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鳥谷敬氏がオリックスを日本一に導いた「中嶋マジック」と阪神・矢野采配に思うこと

集英社オンライン / 2022年11月1日 14時1分

オリックス・バファローズの26年ぶりの日本一で幕を閉じた2022年のプロ野球。今年、解説者1年目としてスタンドから野球を見てきた鳥谷敬氏は、優勝したセ・パ両チームの「信念ある選手起用」が印象的だったという。

高津監督の信念を感じた選手起用

――日本シリーズは、2年連続でヤクルトとオリックスが熱戦を繰り広げましたが、2022年シーズン、この2チームの強さをどのように見ていましたか?

印象的だったのは、ヤクルトがリーグ優勝を決めた試合です。マジックナンバーは「2」で、対戦相手は2位のベイスターズ。両チーム無得点のまま迎えた、9回ウラ1アウト2塁からサヨナラヒットを放ったのは、途中出場していたルーキーの丸山和郁選手でした。



あの場面では、ほとんどの監督が、ある程度経験を積んだ選手を代打に送るのではないでしょうか。丸山選手を信頼して、そのまま打席に立たせた采配には、高津臣吾監督が選手と全力で向き合ってきた信念のようなものを感じました。

村上宗隆選手の飛躍にも似たものを感じています。試合に出始めた頃は三振が多く、守備でのミスも目立っていました。それでも我慢して起用し続けた時期があったからこそ、史上最年少となる22歳の三冠王になれたのではないでしょうか。

チームが選手をリスペクトする姿勢は、引退した内川聖一選手と坂口智隆選手に対しても表れていました。引退という重い決断を選手の口から伝えることができる環境を整えるのは大変だと思いますが、それが徹底されているのは、チームが選手をとても大切にしているからこそだと感じます。

チームは選手のことを考えて、疲労などもコントロールしながら無理のない起用をする。その上で選手は結果を出す……というように、時代とともに野球も変わってきたように思います。

中嶋マジックと矢野采配

――一方、オリックスの中嶋聡監督は、143試合で141通りの先発オーダーを組むなど、選手の特性をうまく引き出すことによって、パリーグ連覇、さらには日本一を成し遂げました。

これはどのチームにも言えることですが、今シーズンの選手起用は、好不調だけでなく新型コロナウイルス感染拡大の影響を考えなければいけない状況でした。

その中でも、中嶋監督は、「中嶋マジック」と言われたように一貫して打順や守備位置に関して複数の役割を選手に求めました。これも信念ある選手起用といえるのではないでしょうか。そしてそれがうまく機能してリーグ優勝につながりました。

一方で、これと同じ戦い方を選択してセ・リーグ3位に終わったのが阪神です。矢野監督は、選手のポジションを固定しなかったことが、マイナスに作用したとの批判を受けました。結局、同じような戦い方をしていても、勝ったか負けたかという結果によって評価が変わるのがプロ野球の世界といえるでしょう。

話は変わりますが、プロ野球というのは不思議なもので、選手を流動的に起用する監督のあとには、選手を固定して起用する監督が就任するようになっています。また、少し優しい監督のあとは、厳しめの方が監督をされる、というように順番になっているわけですね。

対極的な特徴をもつ監督が繰り返し交代していく流れがある中で、この流れの中のどこかで勝てばいいと考えるのか、それともその流れを止めて、似たような特徴をもつ監督のもとで長期的にチームを作っていくのか、そのあたりの方針を球団はしっかり考えていかないといけないと思います。

来季の阪神の監督は、矢野耀大さんのあとを岡田彰布さんが受ける形になりました。先述した「流れ」の話でいえば、岡田監督は、どちらかというと選手起用をガチっと固定したい監督だと思います。

阪神・佐藤輝明にのしかかるプレッシャー

――来季の阪神では、岡田監督が佐藤輝明選手をどのように起用していくのかが注目されます。

佐藤選手に関しては、来シーズン「4番・サード」で固定される可能性が高いと考えます。岡田監督は、ポジションや打順を固定することで、選手自身に自分ができるかできないかを認識させるタイプだと思います。

