セックスの悩みについてのアンケートで、20〜30代の女性では「オーガズムに達することができない」と悩んでいる人の割合が最も多いという結果になりました。
オーガズムとは、快感が高まった末に性器が約0.8秒間隔でドクンドクンと脈打つように収縮し、呼吸数、心拍数、血圧が上昇している状態で、“イク”といわれることもあります。
しかし「イッたかどうかわからない」女性も少なくありません。男性の場合、オーガズム=射精で一目瞭然。女性のオーガズムはもっと多様で複雑、そして目で見てわかるものでもありません。
集英社オンライン / 2022年10月29日 17時1分
人には聞きづらいセックスのあれこれ。そのとき、私たちのアソコでは何が起きているのだろう。セックスで「濡れない」「イケない」のはなぜか、どう解決すればよいのかを、『産婦人科医が教える みんなのアソコ』(辰巳出版)から一部抜粋、再編成してお届けする。
セックスの悩みについてのアンケートで、20〜30代の女性では「オーガズムに達することができない」と悩んでいる人の割合が最も多いという結果になりました。
オーガズムとは、快感が高まった末に性器が約0.8秒間隔でドクンドクンと脈打つように収縮し、呼吸数、心拍数、血圧が上昇している状態で、“イク”といわれることもあります。
「イッたことがない」という女性も、実はクリトリスオーガズム=「外イキ」は経験しているケースが多いです。経験がないのは、挿入によるオーガズム=「中イキ」です。
中イキは外イキより快感の度合いが強い、あるいは深いというイメージが広まっています。
中イキへの願望には、すでに自分が体験しているクリトリスオーガズムより、“格上”の快感だろうという期待も含まれているのでしょう。
腟内のオーガズムポイントは、2カ所あるとされています。ひとつがポルチオ、もうひとつがGスポットです。
中イキこそオンナの幸せ?そんな“神話”に振り回されてしまうのはツマラナイ!(『みんなのアソコ』より)
ポルチオ=子宮腟部のことで、挿入で必ず刺激できる場所ではありません。腟の長さや子宮の角度、挿入の体位によっては、指や男性器がポルチオにタッチできないからです。
そしてタッチできたとしても必ずオーガズムに達するとはかぎらず、そこにふれられると気持ち悪いと感じる女性もいます。
腟全体が摩擦による痛みを感じていたら、ポルチオで気持ちよくなるのも無理でしょう。ポルチオに強い刺激を与えようと男性がピストン運動するほど、逆効果になります。
Gスポットは、子宮腟部と腟口の中間、腟壁の前側(お腹側)にあるとされています。しかしその実態には諸説あり、まだはっきりしたことはわかっていません。
Gスポットとは、クリトリスの脚の部分=海綿体を腟の内側から刺激しているのだという説もあります。
クリトリスは陰部神経とつながっていて、これは外性器から会陰、腟壁の入り口側に広がるものです。
そこで、クリトリスオーガズムでは外性器全体〜腟の入り口からやや奥のあたりが気持ちいいと感じられることがあるようです。
Gスポットがクリトリスの脚部分への刺激なのだとしたら、同じように感じられるでしょう。それに対してポルチオは骨盤内臓神経につながっているので、全身に快感が伝わるという説もあります。
感じ方の違いがあるとしても、それは「どちらが上」というものではないでしょう。
また、どんなに的確に刺激しても、体調がよくない、心配ごとがある、周囲がうるさくて気が散るなどセックスに集中できなければ、オーガズムどころか快感も十分に得るのはむずかしいです。
逆に、オーガズムがなくとも大好きな人と抱き合えた、一緒に気持ちが高まったと感じていれば、それはとても満足感のあるセックスなのではないでしょうか。
イクことにこだわりすぎるより、総合的な満足度を追求するほうがいいという考え方もあります。
それでもオーガズムを目指す場合、問われるのはお互いへの理解とコミュニケーションです。
女性の絶頂感とは、お互いの身体を知り、信頼し合ってリラックスした状態で身を委ね、委ねられた先にあるもの。その過程こそがふたりにとって気持ちいいのではないでしょうか。
「濡れない」ことについて、男性側から考えてみましょう。
相手があまり濡れていないと「自分の愛撫がよくないから相手は感じていない」と思い悩む。ここに大きな勘違いがあります。
まず、濡れる/濡れないは快感のバロメーターではありません。気持ちいいのに体液があまり分泌されない人もいますし、逆の人もいます。まして、相手への気持ちをはかる基準となるものでもありません。
