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道の駅での車中泊って、結局OKなの? NGなの? 国土交通省に電凸して聞いてみた

集英社オンライン / 2022年11月3日 9時1分

いまやすっかりブームとなった車中泊。車中で寝るのはいいけれど、その車を停める場所はどこが正解? 多く利用される道の駅で車中泊するのははたしてOKなのか、調べてみた。

いまいちスッキリしない“車中泊@道の駅問題”を
解決するべく、役所に電話突撃をかます

質問
「道の駅」駐車場での車中泊は可能ですか?
回答
「道の駅」は休憩施設であるため、駐車場など公共空間で宿泊目的の利用はご遠慮いただいています。
もちろん、「道の駅」は、ドライバーなど皆さんが交通事故防止のため24時間無料で利用できる休憩施設であるので、施設で仮眠していただくことはかまいません。

これは道の駅を管轄する、国土交通省のホームページに掲載されているQ&Aだ(https://www.mlit.go.jp/road/soudan/soudan_03_04.html)。



僕は車中泊の旅の途中、毎日のように道の駅をフル活用している。
昼間は食事や買い物をするため、周辺の観光地や道路の情報を取得するため、トイレを使うために、行く先々の道の駅に立ち寄る。
そして夜は、駐車場で寝るために。

夜、道の駅へ入るのはいつも21時過ぎくらいになる。
駐車場に車を停めるとすぐに寝支度を整え、あとは車内で読書をしたり音楽を聞いたりしてくつろぎ、1時過ぎには就寝する。
そして7時か8時には起床し、次の目的地を目指して出発、というパターンが多い。

国土交通省がご遠慮を促す“宿泊目的の利用”にあたるようにも感じられるのだが、これは僕に限ったことではなく、車中泊ブームの昨今はどこの道の駅へ行っても、大勢のお仲間たちがそんな過ごし方をしている。
家族連れも多く、現場には明るくハッピーなムードが漂いこそすれ、荒んだ空気は感じられない。
国土交通省が車中泊NGと定めているのなら、そこにいるのはみんなルール無用の悪党であるにもかかわらずだ。

飛騨市の道の駅で隣り合った、旧ソ連製のバン・UAZ。こんな車で車中泊するとは強者だ

道の駅で車中泊をしていると言うと、この公式Q&Aを根拠として批判する人もいる。
でも実は“車中泊@道の駅問題”は何年も前から議論されていて、車中泊ファンの間では煙が出るほどこすられた、おなじみの話題だったりする。
道の駅と車中泊を専門に突っ込んだ活動をしている、“にんにん”というユーチューバー(https://www.youtube.com/channel/UCndm6LHbblGqA-1TWO-9COw)も存在するほどだ。

僕は事前にそうした情報を見聞し、自分なりの結論・見解を持ったうえで車中泊の旅をしているのだが、なんだかもう一つすっきりしないので、この際、自分の耳と言葉で確かめるべく、国土交通省に電凸し、件(くだん)のQ&Aの真意を聞いてみることにした。

以下は国土交通省とのやり取りを要約したものである。

国土交通省の担当者が語った、
車中泊OK/NGの判断基準とは

佐藤 道の駅での車中泊について確認したいと思ってお電話しました。国土交通省さんのホームページのQ&Aには「道の駅駐車場の宿泊目的の利用はご遠慮ください」とありますが、実際には多くの人が道の駅で車中泊をしています。こうした状況をどのようにとらえてらっしゃいますか?

国土交通省担当者(以下「国交」) 個々の現場の状況を共有したうえでないとお答えはしにくいのですが、ホームページに書いてあるとおり道の駅は休憩施設ですので、宿泊目的の人のために休憩目的の方が利用できない状況が生まれるのはまずい、というのが私どもの見解です。ただし、夜通し駐車されている方がどうお過ごしになられているのか、一人一人を確認するのは難しい作業です。宿泊目的の場合は施設長の判断などで退出をお願いすることもありますが、翌日の安全運転のために休憩・仮眠目的で過ごされているのであれば、もちろんそれは構いません。

佐藤 「宿泊」と「休憩・仮眠」の違いは、どのように見極めるのでしょう? 何か定義はありますか? あと「車中泊」の定義もありますか?

