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「ソックスを履き替えるように彼女を替えていた」ジョージ・クルーニーが“永遠のバチェラー”から“ファミリーマン”と化すまで

集英社オンライン / 2022年11月1日 17時1分

主演映画『チケット・トゥ・パラダイス』が11月3日に公開されるジョージ・クルーニーは、俳優のみならず監督、プロデューサー、アクティヴィストとして活躍するハリウッドの大物。知られざる激動のキャリアと華やかな恋愛遍歴を、ロサンゼルス在住の映画ライター・中島由紀子さんが振り返る。

主演映画『チケット・トゥ・パラダイス』

『チケット・トゥ・パラダイス』で、『オーシャンズ』シリーズ以来の夫婦役を演じたジョージ・クルーニー(右)とジュリア・ロバーツ
© 2022 Universal Studios. All Rights Reserved.

ジョージ・クルーニーがジュリア・ロバーツと共演した『チケット・トゥ・パラダイス』は、見る人を笑いの渦に引き込み、明るい気分にしてくれる作品です。



暗い出来事が続いたここ2年半ですから、ジョージ&ジュリアが照らし出すメガワットの明るさを映画から浴びるのも楽しいはず。大画面から飛び出してくる2人のカリスマ・スマイルに圧倒されてしまいます。

物語自体は、25年も前に離婚した元夫婦が、娘のリゾートラブ&結婚式を阻止するために奮闘するストーリー。他のどのキャラクターも、ジュリアとジョージの輝くオーラの中で霞んでしまっています。細かいことは気にせず、深く考えないで笑いましょうという感じのコメディです。

ジョージ・クルーニーが演じているのは、年齢を重ね、自己中心度が増している中年のお父さん役ですが、彼が演じると素敵に見えるから不思議。にじみ出るチャームはさすがです。

ポンコツ車を丸2日走らせてたどり着いたハリウッド

写真は著者が1998年に取材したときのもの

ロサンゼルスには、俳優になる夢を追って地方から何日間も運転してやって来る若者が大勢います。ハリウッドを代表する俳優となったジョージ・クルーニーも、かつてはそんな若者のひとりでした。ジョージの場合は、シンシナティから丸2日間、寝ずに運転し続けてビバリーヒルズにたどり着きました。

休まず運転し続けた理由が微笑ましいのです。彼の古い76年型シボレー・モンテカルロは、イグニションに問題があり、エンジンを止めると再びスタートしなくなる可能性があったそう。それを恐れて、エンジンをかけたまま、道端に駐車して仮眠したといいます。

ビバリーヒルズは、伯母さんのローズマリー・クルーニーが住んでいた場所。ジョージの父ニック・クルーニーのお姉さんで、有名な歌手・女優でした。彼女の最初の夫で俳優のホセ・フェラーが、ケンタッキーに映画の撮影で訪れたとき、ジョージは2か月間、1日25ドルのエキストラとして働きました。

その際、ホセ・フェラーから「ハリウッドに来て役者になれば?」と言われ、「ああ、オーケー」みたいな感じの軽い乗りで、ハリウッド行きを決めたそうです。

尊敬するテレビジャーナリストだった父の影響を受け、メディア関係の仕事をしようと大学で学んでいました。ところが偉大な父のようになれる可能性の薄さを感じ、自信がぐらつき思い悩んでいた時期でもあったそう。ハリウッド行きはジョージの一生を変える出来事だったはずですが、将来の方向づけに迷っていた彼にとって、新しい夢となったのです。

息子に期待していた両親、特に父親に深い落胆を与えることになったと、のちにジョージは語ってくれました。

「あれは僕と父の関係がギクシャクした、一生に一回だけの出来事だった」

父親は、長い間ホセ・フェラーを恨んでいたそうです。

10年以上も続いた“売れない時代”

ハリウッドに行ったものの、売れない役者時代は10年以上。お父さんから「ワケのわからない仕事は辞めて、まともな仕事につきなさい」という長い手紙が、7〜8年届き続けたそうです。そのときの手紙は、全部取ってあると教えてくれました。

「僕はハリウッドの中で、非常にラッキーな人間だといつも感謝している。売れない時代は、俳優として決して誇りには思えない、恥ずかしいようなテレビ番組に沢山顔を出していた。出演した番組そのものがひどいというよりは、その中の自分がひどかったということ。

とにかくサバイバルするためになんでもやったという感じ。当時は、誰もジョージ・クルーニーなんていう役者の存在さえ知らなかったから、今も、僕がどんなテレビ番組に出ていたか知る人は少ないと思う。僕のキャリアはドラマ『ER救急救命室』でスタートしたと思っている人が沢山いるのは、ありがたいことなんだ。意地悪いデジタル・メディアもなかった頃だしね」

出世作となった大ヒット・ドラマ『ER救急救命室』
Sven Arnstein/NBC/ロイター/アフロ

彼は、この時代に友達のアパートのソファで寝泊まりしていた話をよくします。そのソファを提供してくれたひとりが、現在の仕事のパートナー、グラント・へスロフ(俳優、脚本家、プロデューサー)。「有名になったらお返しするよ」という、売れない時代のジョージの言葉を優しく聞き流してくれていた親友です。

現在は、「スモークハウス」というバーバンクにある有名なステーキハウスから名前をとったプロダクション・カンパニーを、ジョージと共同で経営。彼らがプロデュースをしたベン・アフレック監督作『アルゴ』(2012)は、アカデミー作品賞を受賞しました。

黒歴史『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』

『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』で、バットマン/ブルース・ウェインを演じたジョージ。左はジュリー・マディソン役のエル・マクファーソン
Album/アフロ

