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駒大エース・田澤廉がラストイヤーに直面する逆境。駅伝三冠に求められる完全復活

集英社オンライン / 2022年10月20日 10時1分

大学駅伝開幕戦の出雲駅伝で、駒澤大の田澤廉は3区を走りチームの優勝に貢献。大会直前に胃腸炎を発症し、万全ではない中で力を見せた。しかし振り返れば田澤は今年度、本来の実力を発揮できていない。絶対エースは全日本、箱根へ向けて復活できるのか。

“田澤の走りはこんなもんじゃない”

10月10日に開催された出雲駅伝は、大混戦の予想を覆し、駒澤大が2区から独走で優勝を飾った。6区間中3区間で区間賞、残りの3区間も区間2位という完勝だった。

その駒大には、学生の枠を超えて活躍を見せる大エースがいる。

4年生の田澤廉。

昨年度は3年生にしてチームの主将を務め(今年度は同級生の山野力に引き継いだ)、今夏はオレゴン世界選手権で日の丸を付けた。



今回の出雲駅伝では各校のエースが集う3区に登場。区間賞こそ創価大の留学生、フィリップ・ムルワ(4年)に譲ったものの、2位との差を20秒に広げ、チームの勢いをさらに加速させた。チームのエースとしての役割を果たしたといえるだろう。

出雲駅伝で9年ぶり4度目の優勝を果たした田澤廉(右から3番目)ら駒大選手ら 写真/共同通信

しかしながら、“田澤の走りはこんなもんじゃない”と思った駅伝ファンも多かったのではないだろうか。トラックの10000mの自己記録は田澤のほうがムルワよりも10秒以上速い。

今年1月の箱根駅伝2区でも田澤が区間賞で、ムルワが区間2位だった。だが今回の出雲では8.5kmの距離でムルワのほうが14秒も速かったのだ。日本人トップの区間2位という成績は、田澤にとって最低限の走りにすぎず、本領を発揮したとはいいがたかった。

それもそのはず。田澤は自身の状態を「正直、最悪でした」と話す。

「1週間前に感染性胃腸炎になって、レース中もどこでお腹が痛くなるのかなって、そういう頭になっちゃっていました」

その不安は的中し、レース終盤に腹痛に見舞われたが、なんとか耐えてタスキをつないだ。

駒大の大八木弘明監督も、盤石なオーダーを組みながらも「田澤が一番心配だった」と、レース後に明かした。

「本当はアンカー(6区)を任せる予定でしたが、距離が短いほうがいいだろうと、田澤には2区か3区を提案しました。本人が『3区に行きます』と言ってくれたので、3区に起用しました」(大八木監督)

最長区間の6区10.2kmに対して3区は8.5kmと少しだけ短い。両区間とも重要な区間であることに変わりはないが、次期エースの鈴木芽吹(3年)が長期の故障から復帰し起用の目処が立ったこともあって、田澤は3区に回った。

「日本人選手に負けないと思っていたんですけど、体調が悪くなった時点でちょっとやばいなと思いました。でも、それで逃げちゃダメだって思ったので3区を志願しました。ぎりぎり日本人トップを獲れたので、役割を果たせたことはよかったなと思いますけどね」

チームは、出雲、全日本、箱根の学生三大駅伝で三冠を目指しており、出雲でひとつ目を獲れたこともあって、田澤はひとまず胸を撫で下ろした。

会心の走りができていないラストイヤー

出雲は直前に体調不良という明らかな要因があったが、実は今年度に入ってから田澤はなかなか会心のレースを見せられずにいた。

「疲労が抜けきれていないのか、自分が万全な状態で走れたのは、金栗(金栗記念選抜陸上中長距離大会)以降はないんですよね。そこから体調を崩しちゃったりしているので……」

シーズン初戦となった4月9日の金栗記念選抜は5000mに出場し、東京国際大の留学生、イェゴン・ヴェンセント(4年)と競り合いながら、13分22秒60の自己ベスト記録をマークしている。

金栗記念選抜で田澤は自己ベストをマーク

東京国際大のイェゴン・ヴェンセント(左)と話す田澤

東京五輪5000m代表の坂東悠汰(富士通)、リオデジャネイロ五輪に3000m障害で出場した塩尻和也(富士通)といった実績のある選手も出場していたが、「自分は負けない。日本人トップを獲るのは当たり前だと思っていた」と自信をもって臨んでいた。そして「本職ではない」という5000mで、堂々と日本人トップの5位に入った。

しかし、上々のシーズンインを迎えたかと思いきや、その勢いを維持することができなかった。

オレゴン世界選手権の切符がかかった5月の日本選手権10000mは10位に終わり、前年の2位から大きく順位を落とし、即内定とはならなかった。

その後、追加で日本代表となったものの、初めての世界選手権でも辛酸をなめた。田澤の実力をもってすれば決してついていけないペースではなかったはずだが、終盤の勝負どころを前に振り落とされてしまい20位に終わっている。

そもそも、昨年度は10000mのレースで、トップランナーの証とされる27分台のタイムを安定してマークしていたが、今年度はまだ27分台に届いていない。

全日本は「万全な状態で走りたい」

田澤といえば、留学生のごとき活躍から、SNSなどでは冗談めかして“レン・タザワ”と表記されることが多い。どんな状態であっても、日本人トップの座を譲らなかったのは、さすがとしかいいようがないが、田澤がいうように万全な状態で臨めず、しばらく他の日本人選手を圧倒するようなレースを見せられていない。もっとも、出雲で田澤に1秒差の区間3位だった青学大の近藤幸太郎も相当な実力の持ち主ではあるが……。

ともあれ、“大エース田澤頼み”ではなくとも、総合力で優勝をつかんだことは、駒大の選手たちにとっても大きな自信になったに違いない。

「全日本大学駅伝は、しっかりと万全な状態で走りたいなと思っています」

11月6日の全日本こそ、田澤は会心のレースを見せるつもりだ。

ちなみに、全日本で田澤は、これまでの3年間全て区間賞を獲得している。2年前はアンカーを務め東海大との接戦を制し、昨年は7区で3人を抜きトップに立つ活躍を見せた。そして、いずれの大会もチームは頂点に立っている。

田澤が万全な状態で駅伝に臨んだとき、駒大はますます手がつけられないチームになっていそうだ。そして、出雲に続き、全日本、箱根と、チーム史上初の三冠がぐっと近づく――。

取材・文・撮影/和田悟志

和田悟志

ライター

1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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