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意外と忙しいし、収入も減少……それでも田舎暮らしが楽しいこれだけの理由

集英社オンライン / 2022年11月3日 14時1分

コロナ禍でますます関心が高まった都会から田舎への移住。「いつかは自分も……」と憧れながらも行動に移せない人は多いのではないだろうか。そこで、東京・浅草から奥多摩の山中の古民家へ家族とともに移住した編集者の宇都宮ミゲル氏の著書『お気軽移住のライフハック100』(集英社インターナショナル)から一部抜粋・再構成して“移住の心得”をお届け。後編では、実際に移住した後の人間関係や子育てについて体験談も含めて紹介しよう。

田舎暮らしは忙しい

おそらく「田舎=スローライフ」だと想像している人は少なくないだろう。だがこの考えは正しくないと言っていい。

地方で暮らしたいと思う背景には、たとえば次のような要素があるだろう。「本格的な家庭菜園をやりたい」「美しい庭を作りたい」「たくさんの動物と暮らしたい」「カフェ経営を始めたい」「家の修繕など積極的にDIYしたい」「外食を減らし、野菜を中心とした自炊にしたい」「薪ストーブを始めたい」「ご近所との温かい付き合いを楽しみたい」。


つまり、新しいことをいくつも始めたいという欲求があるからこそ、移住して田舎暮らしをしたいと思うのであって、それには相応に手間も時間も掛かる。筆者の住む東京の奥多摩は、都心からの移住者が多く住んでいる地域だ。それぞれが移住前後でライフスタイルを大きく変え、山奥での暮らしを満喫しているが、その多くが家庭菜園を実践している。

また、なんでも自分でDIYしようという意欲から、家具づくりや家の修繕に時間を掛けている人が何人もいる。のんびりと暮らし、できるだけなにもしたくないから田舎に移住した、という人は現役引退組以外にはほとんど見当たらない。皆、田舎特有の忙しさを楽しんでいるのである。

また、都会では寒くなればエアコンが当たり前だったかもしれないが、寒い地域では暖房能力が追いつかないので、灯油の調達というルーティンが生じたりする。家とスーパー、医療機関、役場などの距離が離れていれば、その移動にも時間がかかる。生活するために不可欠な用事に、意外と時間を取られるのだ。

都会ではありとあらゆるサービスがスピーディに受けられていたことを痛感させられることだろう。もちろん、できることは自分でやるという暮らしが楽しいということにも気づき、それに割く時間が増えていくのである。

地域に受け入れてもらえないのは稀

不安要素のひとつとして、移住した新しい土地でどのように人間関係を構築していくか、という問題がある。人の少ない田舎には、よそ者を敬遠するという風潮が残る地域があるのは事実だ。

移住する前にはそのような風潮を知る由もなく、なにをやってもやらなくても、地元の人に受け入れてもらえないということがあるかもしれない。こうした人間関係への不安から、田舎暮らしを回避するという人もきっといるだろう。

ただ、そうした事例は稀である、と言いたい。むしろ、すばらしい人々との出会いが、田舎暮らしには待っていると、ポジティブな可能性に期待してみることをおすすめする。

筆者の場合、隣人の存在など気にすることもないような都会生活が40年以上も続いた後に、まったく縁もゆかりもない奥多摩の山奥へと移住した。もちろん、移住先でのご近所付き合いはとても不安だった。移住直後の知り合いは賃貸で住まいを借りた大家さんだけだったが、それから1年ほど経って、なにげない会話を交わせる地元の知人は数十人に増えていた。

人付き合いが得意ではないという自覚のある自分でもこのような具合だし、移住から6年ほど経った今、地元の交友関係は人生において大きな価値を持つものになったと強く感じている。あらためて人との出会いは予想できないものだと痛感させられている。

家の中にこもりがちでは、人間関係の扉が開かないことは明白だろう。近所のどこかでイベントがあれば出かけていき、誰かに宴会の誘いを受ければ他の用事があっても少しは顔を出す。近所の商店では会話を楽しみ、同時に近隣の情報収集もする。そんな積み重ねとちょっとした笑顔、挨拶があればすばらしい出会い、交友関係の広がりが待っていると信じたい。

人との付き合いはストレスにもなるが、この上ない喜びをもたらしてくれることだって多いのだ。

田舎は婚活のホットスポット?

