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グロテスクなのに美しく、クレイジーなのに感動的! 奇妙奇天烈なカルト映画5選

集英社オンライン / 2022年10月29日 18時1分

どんな作品にも似ていない独創的なカルト映画は、一度ハマると抜け出せなくなるほどの強烈な魅力を放っている。公開中の『ノベンバー』をはじめとした、美しきカルト映画を紹介する。

クリエイティビティを炸裂させたカルト映画

映画が生まれて128年。「すべての映画は過去のいずれかの映画の模倣である」と誰かが言ったが、確かに意識しているかどうかにかかわらず、どんな映画作家でも自分が影響を受けた作品というのはあるはず。模倣か、インスパイアされたか、トリビュートしているかは別として、過去の作品との関わりはあるものだ。

だが、ごく稀に、ほかのどんな作品にも似ていない、ちょっとフツーではない映画に出くわすことがある。人はそういった映画のことをカルト映画と呼ぶが、何がそれらの作品をカルトたらしめているのか?


今回は悪趣味で、グロテスクで、しかし美しい、そんなカルト作品をご紹介しよう!


『ノベンバー』(2017)November 上映時間:1時間55分/ポーランド・オランダ・エストニア

『ノベンバー』10月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
©Homeless Bob Production,PRPL,Opus Film 2017

現在公開中の『ノベンバー』は、エストニアの寒村を舞台とした、シュールで摩訶不思議な世界観の怪作。

11月の「死者の日」。村に戻ってきた死者は家族を訪ね、一緒に食事をし、サウナに入る。精霊、人狼、疫病神が徘徊する中、貧しい村人たちは生意気な精霊“クラット”を使い、隣人から物を盗みながら、極寒の暗い冬を乗り切るべく思い思いの行動を取っていた。そんな中、村の青年ハンス(ヨルゲン・リーク)は、領主であるドイツ人男爵の娘に恋焦がれるあまり、森の中の十字路で悪魔と契約を結んでしまう……。

主人のために常に仕事をこなす精霊“クラット”の存在や、11月1日の万霊節に白装束の死者たちが列をなして村に戻ってくる風習など、そのアニミズム的な感覚は日本の土着信仰とも相通ずる。

クラットは釜や斧や頭蓋骨などで作られており、その姿は一つ一つ異なり、農器具として働いたり、隣家から家畜や食料を盗んできたりする。

いわば、生命以外のものに生命を吹き込んで使役に用いるという風習なのだが、ときには雪だるまをクラットにして、知恵を借りたりもする。やることがないとクラットは「仕事をくれ!」と主人の顔に唾を吐いたりも(笑)。

CGに頼らず、あえて細いワイヤーを駆使してクラットを操るアナログな演出(監督:ライナー・サルネ)は、ホラー・ファンタジーに、確かなリアリティを与えている。さらに、モノクロームの映像(撮影:マート・タニエル)は、フツーじゃない摩訶不思議な世界観に絶妙にマッチ。まるで夢を見ているような、幻想的な映像美は必見だ。

『ボーダー 二つの世界』(2018)Gräns 上映時間:1時間50分/スウェーデン・デンマーク

Capital Pictures/amanaimages

独特の世界観という点では、スウェーデンのダーク・ファンタジー&ミステリー『ボーダー 二つの世界』も引けを取らない。

スウェーデンの税関職員として働く醜女ティーナ(エヴァ・メランデル)は人並外れた嗅覚で密輸犯や違法ポルノ所持者を嗅ぎわけることができるのだが、あるとき、怪しいと睨んだ旅行者ヴォーレ(エーロ・ミロノフ)に、本能的に自分と同じ“何か”を感じ取る。

やがて、ヴォーレを自宅の離れに住まわせたティーナは、彼を通じて自身の出生の秘密(人間ではない別の種族である真実)を知ることになる。

ホラーなのか、ミステリーなのか、恋愛映画なのか。ひとことで言い表すジャンルが存在しない映画だとしか、言いようがない。

先の読めない展開はもちろん、彼らの種族の性行為が、人間と異なるやり方であることを示すシーンなど、ディテールの描き方の半端ないグロテスクさが、この作品を一度見たら忘れられないものにしている。

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(2017)The Square 上映時間:2時間31分/スウェーデン・ドイツ・フランス・デンマーク