1994年から放送されたドラマ『ER救急救命室』の成功で名を上げたジョージ。彼に初めて1対1で取材したのは『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』(1997)のときでした。雑誌「ロードショー」のためのインタビューです。

印象的だったのは、「『僕はもう、テレビ俳優から脱却するんだ』と自分に言い聞かせていた時期だったから、バットマン役は天から降りてきた救いの神だった」という言葉。

ところが、この映画は興行収入につながらず。失敗作というレッテルを貼られました。「バットマン・シリーズを破壊した男」とまで酷評されたのです。

別のインタビューで「人生でやり直したいことはありますか?」と聞かれると、「『バットマン&ロビン』を作り直せるものなら作り直したい」と言っていました。本気なのか、独特のジョークなのか定かではないのですが……。

そんな彼も、今やハリウッドの大物。『シリアナ』(2005)ではアカデミー助演男優賞を受賞し、前述した『アルゴ』では、プロデューサーとして作品賞を受賞しています。

実力のある俳優、監督、プロデューサーとしてだけでなく、近年はダルフール問題に熱心に取り組み、人道的活動も積極的に行うアクティヴィストとして、基金集めにも走り回っています。

今も住んでいるハリウッドヒルの上にある家は、『ER救急救命室』で成功後、1990年代の初めに購入したもの。クリントン大統領やオバマ大統領の選挙用ファンドレージング(資金集め)も、この家で主催していました。

ついたあだ名は“シリアルデイター”

2012年の “シリアルデイター”時代。当時の恋人は、元プロレスラーで女優のステイシー・キープラー
ロイター/アフロ

ジョージの半生を振り返る上で欠かせないのが、ゴシップ紙をにぎわせてきた恋愛遍歴。1回目の結婚経験から(1989〜1993女優のタリア・バルサムと)自分は結婚には向いてないと見定め、女優、モデル、ウエイトレス、女子プロレスラーなど、バライエティに富んだ美人たちと2年以内のお付き合いを繰り返してきた独身主義者。

シリアル・デイター(連続的にデートだけを繰り返す人)と呼ばれていたし、「ジョージ・クルーニーはソックスを履き替えるようにガールフレンドを替える」とも言われてきました。永遠のバチェラーとして知られていた彼が、世界を股にかけて活躍する人権弁護士アマル・アラムディンと電撃結婚したのは、2014年。

美しく知的な女性で、「結婚8年目の今もケンカは1回もしていない」と、タブロイドをがっかりさせる良好な関係を続けています。

2022年10月、『チケット・トゥ・パラダイス』のLAプレミアで妻のアマルと
REX/アフロ

彼女のことを話すジョージから、アマルに対する深い愛と敬意を感じずにはいられません。ひとめぼれだったそうで、「この人と残りの一生を共にしたいと確信するのに、時間はかからなかった」と告白しています。

「彼女には頭脳では絶対に勝てないから、腕相撲で勝負を決めている」と冗談を言っていたことも。

「ハリウッド風の名声や騒がれ方に、彼女は一切動じない。自由やプライバシーを束縛される環境にもあまり左右されている様子は見せないし、いつも冷静なんだ。彼女は、自分のひとことが弁護をする人の命に関わる可能性がある法廷で仕事をしてるから、どんな状況でも感情的になったり、裏付けのない言葉を発したりしないんだ」

結婚から2年後には、男女の双子まで誕生して一気に2人の子供のお父さんに。今では、幸せいっぱいのファミリーマンと化しました。

『サバービコン』(2017)のインタビューのときには、部屋に入って来るなり顔見知りの私たち記者に「見て見て! 僕の双子たち」と、携帯に入っているホームビデオを見せてくれたほど。

『ミッドナイト・スカイ』(2020)の取材時
©HFPA

ジョージ・クルーニーには、相手を緊張させない温かさがあり、何を言っても笑って受け入れてくれるような、安心感があります。

隅から隅まで余裕のある大人。若い頃の濃すぎる印象が白髪とともに中和され、61歳の今は、30年前より魅力的です。大人の男のセクシーさと人間的な大きさのバランスをうまく保っています。

「人生の最大の恐怖は、変わらないこと。変わらないでいることに平気な自分になること。常に疑問を持ち、人生に対処すべきだと思う。これでいいなんて思ったら終わりだよ。尊敬する父に『自分が正しいと思うことを遂行しろ。他の人が間違っていることをしていたら、それは違うんじゃないかと追求しろ。おかしいと思いながら何もしない人間になってはならない』と教えられたんだ」

俳優、監督、プロデューサー、アクティヴィストとして進化し続け、父の言葉を61歳になっても忘れないジョージ。自分を磨く努力を忘れない姿勢に、心から拍手を送りたいです。


文/中島由紀子

『チケット・トゥ・パラダイス』(2022)Ticket to Paradise 上映時間:1時間44分/アメリカ

© 2022 Universal Studios. All Rights Reserved.

デヴィッド(ジョージ・クルーニー)とジョージア(ジュリア・ロバーツ)は20年前に離婚した、元夫婦。必要に迫られて会っても、いがみ合いばかりしている。愛娘リリーがロースクールを無事卒業し、旅行でバリ島へ飛んだ数日後、「現地の彼と結婚する」という連絡を受けた2人は急遽、南国の島へ。自分たちが犯した過ちを繰り返してほしくないとの思いから、2人の結婚阻止ミッションが始動する。果たして彼らは娘の結婚を止められるのか!?

11 月 3 日(木・祝)より全国公開
© 2022 Universal Studios. All Rights Reserved.
配給:東宝東和
公式サイト
https://ticket2paradise.jp

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