若者同士の出会いは、やはり田舎であればあるほど少ない。ゆえに、若い単身の移住者は、小さい村などではとくに歓迎されやすい。ひょっとすると嫁、婿に来ないかと移住直後から誘われるようなことさえあるかもしれない。

生涯のパートナーを見つけたいと密かに願っているなら、限界集落や過疎村に好機が待っていることも意外にあるのだということを知っておこう。

ちなみに、近年では「婚活移住」というワードが知られるようになってきた。農業や漁業に従事する田舎の若い男性と、移住してくる女性をマッチングさせる婚活ツアーが日本各地の自治体などの主催で行われているのだ。

出会いと移住を組み合わせたこの手の催しは実は人気があり、こうした機会を通じて生涯のパートナーを見つけると同時に、理想的な移住を実現した若者も少なくない。田舎は婚活のホットスポットなのかもしれない。

収入減少は受け入れよう

地方の企業に転職して移住しようと思ったけれど、今の収入と比較すると少なくなってしまう……このような理由から田舎での暮らしに二の足を踏む人がいる。だが、その思考はほとんどの場合、都会でのライフスタイルをそのまま田舎へ持ち込もうという前提からくるものだ。

田舎暮らしはコストがかからないとは言わないが、収入に合わせてライフスタイルを変えるという選択肢を残しておいてもいいのではないだろうか。自然の中での体験や田舎で暮らす人々との付き合いなど、あなたにとって移住はこれまでの都会生活にはなかったものを得るための決断であったはずだ。

得るものがあれば捨てるものもある。移住は、食生活を変え、余暇の過ごし方を見つめ直し、消費を見直すチャンスでもあるだろう。収入は減ったが出費を抑えることでやりくりしながら、その何倍も幸せになったという移住者も多いのだ。

田舎の子育てはメリットがたくさん

子育てのために移住を決断した家族を、筆者は何組も取材してきた。その大半の家族が自然の中で子どもを育てるメリットを強く感じている。

海や山に囲まれた自然豊かな地域の保育園や幼稚園、小学校では、当たり前のように授業の一環として自然の中で過ごし、学ぶという時間が設けられている。大都会の保育園では車がガンガン走る道路に注意を払いながら散歩しなければならないが、田舎の保育園では、山歩きや海辺での散歩やお遊びが日常的に行われ、毎日のように大自然を体感している。

また、人口が少なく必然的に少人数のクラス編成となるため、先生が子どもたちに対して十分にケアできているのを筆者も実感している。さらに、田舎では地域ぐるみで子育てをサポートしようという意識が根付いているのも見逃せない。

このように田舎での子育ては、子どもにとってのメリットがたくさんある。関戸沙里さん一家もそんなメリットを強く感じているご家族。関戸さんは2018年に、小学校1年生の息子さんのため、東京から愛媛県にある大三島という人口6000人の島へ思い切って移住した。

「都会で子育てをしていたときは、人の目が気になることがよくありました。細かいことを気にされるお母さんもいるので、迷惑をかけているんじゃないかと思ってしまって。でも、こっちに来たらそのような気遣いが全然なくなりましたね。皆が自然体の子育てを望んでいるから、親としても非常に楽。子どもがなにかしでかしても、親同士は『あ、ごめん』『いいよ』でほとんど済んでしまうんです」

こうした声は子育て移住を果たした親からよく聞かれる。子どもたちはもちろん伸び伸びと、親たちだっておおらかに子育てを楽しみ、皆で助け合うスタイルが多くの田舎に浸透しているのだ。

* * *

本書に記された“移住の心得”を携えて、自分らしい暮らしを求めて行動してみてはいかがだろうか。

終わり

写真/shutterstock

お気軽移住のライフハック100

宇都宮 ミゲル

2022年5月26日発売

1,760円(税込)

四六判/192ページ

ISBN:

978-4-7976-7412-5

新型コロナウィルスの影響で在宅での業務が増えたこともあり、現役世代を中心に「移住」に注目が集まっている。それは「全人生をかける」ようなものというよりは、仕事は現在のままに今より少しだけゆとりある暮らしができる地域へ、あるいは好きな趣味が楽しめたり、自然を感じられる環境へ……といったような、よりカジュアルな移住への志向といえる。

そこで、本書では地元住民との軋轢や想像以上の不便さ、想定外の生活コスト、子どもの進学など、移住にまつわる物理的、心理的、経済的ハードルを少しでも下げるような移住のあり方を、移住実践者たちの体験から得られた知識と共にご提案。移住に必要な心構えや、身につけるべきスキル、近所付き合いのコツなど、憧れの移住生活に役立つさまざまなライフハックを、多くの移住者に取材し、自身も移住した経験をもつ著者がずばり解説する。

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