Everett Collection/アフロ

前述の2作品と比べると、リューベン・オストルンド監督による『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、一見、フツーの作品のように見える。

なぜなら、主人公は美術館のキュレーターという、イケてる職業に就いているおしゃれな男(クレス・バング)で、描かれるのは、次の展覧会の目玉の参加型アート「ザ・スクエア」を巡る、美術界の裏側の人間関係だから。

だが、監督の前作『フレンチアルプスで起きたこと』(2014)でも予測不能でスリリングなストーリー展開に驚かされたように、本作もまた、見ているうちにどんどん不協和音が拡大していき、物語はあらぬ方向へといざなわれていく。

特に、着席ディナー形式のレセプションで登場する“猿パフォーマー”オレグのシーンは衝撃的。オレグは、敵を威嚇するように息を荒らげて参加者を挑発するが、それがハプニング・アート的なパフォーミングなのか、それとも、場違いな侵入者(イントルーダー)による危険で一触即発の事態なのか。会場にいる人たちと同様、観客も判断がつかず、異様な緊張感を強いられる。

ちなみに、オレグを演じたテリー・ノタリーはシルク・ドゥ・ソレイユ出身のアメリカ俳優で、『猿の惑星』シリーズの猿役のモーション・キャプチャーを務めた人物。監督は「猿の演技をする俳優」と検索し、ノタリーに白羽の矢を立てたのだという。

第70回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた、異色の物語だ。

『タッチ・ミー・ノット〜ローラと秘密のカウンセリング〜』(2018)Touch Me Not 上映時間:2時間5分/ルーマニア・ドイツ・チェコ・ブルガリア・フランス

Capital Pictures/amanaimages

ガス・ヴァン・サントやウェス・アンダーソンらの作品を押しのけ、第68回ベルリン国際映画祭の金熊賞(最高賞)と最優秀新人作品賞をダブル受賞したことで話題になった映画。ルーマニア出身の新人女性監督アディナ・ピンティリエの長編初監督作だ。

主人公は、人に触れられることに激しい拒絶反応を示す、精神的な障がいを抱えるローラ(ローラ・ベンソン)。彼女はある日、身体的障がいを持つ人々が語りあい、身体に触れあうことで自身を見つめ直す不思議なカウンセリングを目撃し、自分を解放させていく……。

自由に四肢を動かせない者、病により全身の毛がなくなった者など、さまざまな症状を抱える人々と俳優の演技とが混ざり合い、フィクションのようでいてドキュメンタリーのような印象も受ける不思議な作品。

障がい者の“性”というセンシティブなテーマを扱いながらも、覗き見るような居心地の悪さではなく、見終わってなぜか優しい気持ちになれるような作品だ。

これら4本の作品はいずれも北欧の映画だが、そのカルト映画比率の高さ、恐るべし!

『ホドロフスキーのサイコマジック』(2019)Psychomagie:A Healing Art 上映時間:1時間40分/フランス

カルト映画といえば、この人。アレハンドロ・ホドロフスキー監督
Capital Pictures/amanaimages

最後に、南米チリ出身の伝説的映画作家アレハンドロ・ホドロフスキー監督が、91歳で手掛けたセラピー・ムービー『ホドロフスキーのサイコマジック』を紹介しよう。

ホドロフスキーといえば、アンディ・ウォーホルやジョン・レノンらに熱烈に支持された出世作『エル・トポ』(1970)や『ホーリー・マウンテン』(1973)で知られる、元祖カルト・ムービーの巨匠。

3年前に製作された本作もまた、“ホドロフスキー映画”としか言いようがない、奇妙奇天烈な作品だ。

サイコマジックとは、“科学”に依拠した精神分析的なセラピーの対極にある、“アート”としてのアプローチから生まれたセラピーとのこと。ホロドフスキーが考案した心理療法だ。

映画では、ホドロフスキーが悩みを抱える人々に対してさまざまなサイコマジックの処方を行ない、人々を開放していく様子をオムニバス的に描いている。

2020年の日本公開時には、ライブストリーミング番組にパリの自宅から出演し、リモートでサイコマジックを行なった。映画というよりひとつの宗教のようであり、もはやホドロフスキーという人の存在そのものがアートのようにも思える。

美しきカルト映画の数々。見るにはそれなりの覚悟も必要だが、ハマるとおいそれとは抜け出せなくなるのでご注意あれ!



文/谷川建司

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