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ニッポンの女の子はみんな、心に1曲「私のユーミン」を持っている

集英社オンライン / 2022年10月30日 13時1分

今年デビュー50周年を迎えるユーミンこと松任谷由実。テレビに雑誌にウェブ……このところめっきり増えた露出を見るだに思い出すことがある。ニッポンの女の子はみんな、心に1曲「私のユーミン」を持っているというお話。

今年でデビュー50周年を迎える、ユーミンこと松任谷由実。
10月4日にはもはや何枚目のベストアルバムであろうか、という『ユーミン万歳!~松任谷由実50周年記念ベストアルバム~』が発売され、10月26日公開のBillboard JAPANダウンロード・アルバム・チャート“Download Albums”で、3週連続となる1位を獲得している。その影響か、10年前にリリースされた『松任谷由実 40周年記念ベストアルバム 日本の恋と、ユーミンと。』も80位とトップ100入りしているというからすごい。



そう、ユーミンはすごいのだ。

ユーミンの歌が周りにあることが当たり前だった

今年55歳の私にとってユーミン、松任谷(荒井)由実のデビューと軌跡はリアタイではない。
彼女の存在をリアルで知ったのは1980年リリース、ポーラ化粧品のCMソングだった「星のルージュリアン」だ。
まったくもってユーミンのナンバーの中では王道ではない。

けれどやがて高校生になると、さまざまな形でユーミンの情報が入ってくるようになる。
そのすさまじい人気の上昇とともに。
だからあの頃はたとえユーミンのファンというわけではなくても、世の中にあまりにもユーミンの曲が普通に頻繁に流れているため、耳で心で憶えてしまったものだ。

なぜか今でも記憶に残っているのが、その頃の雑誌「オリーブ」でのまるごとユーミン特集。
当時の創刊間もない頃のオリーブはといえば、その後大プッシュするリセエンヌ系になるよりかなり前、パリというよりは西海岸LA寄りの、ポパイの純正女の子版というイメージが強くて、大好きな雑誌だった。

そんな時代のオリーブのユーミン特集では、ユーミンのステージのダイナミックさ、例えばステージに本物の象を連れてきちゃうとか泡風呂の中から歌っちゃうとか、その後のシャングリラや、シルク・ド・ソレイユとのコラボレーションもさもありなんというべきステージ演出を取り上げていて、そんな記事を読みながら、歌はメロウなものが多いのにステージはこんななんだなぁ、脚がキレイだなーとか、ぼんやり思っていたものである。

そう、私は熱烈なユーミンファンではないのだ。

その名も「OLIVE」というアルバムもあるユーミン。凝ったジャケットワークがめちゃオシャレだ

タワーレコードが金色に染まった日

さて、世に言う80年代、バブルの時代というのはまさにユーミンの最盛期のひとつ。
これまた今でも鮮明に憶えているのだけど、84年にアルバム「NO SIDE」がリリースされたときには渋谷のタワレコがそのゴールドのジャケット一色になって目がクラクラしたものである。
ラグビーの試合はノーサイドで終わるということを世に知らしめ、当時、彼氏が六大学ラグビー部所属であることは、年上の彼が電通勤務であるのと同じくらい、女子大生にとって誉なものに。
いや、「ノーサイド」楽曲が先だったのか、バブルが先だったのか。

そのくらいすごかった、ユーミン。このころから恋愛の教祖とか言われてた。
別にお悩み相談とかしてたのではなく、その歌からのメッセージ性だけで。

ニッポンの恋はユーミンの歌と共にあるのは本当

ところで私は社会人、編集者になってからは雑誌の音楽ページ担当をしばらくやっていたので、実際にユーミンのコンサートに行く機会にも何度か恵まれた。

噂に違わず、ダイナミックな演出、素晴らしい音響とミュージシャン、そして何よりも長身と抜群のスタイルを生かしたユーミンのたたずまい、ダンス…すごい、すごすぎる。エンターテインメント、極まれり。

それまでにもよく、恋も仕事もユーミンに教わった、というようなタイトルとかコメントとか特集があったのだが、確かにユーミンの楽曲の歌詞というものが、ある意味格言チックだったり、教訓になるものだったりするのは間違いない。

「ルージュの伝言」ではオイタをした彼のママに言いつけることを教わり、「真珠のピアス」では不実な彼の部屋にピアスを片方落としてくるワザを教わり、「Destiny」では普段着も気を抜いてはいけないことを教わり、「14番目の月」では恋が成就する寸前の醍醐味を…キリないわ……!

