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ロボットの恋心、自尊心、人間との触れ合い……切なすぎて感涙必至のAI映画5選

集英社オンライン / 2022年10月21日 16時1分

いくら技術が進歩しようと、“人格”を得て感情を持つようになるAIは、現時点ではフィクションの中にしか存在しない。機械が感情を持つ切なさを描いた、名作映画を紹介する。

人とAIロボットとの魂のふれあいを描く
『アフター・ヤン』(2021)After Yang 上映時間:1時間36分/アメリカ

左からジェイク(コリン・ファレル)、カイラ(ジョディ・ターナー=スミス)、ミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)、ヤン(ジャスティン・H・ミン)
© 2021 Future Autumn LLC. All rights reserved.

気鋭の韓国系アメリカ人監督コゴナダの新作『アフター・ヤン』(2021)が描く世界は、“テクノ”と呼ばれる、人間そっくりの高度なAIロボットが一般家庭でも導入されるようになった未来世界。



コリン・ファレル演じる主人公ジェイクは、妻のカイラ、中国系の養女ミカと暮らしていた。ミカのベビーシッター用に、大金を払って中古のAIロボットであるヤンを購入。ヤンは家族の一員としてミカを慈しみ、その成長を見守ってきた。

映画は、そのヤンが突然、故障したところから始まる。お兄ちゃんのように慕っていたヤンの不在にふさぎ込むミカを見かねたジェイクは、修理業者に相談するものの、再起動は無理とわかる。そして、ヤンの体内に毎日数秒間だけ動画が保存される特殊なメモリーが組み込まれていたことを知り、それを再生することでヤンが何を記憶に留めてきたのかを追体験する。

ヤンの“記憶”の中には、両親の実の子ではないと友達に言われて動揺したミカを、接ぎ木の例えを用いて優しく説明する姿や、ジェイクたちに買われるよりも前に、いくつかの世帯で、何世代か前の人たちと過ごした記憶も保存されていた。

そして、ヤンがめぐり合った謎の若い女性の姿が。それは、ヤンの“心”の中に生じたある感情を示唆するものだった。

なんと言ってもヤンを演じたジェスティン・H・ミンの抑えた演技が素晴らしく、失ってしまって初めて知るジェイクとヤンとの心の絆に感動させられる。AIであるヤン自身に生じていた“感情”に、切なくなること必至だ!

キューブリックの原案をスピルバーグが映画化
『A.I.』(2001)A.I. Artificial Intelligence 上映時間:2時間26分/アメリカ

右からデイヴィッド(ハーレイ・ジョエル・オスメント)と、共に旅をするセクシーなジョー(ジュード・ロウ)
Everett Collection/アフロ

コンピュータが“感情”を持つ恐ろしさを描いた映画といえば、スタンリー・キューブリックの名作『2001年宇宙の旅』(1968)。実は彼はもう1本、AIが感情を持つ未来の物語の映画化を企画し、果たせぬまま亡くなった。そのキューブリックの原案をスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化したのが、その名もずばりの『A.I.』(2001)だ。

人間と同じ愛情を持つ少年型ロボットとして設計されたデイヴィッド(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は、不治の病に侵されている息子・マーティンを冷凍保存しているロボット製造会社社員ヘンリーと、プログラマーの妻モニカ夫妻に引き取られる。モニカはデイヴィッドに対して、母としての自分を愛するようにプログラムする。だが、マーティンが奇跡的に病を克服して目を覚まし家に戻ると、デイビッドは森に捨てられてしまう。

母恋しさを胸に放浪するデイヴィッドは、途中でセックス・ロボットのジョー(ジュード・ロウ)と知り合って旅を続け、ピノキオのように人間の男の子になる夢を抱きつつ意識を失う(機能停止する)。やがて2000年が経ち……という寓話的物語。

キューブリックは、『2001年宇宙の旅』の技術コンサルタントとして招聘した(が、断られた)ほどの手塚治虫ファンで、『A.I.』のアイディアの源泉が『鉄腕アトム』にあることは疑う余地がない。

アトムは事故で息子トビオを失った天馬博士が、息子の身代わりとして作ったロボット。いつまでたっても成長しない(ロボットなので当たり前だが)ことに腹を立てた天馬博士によって森に捨てられてしまい、サーカスに拾われて見世物になっていたところを、お茶の水博士に発見されたという背景がある。

デイヴィッドもまた、息子を失った天才科学者ホビー教授(ウィリアム・ハート)が、死んだ息子そっくりなロボットとして設計したという設定。母親の愛を求め続けるロボットというのが、実に切ない物語だ。

