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男一匹・車中泊の旅で見たニッポンの原風景〜秋の飛騨高山から白川郷へ

集英社オンライン / 2022年10月29日 15時1分

中古のおんぼろエブリイを自力カスタムし、“行き当たりばったりの自由な旅”を実現できる車中泊の旅を始めてみた。2度目となる旅は、日本の原風景をもとめて飛騨高山へ。相棒のクラシックカメラの成果とともに旅日記をお届けする。(秋の車中泊・第2回。第1回はこちら

岐阜・高山からの移動中、ダム湖の周辺で思ったこと

DAY.3(3日目)

10月のなかば、5泊6日の予定で車中泊の旅に出た。
目指すは、本州中心部にある日本の原風景。
岐阜県に残る、古い街並みや建造物を見に行くのだ。

初日は、山梨県・山中湖村の自宅から出発した時間が遅かったので、すぐに日が暮れてしまった(山梨県・小淵沢で車中泊)。
翌日は雨に祟られ、移動だけに費やした1日となった(岐阜県・飛騨市で車中泊)。


そして3日目、僕が運転する車中泊専用車スズキエブリイ号は、高山市を目指している。

岐阜県北部、飛騨地方に位置する高山市は“飛騨の小京都”と呼ばれ、古い商家が建ち並ぶ街並みが、たくさんの観光客を惹きつけている。

男一匹・車中泊旅は、何事も早く動けるのがいい。
朝8時に、道の駅アルプ飛騨古川にとめたエブリイの車内で目覚めた僕は、すぐに身支度を整えて移動を開始。
道中のコンビニで適当な朝食を済ませ、9時前には高山の散策を開始していた。

市街中心部・上三之町の、時代劇からそのまま飛び出してきたような街並みは圧巻だった。
これこれ、こういう街が見たかったのだ。

高山市の中心地、上三之町

高山市の古い街並み

アサガオが似合う街

街じゅう、きれいな水路が張り巡らされている

ワクワクしながら、あちらの通りこちらの通りと1時間半ほど歩き回り、すっかり満足した僕は次なる目的地を目指し、国道158号に乗って高山市をあとにした。

移動の途中で見つけた、大きな水車が目印の「荘川の里 心打亭」という蕎麦屋で昼食をとる。
注文したのは、ざる蕎麦と舞茸天ぷら。
秋の味覚、満足なり。

旅の空で食べる蕎麦は格別

駐車場にある水車は実際に蕎麦を挽いている

国道158号から156号へと移り北上していくと、進行方向の右側に御母衣湖(みぼろこ)という静かな湖が現れた。
地形や岸の様子から、明らかに川を堰き止めて作った人造湖だということがわかる。

誰もいない御母衣湖

スマホで調べてみると、1961年に完成した御母衣ダムによって生まれた湖で、湖底には当時1200人・174世帯が住んでいた230戸の家が沈んでいるのだそうだ。
ダム建設のため立ち退きを要求された住民を中心に、当時は激しい反対運動も起こった曰く付きの湖らしいが、偶然にここを通りがかるまで、僕はこんな湖の存在などまるで知らなかった。
沈んだ村にあった老木を湖岸に移植したという「荘川桜」が、黄色くなりかけた葉を風にそよがせていた。

沈んだ村から移植された桜の木

せっかくだからこの先にあるダムも見学していこうと車を進ませていると、道路左側にある神社が目に止まり急停車!
「御母衣電源神社」。

レアな神社を発見!

なんじゃこりゃ?と思ってスマホでググってみると……。
ふむふむ、なるほどなるほど。
“電源神社”というのは、全国で北海道に一つ、本州に四つだけ存在するなかなかレアな神社で、いずれもJ-POWER(電源開発株式会社)という電力会社が造ったダム近くに建てられているのだとか。
それ以上の詳しい謂れはわからなかったが、きっとダム工事の安全や電力の安定供給を祈願して建立されたのだろう。
これもまた、日本らしい風景だ。

そして岐阜県大野郡白川村の御母衣ダムに到着。
60年以上も前、一級河川・庄川本流最上流部に建設されたこの発電専用ダムは、石積みでレトロな雰囲気だった。
造られた当初は相当な違和感があったのだろうが、すでに近辺の山や谷になじみ、自然の風景の一部と化しているようにも見える。
ダムの端にたたずみながら、自分が生まれる前の日本の、社会と人々の営みに想いを馳せた。

石積みのダム、湖側

湖の反対側には変電施設がある

そして今回の旅のメインイベント、世界遺産・白川郷散策

さあ道草を食ってしまったので急がなければ、とアクセルを踏む。
しかし5分も走らぬうちに、道路脇にまたまた気になる看板を発見してしまった。
書いてあった文字は「シッタカ橋」。
へえ、変わった名前だねえと思い、通り過ぎてから頭の中で「シッタカ橋、シッタカ橋……」と反芻していたら、「シッタカ橋、シッタカブリッジ……、知ったかぶり!?」と、ダジャレがひらめいてしまった。