音楽を聴くとき、あまり歌詞には耳を傾けない自分ですらこんなに心に残ってる。
そして今ひとつのユーミンの魅力といえばやはり楽曲、旋律の心地よさ。

車内で流すことも多いユーミンナンバー、ドライブとのグルーヴ感は最高だ。
その頃、Apple musicとかないから……(笑)。CDからテープにダビングして(車にCDプレーヤーがまだ搭載されてなかった)、なんならドライブにあうナンバーを厳選編集して(今でいうSpotifyか)、「カンナ8号線」に「埠頭を渡る風」に「真冬のサーファー」に「サーフ天国、スキー天国」…そうそう苗場もすごかった。ゲレンデでかかりまくるユーミン。スキーとまるで関係ないナンバーでも違和感ゼロ。 なぜだ。

名盤「サーフ&スノー」のジャケットのキュートさったら!

あの頃、まさかの関越・練馬インターから月夜野まで途切れなかった渋滞(体験実話)、そうまでしてみなスキーに行きたかったのか。
高速上で夜明かしを強いられた車の9割に、「サーフ&スノー」は搭載されていたはずだ。

アーティストへの愛とリスペクトと感謝が溢れる空間

コロナ禍となる5年前。45周年を迎えたユーミンのツアーは、全国アリーナ規模の会場にて、ユーミン史上初のベスト選曲による、「松任谷由実 TIME MACHINE TOUR Traveling through 45years」なる、ものすごいファンサービスなものだった。

45周年でもベストアルバムをリリース。数多くのベスト盤がありつつもマンネリにならないのがスゴイ

縁あって訪れた日本武道館での夢のような約3時間は今でも忘れられない。
会場中央に円形のステージ上で多種多彩な演出とともに縦横無尽に歌い踊るユーミン。圧巻の一言。

だけど、何よりも素晴らしいのはそのサービス精神だ。
どんだけ手間と費用がかかってんのか、コレ……というステージはアンコールも含めて約3時間、ただただ釘付け。

「かんらん車」の荘厳すぎる演奏とプロジェクションマッピング、バブル感爆発の「ハートブレイク」……惜しげもなく晒す脚線美は健在だし、まるでコンピュータのような伸びのある声は、曲が進むごとにどんどん迫力を増してくる。

そして白眉は、アンコールの「やさしさに包まれたなら」。
「カンナ8号線」で会場をぐわーっと盛り上げた後に、じゃあ、みんなも一緒に歌ってね、と届けられた「やさしさに包まれたなら」。

武道館、13000人余りによる大合唱。
鳥肌が立った。
はっと気づくと自分も声を張り上げて歌っていた。

ライブ会場で聴衆のみんなが大声で一緒に歌うということ自体はそんなに珍しいことではない。
でも、あの会場の一体感は…ちょっといわく言い難い。

シンプルなピアノ伴奏とユーミンの声。そこに寄り添うように響くみんなの歌声。ユーミンへの愛とリスペクトが溢れかえる。
歌詞の2番も3番もリフレインも、そしてちょっとした転調も節回しも後奏のハミングまで、全て完璧にみんなが歌ってる。

それぞれがそれぞれの歌への思いとユーミンへの感謝を込めて。
ユーミンも涙ぐんでいたけど、みんなも泣いてた。私も泣いた。

このとき63歳(!)のユーミンの夢は「続けること」だと言っていた。目標じゃなくて夢。
素敵だ。

ありがとう、ユーミン。
若く多感な頃、あなたの歌を聴いて恋だの愛だのにキュンとするほどピュアな女の子ではなかったけど、間違いなく私もあなたに育てていただいたひとりです。

ユーミンの神秘的パワーは絶対ある

ところで私はユーミンのインタビューをするという僥倖に2回ほど恵まれている。
その1回目は、入社2年目、アルバム「TEARS AND REASONS」のリリースタイミングでのインタビューだった。

その日のユーミンは黒いぴったりしたドレスに身を包み、胸元にはちょっと目立つネックレスをしていた。
スタジオに入って開口一番、
「今日は満月なのよね。だから月のパワーに負けないようにムーンストーンのネックレスをしてきたの」と微笑んだ。

インタビューを終えて、お疲れ様の後にいつものようにレコーダーで録音を確認した。当時はカセットテープを入れるテープレコーダーである。
ところが取材中ずっと、テープはきちんと回っていたのに、録れていたのは最初の3分ぐらいだけ。途中から変な風に声が乱れ始めて、その後はまったく録音できていなかった。

……血の気が引いたよ。
そこから1人スタジオに残って、ペンを握りしめてひたすらひたすら思い出せるだけ書き起こした。

今だから言える懺悔。

本当に不思議な出来事だったけど、あれは絶対満月のパワーなんかじゃなくて、それを跳ね除けようとしたユーミンのパワーの影響だったんじゃないかなぁと、今でも思っている。

文/志沢直子

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