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まるで「山本由伸がいる阪神投手陣」“メジャー最強軍団”アストロズの強さとは?

集英社オンライン / 2022年10月28日 21時1分

日本時間10月29日(土)に開幕するメジャーリーグ・ワールドシリーズ。下克上を狙うフィラデルフィア・フィリーズを迎え撃つのは、今季、無類の強さで勝ち進んできたヒューストン・アストロズ。アストロズの軌跡をまとめた書籍の日本語版『アストロボール 世界一を成し遂げた新たな戦術』(角川書店)で序文を書いた“アストロズ・ウォッチャー”の野球評論家・お股ニキが、“メジャー最強軍団”の強さの秘密を解き明かす。

“坂本&丸”が抜けても常勝継続

アストロズの大エース・バーランダーは、39歳ながら今季18勝、防御率1.75でリーグ2冠に輝いた。通算勝利は現役最多の244勝ながら、ワールドシリーズは7試合で0勝6敗となぜか未勝利


レギュラーシーズン106勝、ポストシーズン7戦全勝と完全無欠の強さを見せつけ、ワールドシリーズまで駆け上がってきたヒューストン・アストロズ。2019年に発覚した「サイン盗み問題」の影響で米球界のヒール役となってしまったが、球団史上初めてワールドシリーズを制覇した2017年から6年連続でア・リーグチャンピオンシップシリーズへと進出。紛れもなく、“メジャー最強”の常勝軍団だ。

2011年からの3年間で106敗、107敗、111敗を記録するなど“メジャー最弱”の時期もあったが、新オーナーがデータを活用したチームづくりに着手し、数年で黄金期をつくりあげた。そのサクセスストーリーは、最下位から2年連続リーグ優勝を成し遂げた高津ヤクルト、中嶋オリックスの姿とも重なり合う。

アストロズが並の球団でないのは、ワールドシリーズを制したときのコアメンバーがFAで数人去ったあとも黄金期を継続しているところ。巨人でいえば、坂本勇人や丸佳浩が抜けるようなものだが、無理に大枚をはたいて引き留めず、若手や補強選手がその穴を補って余りある活躍をみせている。

今季の年俸総額は全30球団中10位の1億6387万ドル(ちなみに、大谷翔平が所属するエンゼルスは1億6858万ドルで9位)。39歳の大エース、バーランダーには惜しみなく投資し、主力のアルトゥーベらとはフェアバリュー(適正価格)で契約。さらに若手を的確に発掘、抜擢。阪神がロベルト・スアレス、渡邉雄大、加治屋蓮らを再生させたように、他球団でくすぶっている投手をデータに基づいて改良させることも得意だ。

そんなアストロズを率いるのが73歳の名将、ダスティ・ベイカー監督。その温厚な人柄で、「サイン盗み問題」によってダーティなイメージがついてしまったチームの雰囲気を一変させた。采配面でも有能コーチ陣と連携し、配球、走塁、フレーミング、タッチプレーなど細部に至るまで突き詰めている。相手がされて嫌なことをし、相手がしようとすることを先につぶす。洗練された“なめらかな野球”こそ、アストロズの強さの神髄といえる。

アストロズ救援陣を支える“藤浪晋太郎”

アストロズは特に投手陣が洗練されている。今季のチーム防御率2.90はドジャースに次いで30球団中2位だが、アストロズのほうが奪三振数は多く、被本塁打数も少ないため、短期決戦の強さにおいてはメジャーNo.1といっても過言ではない。

先発もリリーフも総じてハイレベル。そこに、サイ・ヤング賞最有力候補の大エース、ジャスティン・バーランダーが君臨する。2年前にトミー・ジョン手術を受け、今季完全復活。パワーピッチながら老獪な投球術を駆使し、大谷翔平をしのぐ投球成績を残すベテラン右腕だ。日本で12球団トップのチーム防御率を誇った阪神投手陣に、2年連続で沢村賞を受賞した山本由伸がいるイメージだろうか。

