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人力車、ベスパ、90歳、で世界や日本を一周中! 旅人気分が味わえる “エモいトラベル”系SNS3選

集英社オンライン / 2022年11月11日 9時1分

公共交通機関を使わず、自力で世界や日本を旅する動画が、TikTokを中心にSNSでバズっている。フォロワーを惹きつけるのは景色だけでなく、旅のリアルさだ。中でも人気の〈人力車でアメリカ横断〉〈中古のベスパでヨーロッパ一周〉〈車で息子と日本一周中の90歳の女性〉の3人に旅の醍醐味を聞いた。

「学べる出会いや景色がサイコー!」の人力車の旅人

ニューヨークからロサンゼルス・サンタモニカまでの約5000kmを人力車で横断中

2022年8月7日にニューヨークを出発、目的地のロサンゼルス・サンタモニカを目指して、人力車を引いてアメリカ横断中のガンプ鈴木さん。

2年半前にロサンゼルス→テキサス2000kmを走ったがコロナで中断し、今回は再挑戦になる。しかも、続きからでは「横断感が薄い」と、距離をリセットしてゼロからのスタート!



そんなガンプさんは、日本では浅草の引き手。これまでもアジア、ヨーロッパなど走破した経験があり “人力車で海外を走る”ベテランだ。アメリカ横断も余裕かも?

「比べ物にならないくらい体力を使ってます。アメリカでは1日40km平均で走ってますが、これって人力車を引いたフルマラソンが毎日みたいな感じですから。おかげで、体力と筋力がめっちゃつきましたね!」

照りつける太陽の下、起伏の富んだ道も当然、人力車をひきながら……

そんなガンプさんの動画の最大の魅力は、「人との交流」だ。飲食物の差し入れは当たり前のようにあり、なかには自宅まで食料を取りに戻って渡しに来るアメリカ人まで。敷地内に野宿を許可、シャワーを貸す、宿泊に招待する、家で食事をふるまってくれるなど、差し伸べられる好意は枚挙にいとまがない。

各地で出会った人々からは、「Protect yourself」や「Good luck your adventure」など言葉をかけられることも

人力車旅では、想像をしていないピンチに見舞われることもある。例えば、ニュージャージー州での出来事だ。進むための道は2ルートしかないにも関わらずハイウェイは軽自動車=人力車の通行禁止。下道は人力車が通れない道幅だったのだ。

「それが、警官が交通整理してくれて、無事に通れたんですよ。YouTube動画では数分にまとめてますけど、実際は3時間かかって。うち2時間は困り果てて座り込んでました。はじまったばっかりでもう終わるの!?って」

この様々な経験から、渡航前のアメリカのイメージが一変したという。

「パンデミック後のアメリカは変わった、アジアンヘイトが強いと聞いてました。でも、これまで嫌な思いはしたことはありません。僕自身、アメリカ人の心に触れられて勉強になったことを、動画を通して伝えていきたいと思うくらい。ほんまアメリカ人、いい人たちばっかりなんですよ!」

旅一番のピンチ「人力車のボルトが折れた」地のオハイオ州。日本のフォロワーが浅草へ行き、数時間後にEMSを発送、オハイオ州滞在の日本人留学生が荷物を受け取る連携プレーも

純粋に“楽しい”を追求したら
フォロワーが増えた!

伝えたいことは他にもある。以前は人力車で旅をする理由を「世界と日本をつなげる」や人力車を使用していることから「文化を広める」と言っていたが……。

「自分が楽しいからはじめたことなのに、相手が求める答えを口に出すようになっていたんですよ。自分の気持ちに嘘をついてたってことですよね。だから、パンデミック前のアメリカ横断中は、SNSのフォロワーが増えない、前は3人のチームで走ってたのにいまはひとりで孤独だとか、アメリカの真っ直ぐな道を走っているのに心は迷走しはじめちゃって」

そこで、目を覚ますできごとがあった。コロナ前の横断中に、アリゾナ州ウィリアムズで「Just For Fun(面白いからちょっとやってみよう)」という言葉と出会ったのだ。

イリノイ州ポンティアタックの『ルート66ミュージアム』

「砂漠で見かけた看板にJust For Funと書いてあったので、なんか引っかかって撮ったんです。その後、街でギターを弾いてるおじさんから突然お金をもらって、理由を聞いたら”Just for fun”と言われたんですよ。ハッとして、初心に戻れました。
正直な話、それまで心のどっかで有名になりたい、とか思ってたんですよね(笑)。でも、僕は有名になるために旅をしてるんじゃない。面白いから人力車で走ってるんだ。人生を楽しむために、100%の気持ちを注入するために走りたい!」

シカゴにあるルート66のスタート地点。“ガンプ”の由来は映画『フォレスト・ガンプ』なだけに、走りたかった念願の道である

フォロワーが増え、自転車でアメリカ横断を決意し渡米した人がいるほか、リアクションから一歩踏み出せない人にJust For Funが届きはじめた手応えを感じているというガンプさん。ESTAの都合によりコスタリカに滞在中だが、11月中旬から後半戦をスタートさせ、来年1月にはアメリカ横断完走予定だ。


ガンプ鈴木(がんぷすずき)
人力車の旅人。アジア(中国、台湾、香港、ベトナム、日本縦断(北海道~沖縄)も。カンボジア、タイ、インド)、ヨーロッパ(スペイン、フランス)、オーストラリアを走破。

【You Tube】https://www.youtube.com/c/鈴木悠司rickshaw
【TikTok】https://www.tiktok.com/@rickshaws
【Instagram】https://www.instagram.com/gumpsuzuki/
【HP】https://gump.fun/

「旅人が増えると世界は優しくなる」から、
ベスパでヨーロッパ一周!