急停車!!
Uターンして撮った写真がこちらである。

見逃せなかった「シッタカ橋」

ググってみると(おじさん、すぐにググる)、春スキーの名所でもある“シッタカ谷”というところにかけられた橋らしい。
それにしてもなんでカタカナで「シッタカ」?
さらにググりにググったが、結局これ以上は何もわからなかった。
由来や語源を知っている方がいれば、ぜひ教えてもらいたいものである。

こんなことばっかりしているので、僕の旅はなかなか先に進まない。
でもこれもまた、車中泊行き当たりばったりひとり旅のいいところだ。
だって、今日中に目的地に着かなくたって誰にも文句は言われないし、そもそも目的地自体があってないようなものなのだから。
今日の宿もこの車なのだし、結果的に行き着いたところまで行けばいいだけ。
だから、思う存分に寄り道をすることができる。

とは言うものも、そこから先はなるべく脇目をふらず、真っすぐ前の道を見つめて走ることにした。
いつかは来てみたかった念願の場所まで、もうすぐだからだ。

そして辿り着いたのは、かの有名な白川郷。
厳冬の豪雪に耐えるために工夫された茅葺屋根の合掌造りが並ぶ集落は、かつての日本の田園風景の象徴として知られる。

来てみたかった白川郷

なんてかっこいい……。
実にフォトジェニックな場所だ。
僕は重たい中判フィルムカメラを抱えて、白川郷をゆっくりたっぷりと散策した。

どこを撮っても絵になる(スマホで撮影)

家屋の中を見学。30人くらいで暮らす家なので広い(スマホで撮影)

まさに日本の原風景(スマホで撮影)

旅の相棒は驚異的な重さの、
半世紀以上前につくられた国産クラシックカメラ

ここで改めて、今回の旅の相棒を紹介しよう。
1965年製のクラシックカメラ、MAMIYA C33君である。
蛇腹式カメラのマミヤCシリーズは、2眼レフとしては世界で唯一、レンズ交換機能を備えたユニークなカメラで、僕は持っている80mm、105mm、135mmの3本のレンズもこの旅に持参している。

MAMIYA C33は恐ろしいほど重たいカメラだ。
何しろ本体は約2キロもあり、クラシックカメラ好きの間でも“アイロン”とか“漬物石”などと揶揄されるほど。首から下げているだけで、だんだん肩が凝ってくる。
当時のカメラとしては当たり前だが、絞りもシャッタースピードもマニュアルなので、露出計(僕はスマホアプリを使っている)を使って光量を計測し、カメラのあらゆる設定を決めてからシャッターを押さなければならず、たいへん面倒臭い。
しかも、昨今のフィルム代と現像代の高騰から、一回シャッターを切るたびに牛丼の並一杯分くらいの金額が吹っ飛ぶ。
そのうえ解像度は今のスマホのカメラに完敗、条件や設定が難しいので、失敗写真となる確率も高い。

つまり機動性に乏しいうえにコスパ最悪なので、普通ならとてもじゃないけど旅に持っていくべきカメラとは言えない。
でも、なんとも言えない味のある、いい写真が撮れるのだ。
MAMIYA C33の古いレンズを通してみた白川郷は、こんな感じだった。

MAMIYA C33で撮影した写真4点。スマホで撮った写真と比べ、何か物語がありそうな感じがしないだろうか?

白川郷が今回の車中泊の最大の目的地だったので、次の行き先は考えていなかった。
岐阜の北端まで来ているので、このままさらに北上して富山県に入り、能登半島を目指すのも面白そうだと思ったのだが、天気予報を見ると、これからまた天気が崩れるらしい。
能登半島の雄大な自然を見るのはまた別の機会、天気がいい時にした方がいいだろう。

雨が続くのだとしたら、やはりまた建物や街並みを見るのがいいのではないかと思った僕は、来た道を戻り、岐阜県中央部の郡上市を目指すことに決めた。

国道156号で南下の途中、「大白川温泉 しらみずの湯」で入湯。
透明サラサラのお湯で、さっぱりして気持ちよかった。

大白川温泉 しらみずの湯

郡上市には日が暮れた頃に到着。
特に下調べすることなく、たまたま目に入った「食の家じぇいあん」という店で、奥美濃和牛カレーなるものを注文した。

偶然見つけた「食の家じぇいあん」

奥美濃カレーというのは、郡上地域で古くから製造されている「郡上地味噌」を隠し味とするご当地カレーなのだとか。
運ばれてきたカレーは皿ごと熱しているようで、まだグツグツと煮立っている。
一口食べてみると……、これがまあ、美味いの美味くないのって!
こうして行き当たりばったりで最高の店を引き当てると、実に気分が高揚するものだ。

「美味すぎる……」と、思わず独りごちた

今夜の宿は、車中泊ファンの間でも人気が高い道の駅古今伝授の里やまと。
ここで、翌朝まで休憩しよう。


撮影・文/佐藤誠二朗

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