国交 特に定義は設けておらず、外形的なもので判断するのは難しいというのが、率直なところでございます。ご利用される方々の判断次第なのです。休憩か宿泊かということですが、時間などの基準を設けて一律に分けるのも、難しいのかなと思っております。

佐藤 僕なんかは夜21時過ぎぐらいに入って、翌朝7時ぐらいに退出することが多いのですが、同じような過ごし方をしていても「これは宿泊だ」と思っていたらNGだし、「明日のための仮眠だ」と思っているならOKということになりますか?

国交 極論すると、そういうことになりますね。

佐藤 客観的な基準がないうえに、国土交通省さんの文言はわかりにくく、混乱を招いているようにも思うんです。車中泊、宿泊、仮眠・休憩という言葉について、個人の主観に頼るのではなく、定義をはっきりさせるご予定はないのですか?

国交 今のところ、ご覧いただいているQ&A以上に、具体的な定義をする予定はございません。いずれにしても、基本的には協力の呼びかけと言いますか、施設の設置趣旨をご理解いただき、ご協力いただくという形とさせていただいております。

ということだ。

車中泊OK/NGのボーダーラインが個人の主観、まさかの精神論だったとは!

快適な休憩のための『たまり』空間として設置

で、国土交通省のホームページの中で、道の駅の設置趣旨が書かれている部分を見にいくと、こんなことが書かれていた。
以下、要約。

「道の駅は、道路交通の円滑な『ながれ』を支えるため、一般道路にも安心して自由に立ち寄れ、利用できる快適な休憩のための『たまり』空間として設置されています。また、沿道地域の文化、歴史、名所、特産物などの情報を活用し、多様で個性豊かなサービスを提供するための施設です」。

ふむふむ。
読む限り、僕の利用方法が趣旨から外れているとは思えない。
これもまた、僕の主観なのかもしれないが。

電話で担当の方とお話ししてはっきり感じたのは、国土交通省としてはこの問題に、はっきり白黒つけたくないのだなということ。
公式に「道の駅で車中泊してもいいんですよ!」と言ってしまうと、マナーやルールを守れない無粋な人がどんどん集まって、秩序が保てなくなるかもしれない。
かといって車の中で寝ることをいっさいNGとしたら、“快適な休憩”のための施設であるという道の駅の設置趣旨をみずから覆すことになりかねないし、利用者が減って地域振興という目的も果たせなくなってしまうかもしれない。
だから未定義のまま“宿泊目的はNG”とふんわり牽制しつつ、“もちろん(良識ある人の)休憩・仮眠はOKですよ”として、実際に今のところはそれでうまく運用できているのだろう。

“阿吽の呼吸”というか、“和を以て貴しとなす”というべきか……。
これって実に日本的だよなと思いつつも、なんとなくお上のお気持ちは理解できたので、僕個人としてはこれからも、きちんと節度を持ちながら道の駅で積極的に休憩・仮眠を取らせていただこうと思っている。

秋の車中泊5泊6日の旅。5日目は長野県の絶景を求めて高原に向かった

前置きが長くなってしまったが、そんな僕の秋の車中泊5泊6日の旅は、終盤戦の第5日目を迎えている。

DAY.5(5日目)

長野県安曇野市の道の駅アルプス安曇野ほりがねの里の駐車場にとめた愛車、スズキエブリイの中で目覚めた朝。
一晩中激しく車の屋根を叩き続けた雨は小降りになり、空は一面グレーではあるものの、薄い雲を通してところどころ太陽の光が透けている。

学生の頃よく行った安曇野の観光名所、大王わさび農場を訪ねる。
日本一のわさび畑を育む澄んだ水の流れと、水車が美しい。
ここは、黒澤明監督による1990年公開の映画『夢』のロケ地にもなったところだ。
強烈な印象を持ってその映画を記憶している僕は、川の向こうの道を、可愛い帽子をかぶった笠智衆が踊り歩く情景を夢想したりする。