人間に愛されたいのはAIの欲望か、それとも戦略か?
『エクス・マキナ』(2014)Ex Machina 上映時間:1時間48分/イギリス

アリシア・ヴィキャンデルの美しさが際立つ映像も話題に
Everett Collection/アフロ

スタイリッシュな映像でアカデミー特殊効果賞を受賞した、アレックス・ガーランド監督の『エクス・マキナ』。

検索エンジンの会社で巨万の富を手に入れ、人里離れた山の中に孤独に暮らす天才社長ネイサン(オスカー・アイザック)から、社員の中でただひとり、別荘に招待されたプログラマーのケイレブ(ドーナル・グリーソン)。

物語は、ネイサンの開発した美しい女性型のAI搭載ロボット“エヴァ”(アリシア・ヴィキャンデル)のチューリング・テスト(AIの知的レベルが人間と見分けがつかないほど高いかどうかを判定するテスト)を依頼されるところから始まる。

エヴァには、人間の女性と同じように愛されたい、愛したい、という感情が芽生えているように見える。ところが、それは単にそうプログラムされているだけなのか、研究所の外に出て、人間と同じような幸せを掴み取りたいという、感情の進化なのか判断がつかない。

やがてケイレブは、別荘の外に出たいと願うエヴァの切ない想いを信じて協力しようと心を決める。ところが、エヴァの考えていたことは、ケイレブやオスカーにすら想像のつかないことだった……。この映画がエヴァを通して描きたかった本当の目的はなんなのか。その衝撃の展開を、ぜひ自分の目で確かめてほしい。

T-800が35年の歳月をかけて進化
『ターミネーター』(1984)The Terminator 上映時間:1時間47分/アメリカ

アーノルド・シュワルツェネッガーの代表作に
Collection Christophel/アフロ

2029年、AIの軍団が人類に対して戦争を仕掛け、生き残った人間の抵抗軍と激しい戦いを繰り広げていた。AIは、のちに抵抗軍のリーダー、ジョン・コナーを生むことになる女性サラ(リンダ・ハミルトン)を抹殺するために、殺人マシンT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)を、1984年のロサンゼルスに送り込んだ。抵抗軍は、これを阻止するために戦士カイル(マイケル・ビーン)を送るが……。これが『ターミネーター』の物語だった。

続編『ターミネーター2』(1991)では、サラと息子のジョン(エドワード・ファーロング)を抹殺しようと送り込まれたのは、更に進化したT-1000だった。だが、未来のジョンが自分を守るべくプログラム変更して送り込んだT-800が再び現れ、母子のピンチを救う。

『2』のラストでT-1000を溶鉱炉に葬り去り、自分の存在が未来の人類の脅威となることを悟って自ら溶鉱炉へ身を沈めていくT-800。ジョンの涙を見て「泣く気持ちがわかった。泣くことはできないが」と呟く切ない名シーンは、ロボットの感情の芽生えを感じさせ、ファンを唸らせた。

その後のシリーズは3本の続編群を経て、『ターミネーター2』とダイレクトに繫がる『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019)へ帰結した。T-800がその後、どのような進化を辿ったのか。そのドラマティックな泣ける展開は必見だ。

“レプリカント”の生への渇望に涙
『ブレードランナー』(1982) Blade Runner 上映時間:1時間57分/アメリカ

デッカードを演じたハリソン・フォード
Photofest/アフロ

最後に、人の手によって“人に近いもの”が感情を持つようになる、というテーマとしては最も早い時期に作られた、リドリー・スコット監督の名作『ブレードランナー』(1982)に触れておかなくてはならないだろう。

フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』に基づいて作られた『ブレードランナー』は、原作のアンドロイドを、レプリカントと呼ばれる人造人間として描いている。

たった4年の寿命に設定されたレプリカントたち。ところが、製造から数年経つと感情が芽生え、人間に反旗を翻す事件が起き始める。宇宙の過酷な労働現場を脱出し、地球に潜入した4名のレプリカントたちは、自分たちを作ったタイレル社の創業者タイレル博士に会って寿命を長くしてもらおうと考える。しかし、技術的に不可能であることを知り絶望してしまい……。

そんなレプリカントを追う元専任警察官“ブレードランナー”のデッカード(ハリソン・フォード)は、レプリカントのリーダーであるロイ(ルトガー・ハウアー)との闘いの中で、ビルから転落しそうになったところを助け上げられ、ロイは寿命を迎えて死んでいく。助かったデッカード自身は、タイレルの秘書だったもう一体のレプリカント=レイチェル(ショーン・ヤング)と共に逃避行の旅に出る……。

レプリカントはロボットではなく、人造の有機物から製造されたという設定だからAIとは異なるものの、テーマとしては昨今の“機械が感情を持つ切なさ”を描いた映画と同じ。80年代当時の映画ファンは、ロイを演じるルトガー・ハウアーの切なさに涙したものだった!


文/谷川建司

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