また、今季は主に中継ぎとして活躍しながら、抑えとしても14セーブをあげているラファエル・モンテーロは、ポスティングによる今オフのメジャー挑戦を公表している阪神・藤浪晋太郎にタイプがそっくりな投手だ。アストロズ移籍前はくすぶっていたが、アストロズ移籍後に才能が開花。藤浪よりも制球はいいが、球種や球質、フォーム、間合いが瓜ふたつ。ちなみに、藤浪のほうが14cmも身長が高い。

アストロズは投手育成の方法論を世界一知り尽くしているチームだ。オーバースローはバーランダーが完成形だが、伸びるライジング系のストレート、速く大きく強く曲がるパワーカーブ、もっとも空振りが取れて制球もしやすい中間球のスラッター系のボール(スライダー、カットボール)、フォークかチェンジアップの落ち球を理論通りに兼ね備えた投手を集め、育成している。

カーブのスピンがいいのにうまく使いこなせていない投手を獲得し、投スライダー系のボールの投げ方を仕込む“魔改造”をほどこしたりもしている。データを活用し、理論上の最適解となる数値を把握したうえで、すべての投手が変化量や球速、スピンの角度まで細かくプログラミングしているような感覚だ。

打線も悪くない。ドジャースやヤンキースのような派手さはないが、チャンスで強く、ここいちばんで仕事のできる選手がそろっている。四球が多く、三振が少ないのも特徴的。主砲のマイケル・ブラントリーを故障で欠き、最近は四球で出塁しないとなかなか得点が生まれない状態なのが若干気がかりではあるが。

超長距離砲はヨルダン・アルバレスくらいで、村上宗隆のように爆発的に打てるホームランバッターはいないが、2010年の千葉ロッテマリーンズのように「3割・20本・100打点」クラスの洗練されたバッティングをする選手がズラリと並ぶ。各選手が相手のスキを常に狙っていて、効率よく得点を生むことができる。

最強軍団の天敵は“投手・大谷”

ワールドシリーズは“最強軍団”アストロズと、それを追い掛けるように進化し続けるフィリーズとの戦いになる。メジャー最強ともいえるアストロズ投手陣と、空気を読まない理不尽な一発のあるフィリーズ“KY打線”との対決が見物だ。

アストロズ投手陣は高めのストレートを有効活用し、スラッター、スプリット、スィーパーを重力による自由落下程度に落として空振りを狙うのが定石。シーズン中から、相手チームがマネして高めのストレートを投げてきたら、そのボールを意図的に狙って粉砕し、ここまで勝ち上がってきた。

対するフィリーズ打線は、ストライクゾーン高め3分の1の打撃成績がアストロズに次ぐメジャー2位。アストロズ投手陣は高めストレートを有効活用するため、打たれるリスクは高まるが、いかにソロホームランですますかがカギとなる。低めに落とすボールや横の変化球をいつも以上に駆使するはずだ。

さて、ここまで順風満帆なシーズンを過ごしてきたアストロズだが、レギュラーシーズンで唯一苦しめられた“天敵”がいる。それが投手・大谷翔平。今季は5試合、29.2回、45奪三振、4失点、防御率1.21と完璧に抑え込まれている。それはなぜか?

高めのストレート、斜めに曲がり落ちるスラッターという典型的なメジャーリーグの投球スタイルにきっちりと対応するアストロズ打線だが、大谷はこれらに加えて、左に大きく曲がりながら吹き上がるスィーパー、右に大きく曲がりながら沈む2シームを装備。

ストレート、スラッター、スプリットという縦の変化に加えて、スィーパーと2シームという横の変化も併せ持つ大谷に、アストロズ打線はまったく対応できなかった。

アストロズもスィーパーを投げられる投手は投げていて、ランス・マッカラーズ・ジュニアのように大谷型の横の投球スタイルの投手も増やしてはいるが、なんといっても今季後半戦の大谷はメジャーで1、2を争うピッチングをしていたわけで……。

アストロズ打線を抑えるカギは投手・大谷スタイルにあるが、大谷のようなピッチャーはメジャーでも数人なので、あまり参考にならないかもしれない。

文/お股ニキ 写真/AFLO

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