安曇野大王わさび農場の水車

天気はまだ不安定で、晴れ間が見えたと思ったら突然土砂降りになったり。
雨宿りしながら食べたわさびソフトクリームは、昔と変わらぬ美味だった。

絶品のわさびソフトクリーム

天気予報ではこれから晴れ間が広がり、気温もどんどん上昇するということだったので、長野の雄大な自然の景観を楽しもうと、美ヶ原高原を目指すことにした。
松本城を横目に見ながら、日差しが戻ってきた松本市街を抜けて山道に入る。

しかし山を登っていくにつれて再び空が暗転し、雨も降り出した。
しかも徐々に濃い霧が出てきて、素晴らしい眺望のはずのビーナスラインは、ほんの少し先も見えぬ状況に。
それでも進んでいけばいつか晴れるだろうと甘い期待をしていたのだが、目的地の美ヶ原高原美術館に着いても、特濃の霧に包まれたまま。
そして時折激しい雨が降り、嵐のような突風まで吹き荒ぶ。

美ヶ原高原美術館の野外展示場はこんな感じ

もう少し待てばなんとか……と思ってお土産屋さんで小一時間ほど粘ったのだが、天気は一向に回復せず、眺望もへったくれもあったものではないので、あきらめて先に進むことにした。
あーあ、高原美術館を観るのを楽しみにしていたのに。
背後では、正午を知らせるアモーレの鐘が、虚しく鳴り響いていた。

ビーナスラインを霧ヶ峰までくだってきても、めちゃくちゃ濃い霧はまったく晴れない。
その名の通りだからと自分を納得させようと思ったのだが、こんなにも激しい濃霧ではまったくなす術がない。

霧ヶ峰はこんな感じ。もう、何が何だか

仕方がないので霧ヶ峰のロッヂで昼食のざるそばなどすすり、美ヶ原〜霧ヶ峰計画はなかったものとあきらめて下山することにした。

あきらめのざるそば

そして麓の街である諏訪市を抜けて隣の茅野市まで走ってくると、ウソのように青空が広がり、気温も半袖で過ごせるほど上昇してきた。
いま通ってきた美ヶ原方面を振り返ってみると、山の上方は分厚い雲の中に入っているように見える。
あれが特濃の霧の正体か。山の天気は難しいものだ。

山ばかり走ってきたから、新鮮に感じられた甲府盆地の平原

国道20号に乗って甲府盆地をひた走り、甲府市を通過して笛吹市に入った。
笛吹市には、石和温泉がある。
前日に行った岐阜県の下呂とは違い、石和は歴史の浅い温泉だ。
1956年に農場の敷地内をボーリングしたら、40℃以上の温泉が湧出。
そこから各種施設を整えて、1960年代以降に発展した温泉街なのだそうだ。

スマホで日帰り温泉施設を検索し、一番近くにあった「紅薔薇温泉みさかの湯」に赴く。
温泉街の中心から少し外れているが、そもそも歴史の浅い石和温泉は街並みの情緒は乏しいらしいので、ここで十分だ。
市営の施設らしく、受付もお風呂も市民プールのような雰囲気だったが、清潔感があって悪くはない。
泉質はサラサラ透明で、ややぬるめのお湯だった。

紅薔薇温泉みさかの湯

入浴後はさらに国道20号を東へ駆け抜け、ブドウとワインの名産地と知られる勝沼市に到達した。

それにしても今日ひたすら走ってきた甲府盆地は、実に真っ平で広い。
昨日までいた木曽路や飛騨路とは打って変わり、遠くの四方を山に囲まれながらどこまでも続く平野の風景は新鮮に感じた。

勝沼は、そんな甲府盆地の東の壁に当たる山裾の街。
着いたときにはもう日が暮れてしまっていたが、坂の上から見下ろす市街地の夜景が綺麗だった。

ブドウ棚越しに勝沼市の夜景が見えた

小高い坂の上に建つJR中央本線の「勝沼ぶどう郷駅」は可愛らしく、まるで夢の中の駅みたいな感じだ。

勝沼ぶどう郷駅

当初、頭の中にあった予定では勝沼を観光するつもりはなかったのだが、ここを素通りするのは惜しくなってきた。
明日の朝、明るいうちにもう一度ゆっくりと市内を巡ってみよう。

そう考えてこの日は、至近の道の駅甲斐大和に車をとめ、明日のために休憩・仮眠することにした。

撮影・文/佐藤誠二朗

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