約23万円で購入した中古の“空色”ベスパで34カ国を走った

原付バイクらしい、ゆる~いスピードで撮影された動画には、国境を超える度に建物や自然が変わる様子や、各国の個性が映し出される。陸地続きらしい変化も楽しめるヨーロッパの絶景を惜しげもなく配信しているのが、旅人アルマさんだ。

写真と映像のクオリティがピカイチ、視点が優しく表現力は豊かなナレーションや〆の言葉「ほなまた」には、ほっこりする。本業はフリーカメラマン。映像美に納得だが、なぜ“旅人”の肩書きをつけて世界一周の旅に出ているのだろう。

ラトビア・リガの旧市街。晴れた日の空と教会のコントラストは美しい

「僕の投稿する写真や動画で、景色がきれいで素敵な場所だと思った人が旅に出てくれればいいな、って。訪れた国、場所、出会った人が多いほど、どこかの国で何か起こったら“自分ごと”のように感じられるはず。だから旅人を増やしたい。そうすれば、世界がもっと優しくなると信じているんですよ」

ブルガリアのヒマワリ畑は見事な美しさ!

そんな思いもあり、気になった場所に “止まるため”、原付バイクの旅にこだわる。日本二周のほかベトナムを走破、次はウラジオストックから世界一周へ! と、考えていたが、コロナで延期したところにウクライナ情勢が重なり、分割での世界一周に変更。
その計画の第一弾であるヨーロッパ一周を実行すべく、今年6月にイタリアに向かった。

フランス北部のサン・カンタン。「サン=カンタンの戦い」の記念像

カメラ機材のほか、野宿が基本の旅のためテントほか荷物も大量だ

イタリアを出発し、次に入国したのはスイス。山々の絶景は見事だったが、驚くべきはベスパでその山道を登ったことだ。50ccの原付きで……。すれ違う車やバイクは、さぞ驚いたことだろう。

しかし、ベスパも頑張りすぎたのか、旅の中盤からは、オイルチューブが切れてエンジンが焼き付く、パンクほか、車体トラブルが頻発。手を差し伸べてくれたのが、各国のバイカーたちだった。

「ベスパのドライブベルトの交換は20ユーロ(約2900円)でしたが、おじさんがお代を奢ってくれました。ほかに、修理を待つ数日間泊めていただいたり、食事をごちそうになったり、パンクした時は通りがかったバイカーさんがどこかへ電話してくれたらJAFみたいなサービスが来たり。感謝しかないです。人々の優しさに助けられて旅をしていますね」

ベスパの空色から、テーマカラーを水色に設定し空を大切にした写真を撮った

地続きのヨーロッパだからこそわかる各国の個性

ヨーロッパをバイクで走ることで見えた景色、その中でなにを感じ走っていたのだろうか。

「気づいたのは、ヨーロッパの田舎は日本と比べてリッチということ。人が生活しているから建物がきれいですし、子供の姿を多く見かけました。人口のバランスが高齢者に突出してないから商店も現役。日本一周の時は、山間部の村は限界集落で、いずれなくなりそうな雰囲気で……」

コソボ。景色が変わる流れを肌感覚でつかめるのも原付旅だからこそ

観光地以外も場所も走るからこそ見えてくる現実は、一周系の旅ならではの醍醐味かもしれない。ところで、ヨーロッパ一周=34カ国の言葉はどうしていたのか。

「最初は『こんにちは』『ありがとう』くらいは調べてましたけど、途中から諦めましたよ(笑)。でも、こっちが伝えようとすれば理解しようとしてくれますし、困ってる人を見ると助けようとしてくれます。人間同士ですから。みんな優しいな、と毎日感じてました」

ギリシャのメテオラは「RPGの世界に迷い込んだみたい」と感じたそうだ

そんなコミュニケーションを通じて「国に対する偏見がなくなって、世界は人間と人間の交流」と思うようになったという。アルマさんは、旅をどうとらえているのか?