濡れるとは、刺激を受けて腟の壁から血液の成分が透明になってにじみ出た状態です。外性器にあるバルトリン腺から出るものもあります。おりものと混同されることもあり ますが、おりものには子宮からの分泌物も含まれるため、成分が異なります。
濡れ具合は、女性の身体の状態に左右されることも多いのです。寝不足やストレス、風邪気味、生理周期、加齢、そして水分不足。ピルを飲みつづけることで、濡れにくくなることもあります。その場の努力ではどうにもならないことばかりです。
相手が目の前で落ち込んでいるのを見て、「濡れない自分が悪い」と責任を感じる女性も少なくありません。「同じことをして、前の彼女なら濡れたのに」といわれて傷ついたという女性もいます。
どんなふれ方であれ、異なる人から同じ反応が返ってくることは絶対にありえません。ふたりの女性がひとつの部屋にいたとして、気温の感じ方、汗の量が同じであるはずがないと考えるとわかるでしょう。そもそも、誰かと比べるのはマナー違反です。
加えて、適切でない愛撫で痛みが生じて濡れなくなることも、当然あります。
濡れていない状態で挿入行為にうつるのは、絶対にやめましょう。男性にはなんともなくとも、女性には痛みや不快感が出ます。ましてピストン運動は膣へのダメージが大きく、そこから快感に転じることはありません。
一度痛みを感じると、次のセックスのときも身構えてしまうので、後々まで影響があるといえます。
そこで役立つのが潤滑剤。潤いをプラスすることでスムーズな挿入をサポートし、ピストン運動時の摩擦も減らします。膣に入れても安全な成分のものを選びましょう。
潤滑剤を使いたいと相手に切り出したくても、相手を傷つけそうだと心配する女性がいます。
潤滑剤を提案するならベッドに入る“前”がベター。体調が変わって濡れにくくなった、薬のせいか潤いが足りなくなった、などと伝えると、相手も納得しやすいでしょう。
潤滑剤は、オンラインのほうが品ぞろえが豊富なので、ふたりで一緒に選ぶのもよいと思います。
潤滑剤は「濡れないから仕方なく使う」というマイナスをゼロにするアイテムではなく、ふたりのセックスをより楽しいものにしてくれるアイテムなのです。
「濡れない」のはあなたのせいじゃない。(『みんなのアソコ』より)
セックスとは気持ちがいいもの、というのは思い込みでしかありません。アダルトコンテンツで描かれるセックスでは、女性は必ず快楽に溺れます。しかしこれは、ファンタジーです。嫌がる女性が最後はオーガズムに達するのは、現実の出来事ではないのです。
こうしたファンタジーを見て「セックスはこうなんだ」と刷り込まれたのは男性だけでなく女性も同じで、だからこそ痛い、気持ちよくないセックスがつづくと「私がおかしいのかも」と悩みます。
しかし、それは違います。セックスとは、「安心できる関係性の相手」と「適切な方法で行われたときに」気持ちがいいものになるのです。
痛みの原因がはっきりしていることもあります。たとえば、処女膜が残っていて入り口が痛い、小陰唇が長めで挿入時に男性器とともに腟に巻き込まれるといった、性器の状態による痛み。
また、子宮内膜症で臓器と臓器がくっついているため、ピストン運動の刺激により腟の奥に痛みが出るケースもあります。
あるいは、適切でない愛撫です。腟に指を乱暴に出し入れすれば、摩擦によるダメージで 傷になることもあります。腟が濡れていない状態での挿入も同様です。
痛みで自分を責める必要はないけれど、セックスの快感をあきらめる必要もありません。その方法は、パートナーと模索するものです。
一度痛みを感じると、次からは身構えてしまい快感は遠のきます。再び楽しめるようになるには、ふたりでリカバリーすることが大事です。
女性の身体に原因があっても、痛みが出ない愛撫の仕方、体位などは、一緒に考えましょう。
婦人科で相談したほうがいいこともあります。処女膜や小陰唇の問題は、ごく簡単な手術で解消することがあります。子宮内膜症の治療後に、セックスを楽しめるようになる人もいます。
監修:髙橋怜奈 イラスト:竹井千佳
辰巳出版
2022年9月3日発売
1650円(税込)
15.1x1.5x21cm/160ページ
978-4777828845
「もっと早く知りたかった。何歳からでも読んでいい。あなたの選択肢が増える、カラダの教科書です」(益若つばさ)――。TikTokフォロワー12.9万人、YouTuberとしても人気の産婦人科医・髙橋怜奈医師が監修した書籍。
色や形、におい、生理、病気、脱毛やセックスなど、「女性器」にまつわるさまざまな疑問や悩みを共有し、わかりやすく解説します。
外部リンク
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