―― 沼田さんは、関連書(『満点ゲットシリーズ ちびまる子ちゃんの自由研究』)も含めると同シリーズの監修を、本書を含めて7冊手がけられています。どんな思いで監修をされてきたのでしょうか。
今、世の中にすごく情報があふれているから、これまでだったら、子どもたちが誰かからの口伝えで知ったようなことも、口伝えではなくなってしまったんです。例えば、性教育なんかその最たるもので、昔は先輩とか近い人から聞いていたのに、最近はTikTokや無料の動画なんかを見て、そういう世界に触れてしまう。先輩から聞く場合には、先輩の感想や助言なども一緒に聞けたわけだけど、インターネットの情報だと、等身大を遥かに超えて、度が過ぎているようなものもたくさんある。それは性教育に限らず、何でもそうなんですよ。
例えば、トップユーチューバーの人が勉強法について語る動画もたくさんありますが、ああいうのを作っている人はたいてい成功者で、元々勉強ができる人。友達付き合いも、そのノウハウ動画を作っている人は、元々それが上手な人が多い。すると、苦手な人にとってはできないことばかりなんです。このシリーズには『ラクラク勉強法』や『友だちづき合い』もあるけれど、そんなことから僕は、とにかく普通の子、それが苦手な子でもわかるようにというのを意識しました。ちなみにシリーズ内に『整理整とん』もあるんですが、これはもう、特に意識しなくても必然的に苦手な子向けになりました。僕、整理整頓が大の苦手なので(笑)。
―― 得意な人が作ったものは苦手な人には実践できないというのは、まさにその通りかもしれませんね。
そうなんですよ。そういう意味でもこの「ちびまる子ちゃん」が絶妙にいいんです。いろんなことにおいて、全然できないわけでもなく、やったらできそうだけど「できない人代表」みたいな位置にいるから。そういう子って自分でハッと気がついた瞬間伸びてくるんです。シナリオライターさんの力も大きいと思いますが、このシリーズは、いつもそういうドラマがきちんと見えるから、終わり方も美しいんですよ。
―― その「ハッと気がつく瞬間」というのは、どういうときにやってくるものなのでしょうか。
やっぱり、その問題が「自分ごと化」されたときでしょうね。大人もそうですが、自分ごと化されれば人間は勝手にやるので。裏返すと、やる人や上手な人というのは、自分ごと化されているからできるし、上手なんです。例えば、ここぞという写真を撮るときに痩せようと思うのもそれ。僕だって、もしグラビアのオファーが来たら、めっちゃ痩せる自信ありますもん。オファーが来ないから痩せないんです、はっきり言って(笑)。だからこのシリーズも、いかに子どもたちに自分ごと化してもらうか、というところに重きを置きました。学校の授業でも、自分ごと化してもらうために、「これを知っておくと、将来こういうときに役立つぞ」って伝えたり、ゲームやミッションにしたりして、自然と興味をもってもらえるよう工夫しています。