「人生です。僕は、旅をして旅人として生きていこうと決めて、フリーカメラマンになりました。だからといって、世捨て人のような旅人ではなく、“社会の人”であることは忘れずに、人生という旅を楽しみたいんですよね」

ノルウェーの雄大さがわかる1枚。北欧はバイクの天敵・雨が多かったぶん、晴れ間はご褒美


旅人アルマ(たびびとあるま)
原付で旅するクリエイター/ビデオグラファー。日本二周、ベトナム横断済。ヨーロッパ一周(34カ国)は、82日・走行距離約1万7400kmで走破した。
【YouTube】https://www.youtube.com/channel/UCpf6uJU0c5384O78qdEVZuA
【TikTok】https://www.tiktok.com/@arumaaaaani
【Instagram】https://www.instagram.com/arumaaaaani/
【Twitter】https://twitter.com/arumaaaaani

90歳で「全国に友達を作るため」に、
息子と日本一周の旅へ!

息子さんが運転する車で日本一周するキヨコさん

この夏、TikTokに彗星のごとく登場した昭和7年生まれのキヨコさん。御年90歳である。最初の動画の再生回数は129万回越えという注目っぷりで、TikTokと言えず「リュックトック」になるのが可愛らしい。
だが、後に続く言葉が胸にズシンと響く。友達を作るために日本一周をする理由が、「連絡がとれる友達がどんどん減っていき、寂しいです」だからだ。

人生100年時代と言われる現在、誰しも他人事ではない。でも、だからといって日本一周へ行くか!? 行動力がすごい! いったい、どんな人なのだろうか?

北海道では、目的のひとつだった「旭川動物園」もクリア

実際のキヨコさんは、女性がよく言う「将来かわいらしいおばあちゃんになりたい」を体現化したような方であった。友達作りが目的の旅は本当のようで……。

「60歳くらいの時は、小学校も専門学校も同級生が集まったんですよ。それが、年賀状が戻ってくるようになって。電話をかけてみると、鳴っても誰も出なくて、次にかけるとプププという音に変わっちゃって。寂しいんですねぇ」

人生の先輩の話は深い。
ただし、奈良県からスタートし、関西、北陸、東北、北海道、関東など各地の観光地で撮られインスタにアップされた写真からは、寂しさをみじんも感じない。

夕食は主に居酒屋でとっているが、各地の友達やフォロワーが合流し和気あいあいとした様子の写真がインスタに多数投稿されている。
“90歳で日本一周”のキャッチーさはあるが、魅力の本質は心の底から楽しそうなキヨコさんの笑顔だろう。

「グデングデンになったらイヤ」と、自宅でひとり一升瓶を抱えて自分の限界酒量を試したことも……

そんな笑顔のもとのひとつ(?)は日本酒の様子。

「日本酒はふわ~ぁん、となって、楽しいですねぇ」

ところが、お酒のデビューは遅く80歳になってから。居酒屋にはじめて入ったのも最近だという。90歳で日本一周旅行に出るアクティブさとは真逆の印象だ。

「義理の両親は明治生まれで厳しく、お酒なんて飲むような環境にありませんでしたね。料理の味見を主人にしてもらうだけで怒られるのは日常で、私、暗かったんですよ」

なんてTHE昭和の風景!それなのに、なぜ旅に出るようになったのか?

青森県の奥入瀬渓流。珍しい地酒をいただいてご機嫌になっていた

旅人人生がはじまって、
口ぐせは「知って得した」に変わる

この年齢で旅に出るとは、昔から好きだったんだろうか。

「好きじゃなかったですね。息子に感化されて旅を好きになったんですよ。旅に出たら知らないことばかりで、なんて損してた人生だったのかと思い知らされました。
でもね、旅をするようになって、はじめて経験することを『知って得した』と言えるようになりました。旅に出たことで人生が180度変わりましたねぇ。本当、3人産んで良かったです」

福井県は写真の東尋坊ほか永平寺なども巡った

旅に同行し車を運転、車椅子を押すのはキヨコさんの三男・リックさん。若いころに事業を興し、海外生活も長い旅人だそうだ。そして、よくよく確認をすると日本一周は10年ぶり、2度目であった。

「母にはいきなりの海外はハードルが高かったんですよ。それで、まずは日本を一周まわったらいいやん、って10年前に。その2年後、22か国に連れていきましたね。最初は、足が悪いから旅行はできない、車椅子も『恥ずかしい』と言ってたんですよ。
それがいまは、毎日が楽しいって。なんでも体験してみてからイヤと言わなきゃもったいない話ですよ(笑)」(リックさん)

東京では浅草のほかに大好きな『寅さん』の故郷、柴又へも

キヨコさんは中学1年生で終戦を迎えた。何もかも押さえつけられた戦時中の日々からの解放を「ルンルンと思った」と言う。そして、嫁姑問題や夫の介護を経て、80歳から旅をする人生になったわけだが、いまなにを思うのか。

「人生の終盤のいまが一番、楽しいですねぇ」

三重県では伊勢神宮へ

先に紹介した2人は若いからできる、体力勝負の旅だ。一方、人生の様々なタスクを終えてからの楽しみ方を示唆してれているキヨコさん。旅を楽しむには、年齢は関係ないのだ。


キヨコさんとリックさん(きよこさんとりっくさん)
【TikTok】https://www.tiktok.com/@90yearsold.traveler
【Instagram】
https://instagram.com/90yearsold_traveler/
https://www.instagram.com/rickstanton.world/

取材・文/Naviee

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