今までは、打順も守備位置も固定されていなかったことで、少し逃げ道があったように思えますが、岡田監督はポジションや打順を固定するので、逃げ道がなくなり、より結果を求められることになるでしょう。

結果、シーズン途中に今までにはないプレッシャーを感じるのではないでしょうか。佐藤選手は、それを跳ねのけるだけの準備を、オフシーズンや来春のキャンプですることが求められます。

――これまでポジションを固定されなかった選手からすると、同じポジションで起用され続けるのは、それだけでプレッシャーがかかると。

そう思います。結果が出なくてもずっと起用されると、たとえ監督が何も言わなくても、周りが黙っていません。「なぜ起用するんだ?」との意見は絶対に出てきます。

どれだけ調子が悪くてもグラウンドに立ち続けなければならないということは、最大のプレッシャーです。逆に結果が出ずに交代させてもらえるのは、実は選手にとって精神的に助かるんですよね。

岡田監督は、一度決めたことは、よほどのことがない限り変えません。自分もプロ1年目から岡田監督に起用してもらいましたが、オープン戦から全試合フルイニング出場でした。

おそらく佐藤選手もそうなると思いますし、その中で、どう大きく成長していくかによって、阪神タイガースのこれからというものが大きく左右されると考えます。

「他球団ならもっと活躍できる」は本当か

――阪神は注目度も高い球団で、その分、プレッシャーも並々ならぬものがあると思います。今季、佐藤輝明選手は打率264、ホームラン20本、84打点という成績でしたが、他球団にいたら、もっと結果が出ていると考えられますか?

「他球団だったらもっと試合に出られるのに」「もっと活躍できるはずなのに」と言われている選手は、プロ野球界にはたくさんいると思います。ただ、そうした選手が実際に他球団に移籍すると、思ったほど活躍できなかった……ということがたくさんあるのも事実です。

自分も阪神でプレーしている時は、「この球団特有の雰囲気やプレッシャーがなかったら……」と思ったこともありましたが、千葉ロッテに移籍したらしたで、環境が変わったためになかなか力が発揮できないという経験もしました。この経験から自分は「他球団だったらもっと活躍できたかもしれない」と考えることはなくなりましたね。

現状、佐藤選手が感じているプレッシャーが、どの程度かはわかりませんが、ホームランの数だけを考えると、本拠地が(左打者に不利とされる)甲子園球場でなければもっと増えると思います。5本から10本は増えるのではないでしょうか。

ただ、いいことばかりとは限りません。もしかするとホームランを狙って振りすぎることによってケガをするかもしれません。

ヤクルトの村上選手のように同世代の選手が活躍している姿を見ると焦ってしまうかもしれませんが、体の筋肉のバランスなども含めて、常に自分と向き合いながら、マイペースでやっていくことが大切。

佐藤選手は2年目で全試合に出場。ホームラン数こそ減りましたが、三振が減って打率や打点は上がるなど、プラス材料がかなりあるので、いい段階を踏めていると思いますけどね。

構成/飯田隆之

明日、野球やめます
選択を正解に導くロジック

鳥谷 敬

2022年6月24日発売

1,650円(税込)

四六判/224ページ

ISBN:

978-4-08-781722-5


プロ野球界屈指の遊撃手として、阪神タイガース・千葉ロッテマリーンズで活躍し、2021年シーズンをもって引退した鳥谷敬、引退後初の著書。

「40歳まで遊撃手を守る」「試合に出続ける」という目標をみごとに体現したプロ野球人生18年間。
NPB歴代2位の1939試合連続出場、遊撃手としては歴代1位となる667試合連続フルイニング出場という輝かしい軌跡を辿るとともに、誰にも言わなかった苦悩の日々を初めて本書で明かします。
さらに、プロ野球という個性派集団の中で“ポジション”を守り抜いた著者ならではの思考・発想も紹介!

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