが楽しめるアソートボックス

そして、2021年はハーゲンダッツにとって節目と言える年だった。

“タコス”をヒントに開発された日本発の「クリスピーサンド」が発売20周年を迎え、さらには日常の中のさまざまなご褒美シーンに向けたブランドコミュニケーション「ハローしあわせ。」を発表。

テレビCMやYouTubeでも配信されている

新しいブランドコンセプトのもと、レギュラー商品で最も人気の高い「バニラ」の香りにフォーカスしたマーケティングを展開したのだ。

新規ユーザー向け「新商品」がすべてヒット

なかでも新規ユーザー拡大を目標に、全社をあげて注力した「新商品」シリーズが全てヒットしたのが、過去最高売上を叩き出した大きな要因になっているという。

「新規ユーザーとは、直近1年くらいハーゲンダッツから遠ざかっているユーザーのことです。再びハーゲンダッツに魅力を感じて購入しようと思ってもらうためには、見た目でそそられる美味しそう感はもとより季節感や安心感、ワクワク感が伝わるような商品を開発することが大事になってきます。こうした意識のもと、ユーザーに寄り添った商品を季節ごとに販売し、話題創出や需要喚起を図ってきました」

ハーゲンダッツは毎月1~2品ほどの新商品を出しているというが、とりわけ全社が一体となって力を注ぐシリーズ商品は、販売計画上においても重要となってくるわけだ。

2021年3月に発売した「Decorations(デコレーションズ)」の2品は、ザクザクやパリパリとした食感とアイスクリームが織り成すぜいたくな味わいが好評を博し、GW時期の4月に出した「バニラ&クランチショコラ」も特別感や贅沢感を楽しめるフレーバーとして人気を博したという。

“Decorations”シリーズの定番「アーモンドキャラメルクッキー」と新作「抹茶チョコレートクッキー」

「2019年からパッケージを商品を並べた際の色鮮やかさや華やかさ、そしてフレーバーを食べた時の体験や価値、雰囲気が伝わるようなビジュアルに刷新していました。こうした下地がありつつ、営業が小売・流通チェーンと店頭づくりについて交渉を重ね、新商品を出したタイミングでお客様に手に取ってもらえやすいように販促を工夫したりと、地道な努力が実ったと考えています。

また、商品開発についても、時流やトレンドを抑えつつ、ハーゲンダッツらしい高級感や上質なアイスクリームとは何かを意識し、“手の届く贅沢感”が味わえる商品として『Decorations』を投入したところ、家でのライフスタイルを充実させるプチ贅沢志向ニーズを捉えることができました」

流行や話題を“ハーゲンダッツ流”に解釈

新商品を出して予想以上の反響があれば、小売・流通チェーンからの評価につながり、店頭での販促施策も行いやすくなる。

2021年7月には夏季限定の特別なストロベリーアイスクリーム「濃苺(こいちご)」、9月には華もちシリーズの「吟撰(ぎんせん)きなこ黒みつ」と「香ばしみたらし胡桃(くるみ)」を発売。シーズナル商品を立て続けに市場へ投入することで、ハーゲンダッツのプレゼンスをさらに高めることに成功した。

期間限定商品の“華もち”シリーズ

これら5つの新商品が空振りに終わらず、どれもユーザーの心を掴み、多くの購買につながったことが過去最高売上を達成した大きな理由だと言えるだろう。

今年度は前年比2%増の売上高536億円を目指しているハーゲンダッツだが、消費者に飽きられないために商品開発でどのような工夫を凝らしているのか。

「ふたつとないフレーバーの選定には、世の中の流行や話題を“ハーゲンダッツ流”に解釈し、どうしたらブランド想起をしてもらえるかを考えています。ネーミングやパッケージ、SNSでの打ち出し方などさまざまな要素があり、例えば2022年10月に出した『悪魔のささやき』の2品は、手に取らずにはいられない悪魔的な美味しさに着眼し、“病み付き”や“沼”といった言葉がはまるようなアイスクリームを具現化するのを目標に商品開発してきました。

新作“悪魔のささやき”シリーズ

発売前にTwitterキャンペーンでWebCMに出演する声優の名前を当てるプロモーションを実施し、その動画は2日で39万再生されるくらい反響がありました。そのおかげで、昨年の『華もち』シリーズの初動を上回る販売数を見せているような状況です」

多様化する「ご褒美シーン」を取り込めるかが肝

また、最近の消費者調査ではF1層(24~34歳)の女性の価値観に変化が生じているという。

「ハーゲンダッツではメインターゲットをF1層(24~34歳)の女性に設定しています。かつては、特別なシーンや非日常を味わうためのご褒美需要がメインでした。それが最近では日々過ごす日常の中で、ちょっとしたご褒美を味わいたいと考える方が増えているのが調査でわかってきました。

コロナ禍で家にいる時間や自分の生活を見つめ直す時間が増えたのもマインドの変化につながっていると考えていて、頑張った自分を褒めたい、疲れている自分を労いたい、癒されたい、のような日常のいろんなシーンにハーゲンダッツが入っていけるようなコミュニケーションを、今後も継続していく予定です」

だが、まだ先が見えないウィズコロナの時代だからこそ、「アゲインスト(向かい風)を見極め、チャレンジしていくことが肝になる」と田子氏は気を引き締める。

「10月から全国旅行支援が始まり、消費者の意識も外に向き始めるため、これまでの巣ごもり需要の落ち着きが予想されます。こうしたなかでも、旅先でハーゲンダッツを食べてもらうなど、いかに色々なモーメントでハーゲンダッツを手に取ってもらえるかを考えるのが使命であり、今後も取り組んでいくべきことだと認識しています。これからもお客様の期待を超える商品を届け、喜びと感動が提供できるよう尽力していきます」

何種類食べたことある? ハーゲンダッツのカップアイスクリーム(すべての画像をクリック)

取材・文/古田島大介

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