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「子供は贅沢品」なのか? いまや圧倒的少数派である子育て世帯に突きつけられる危うい未来

集英社オンライン / 2022年10月25日 18時1分

今年10月受給分から児童手当制度が変わり、所得制限上限額を超えている世帯は、子供が何人いても児童手当が受け取れなくなった。これについてTwitter上では批判意見があふれているが、同時に「子供は贅沢品」という声があるのも事実。なぜ、そう言われるのか? 子育て支援が進まない理由を知るべく、日本の厳しい現実を見ていこう。

子育て世帯は日本全体の21.7%しかいない

Twitterをよく利用している人からするとそのつぶやきは民意のように感じる方も多いかもしれませんが、Twitterを利用しているのは社会全体の一部ということを理解する必要があります。例えば、選挙の時期になると特定の政党や候補者が毎日のようにトレンドに上がりますが、当選結果を見ると民意との差を感じることが多々あります。



まずは、日本の現状として「子育て世帯数」の圧倒的減少という数字を見ていきましょう。「2019年 国民生活基礎調査」によると、2019年度に児童のいる世帯数は児童数1人の世帯が全体の10.1%、2人は8.7%、3人以上は2.8%となっており、合計すると21.7%となっています。

1986年には児童のいる世帯数が46.3%を占めていたのに対し、現在では半数以下に落ちていることがわかります。ここでいう児童とは「18歳未満の未婚者」を指していますので、大学生で子供がいる人は除かれますが、それでも少数派になっていることがわかります。

生涯未婚率は高いが、結婚願望も高い日本

さらに日本の現状を理解するために、生涯未婚率と未婚者の結婚意識について見てみましょう。

まず、いわゆる生涯未婚率と呼ばれる50歳時の未婚率を表したグラフを見ると男性は28.3%、女性は17.8%となっています。

この人たちの中には結婚を望んでいない人もいると思いますが、一方で日本人は諸外国に比べて結婚願望が強いと言われています。

第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)でも、18~34歳の未婚者に結婚に対する意識を聞いた調査では、男性81.4%、女性84.3%は「いずれ結婚するつもり」と回答しています。

さらにグラフを見ると、年々「一生結婚するつもりはない」と回答している割合も増えてきてはいますが、結婚願望は40年前から引き続き、ある程度高いことがわかります。

同調査によれば、独身でいる理由には25〜34 歳では、「適当な相手にまだめぐり会わないから」の選択率がもっとも高く、男性の43.3%、女性の 48.1%がこれを挙げたとあります。

また独身の利点として「行動や生き方が自由」という回答が男女ともに70%以上あり、男性の4人に1人は「金銭的自由」をあげています。また結婚相手に求める条件では女性が男性に経済力を求めている人は80%と依然として高く、近年では男性も女性に経済力を求める傾向が増しています。

このように金銭的な理由で結婚をしていない単身者も一定数いると想像できます。金銭的な理由で結婚できなかった人、または結婚しても金銭的な理由で子供を産まなかった人からすると「子供は贅沢品」になるのかもしれません。

年金制度が子供の自由な生き方を可能にしたが…

日本の世帯の割合としては単身者世帯が多数を占める国になりつつあり、2015年時点で単身世帯が約35%を占めており、2040年には40%に達すると言われています。

そもそも、なぜ単身者が増えるようになったのでしょうか。要因はたくさんありますが、そのひとつに年金制度などの社会保障制度が考えられます。

今の時代は自分の親は親の年金で生活することが一般的ですが、年金制度が導入される前は親は子供が面倒を見るのが一般的でした。これは「私的扶養」と呼ばれる状態です。

しかし、年金制度が導入されることにより自分の親を自分一人で面倒を見るのではなく、社会全体で扶養するようになりました。これを「社会的扶養」と言います。つまり、年金制度が親を扶養してくれるおかげで子供世代は自由な選択をすることができるようになったわけです。

筆者は長男でありながら、親と離れて生活しています。これも年金制度のおかげでしょう。年金がない場合、仕送りという手段もありますが、やはり同居する方が金銭負担は軽減されますし、そういう意味では年金制度がないと成立しないと思っています。

しかし、この状態ではジレンマが生じます。親を社会的扶養できたおかげで子供の生き方の選択肢が増えました。結果、子供を持たないという選択肢ができましたが、年金制度は次の世代がいるおかげで成り立つものです。

いわば年金制度が年金制度の首を絞める状態になっているわけです。

これは日本に限らず、先進国は少子化の傾向があり、年金制度のためにも少子化対策が必要となりますが、日本は手を打つのが遅すぎました。

少子化対策のために税金を使うと政府が発信した際に、子育て世帯が多ければ支持を得られるでしょうが、いまや子育て世帯は多数ではありません。この国の多数派は高齢者であり、単身者です。

「子育て支援」を国民は本音で支持するのか?

現在、日本という国は低負担中福祉の国家となっています。CECD加盟36カ国の比較で見ても、日本は下から数えた方が早いほど国民負担率が低い国となっています。また内訳を見たときに税負担より社会保険料負担率が他国と比較すると多いことがわかります。

この社会保障費の使い道を見ても、高齢者向けの支出が多く、反対に家族向けの支出が低くなっています。

そのため、高齢者への支出を減らして、子育て世帯に向けろという意見もありますが、今の子育て世帯も近い将来、高齢者になります。社会保障費の移し替えをしても現役世代の将来不安に繋がるのであれば、少子化対策と言う意味では根本解決にはなりません。

また現在は国債発行に頼りすぎているため、将来的には低負担低福祉をめざすか、中負担中福祉をめざすのかを迫られる時が来るでしょう。この時に国民はどちらを選ぶのでしょうか?

仮に増税をするとしても、自分たちの人生を豊かにするためにあえて子供を持たない選択をした人たちや経済的に困窮している単身世帯は、子育て支援のために増税を受け入れるでしょうか?

政治とは匿名であり、「本音と建て前」の本音で投票するものです。そして政治家は数が取れない政策は選ばないものです。少数派となる子育て世帯にとっては悲しいですが、これが現実です。

筆者には子供はいませんが、それでも子育て支援のための増税なら支持します。それは年金制度でわかるように、子供のいない世帯にとっても大切な存在だからです。

何も決めない政治が行き着く先が低負担低福祉国家であれば、それは次の世代にとっては今より生きづらい国であり、それは避けるべき未来ではないでしょうか。

文/井上ヨウスケ

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